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第6話
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数日後――私とサダムの婚約が正式に決まる前に、クノレラの噂を聞く。
昼休みになって、私は食堂でサダムと一緒に昼食をとっている。
サダムの頬に描かれた呪いの模様からか、避けられているようで周囲に人はいない。
これならどんな話をしても聞かれることはなさそうで、私は噂について尋ねる。
「クノレラ様が、公爵家のラウド様の新しい婚約者になった……学園内では、この噂で持ちきりのようです」
「俺達よりも早く手続きを済ませて、ここ最近ラウド様がクノレラ様を婚約者にしたと広めていたようだ」
ここまで早く決まったということは、婚約破棄を言い渡してすぐに手続きをしていることとなる。
私達も大概だと思うけど、行動の早さに驚くしかない。
そして――私とサダムの前に、クノレラとラウドがやって来る。
ラウドは私を眺めて、蔑みながら話す。
「これはこれは、サダム様の呪いを解こうとしているが、全然成功していないキャシー様ではないか」
「相変わらずサダムは醜いわね。ラウド様を新しい婚約者にして正解だった……これでもう、婚約者に戻れるなんて思わないことね」
クノレラと婚約者に戻りたいなんて、サダムは一言もいっていない。
もう私が新しい婚約者で、呪いも解けているけど……頬に描かれた呪いの模様が、サダムの魔法によるものだと気づけないようだ。
私達を眺めて、ラウドが言う。
「魔法の実力なんて貴族には必要ない。どれだけ貴方達の魔法が凄くても、そんなものは無意味だ」
「……そう、ですわね」
ラウドの発言に、隣にいたクノレラは苦そうな表情を浮かべて賛同した。
サダムが魔法の実力で親が婚約者にしている時点で、魔法の実力は無意味ではない。
今までクノレラの家を繁栄させていたサダムが消えて、更に魔法の成績は下のラウドを婚約者にした。
どうやらラウドはクノレラを溺愛しているようで、命令はなんでも聞いてしまうようだ。
言うことを聞いてくれる権力ある人間をクノレラは傍に置いておきたいからこそ、サダムとの婚約を破棄したかったらしい。
「クノレラ様とラウド様は、手続きを済ませて婚約者になったと聞いていますけど、本当ですか?」
サダムを醜いと言ったことに苛立つけど、我慢して私はクノレラに尋ねる。
私の発言に対して、クノレラが不快そうな表情を浮かべて話す。
「本当です。サダムが呪いを受けた頃から考えていましたから、おかしなことなどなにもありませんわ」
そう言ってクノレラとラウドが離れていくけど、どこか焦りが見えた。
私としてはサダムが婚約者に正式に決まった際、問題が起きないか断言して欲しかっただけだ。
それでも……クノレラが焦ったことが、少し気になってしまう。
そして数日後――手続きを終えた私とサダムは、正式に婚約者となっていた。
昼休みになって、私は食堂でサダムと一緒に昼食をとっている。
サダムの頬に描かれた呪いの模様からか、避けられているようで周囲に人はいない。
これならどんな話をしても聞かれることはなさそうで、私は噂について尋ねる。
「クノレラ様が、公爵家のラウド様の新しい婚約者になった……学園内では、この噂で持ちきりのようです」
「俺達よりも早く手続きを済ませて、ここ最近ラウド様がクノレラ様を婚約者にしたと広めていたようだ」
ここまで早く決まったということは、婚約破棄を言い渡してすぐに手続きをしていることとなる。
私達も大概だと思うけど、行動の早さに驚くしかない。
そして――私とサダムの前に、クノレラとラウドがやって来る。
ラウドは私を眺めて、蔑みながら話す。
「これはこれは、サダム様の呪いを解こうとしているが、全然成功していないキャシー様ではないか」
「相変わらずサダムは醜いわね。ラウド様を新しい婚約者にして正解だった……これでもう、婚約者に戻れるなんて思わないことね」
クノレラと婚約者に戻りたいなんて、サダムは一言もいっていない。
もう私が新しい婚約者で、呪いも解けているけど……頬に描かれた呪いの模様が、サダムの魔法によるものだと気づけないようだ。
私達を眺めて、ラウドが言う。
「魔法の実力なんて貴族には必要ない。どれだけ貴方達の魔法が凄くても、そんなものは無意味だ」
「……そう、ですわね」
ラウドの発言に、隣にいたクノレラは苦そうな表情を浮かべて賛同した。
サダムが魔法の実力で親が婚約者にしている時点で、魔法の実力は無意味ではない。
今までクノレラの家を繁栄させていたサダムが消えて、更に魔法の成績は下のラウドを婚約者にした。
どうやらラウドはクノレラを溺愛しているようで、命令はなんでも聞いてしまうようだ。
言うことを聞いてくれる権力ある人間をクノレラは傍に置いておきたいからこそ、サダムとの婚約を破棄したかったらしい。
「クノレラ様とラウド様は、手続きを済ませて婚約者になったと聞いていますけど、本当ですか?」
サダムを醜いと言ったことに苛立つけど、我慢して私はクノレラに尋ねる。
私の発言に対して、クノレラが不快そうな表情を浮かべて話す。
「本当です。サダムが呪いを受けた頃から考えていましたから、おかしなことなどなにもありませんわ」
そう言ってクノレラとラウドが離れていくけど、どこか焦りが見えた。
私としてはサダムが婚約者に正式に決まった際、問題が起きないか断言して欲しかっただけだ。
それでも……クノレラが焦ったことが、少し気になってしまう。
そして数日後――手続きを終えた私とサダムは、正式に婚約者となっていた。
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