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第1話
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伯爵令嬢の私シルフ・エトアースは、聖女の力を手に入れていた。
15歳から16歳までの間にスキルが手に入ることがあるようで、私は「聖女」のスキルをいつの間にか所持していたようだ。
数千人に1人しかスキルは手に入らず、私はそこから更に希少な聖女の力を得ていた。
すぐにお父様とお母様に報告して、聖女の力を見せる。
2人は驚き喜んでくれたけど……お父様は心配した様子で、私に話す。
「聖女の力を得たシルフは自慢の娘だ。しかし、婚約者のズドラ様に伝えるべきではないだろう」
「そうですね……ズドラ様は侯爵令嬢のロゼス様と仲がよくて、シルフに対する態度が最悪ですもの」
お母様が、お父様の発言に賛同する。
スキルが手に入っても、王家に報告するのは本当にスキルの力だと確信できた時だけらしい。
思い込みによる嘘の報告が多いようで、何度も審査があると聞いている。
婚約者のズドラはラークロ伯爵家の令息で、私に対する態度が悪かった。
婚約者になってから侯爵令嬢のロゼスを好きになったようで、私が邪魔なようだ。
私はズドラとロゼスが仲良くしている場面を目撃して、お父様が調査してくれたから間違いない。
「聖女の力があると知られたら、ズドラ様がシルフをどんな目に合わせるかわからない……聖女の力を知らない限り、ズドラ様は婚約破棄を言い渡してくるだろうから、その後に聖女の力を報告するのがよさそうだ」
お父様は調査をしていて、ズドラは何らかの理由をつけて私に婚約破棄を言い渡してくると考えていた。
そんな相手に聖女の力を知られたくないようで、私も同意見だ。
「わかりました……聖女の力は、家族以外誰にも話しません」
ありえないと思うけど、今後ズドラが改心するかもしれない。
私が16歳になるまでには婚約を破棄してくるだろうから、その後に聖女の力を報告しよう。
その時の私と家族はそう考えていたけど――ズドラは、それ以上の行動に出ようとしていた。
■◇■◇■◇■◇■
聖女の力を得て半年後――私は、婚約者ズドラから毒を飲まされていた。
ズドラの屋敷に招待されて出てきた紅茶に毒が入っていたけど、私は聖女の力で解毒に成功している。
「シルフの話はつまらないな、俺を楽しませる話を用意しておけと言っただろう」
見下しながら話すズドラは、私が飲んだ紅茶を凝視している。
解毒したことでわかったけど、紅茶に入っていた毒は命を奪う猛毒だった。
どうやらズドラは婚約破棄ではなく、毒を使って私を消そうと考えたようだ。
今はズドラの部屋で2人きりだから、私が毒で命を落としても処分は容易いと考えたのかもしれない。
送迎はズドラ達ラークロ伯爵家の馬車で行われていたから、何らかの理由をつけて事故として処理しそう。
そこまで考えて――私は、我慢の限界がくる。
ズドラが侯爵令嬢のロゼスを好きになって以降、婚約者の私が目障りなのは態度でわかっていた。
聖女だから毒は効かず、この状況は好機でもある。
ズドラがそこまでするのなら――私は、やり返そうと決意していた。
15歳から16歳までの間にスキルが手に入ることがあるようで、私は「聖女」のスキルをいつの間にか所持していたようだ。
数千人に1人しかスキルは手に入らず、私はそこから更に希少な聖女の力を得ていた。
すぐにお父様とお母様に報告して、聖女の力を見せる。
2人は驚き喜んでくれたけど……お父様は心配した様子で、私に話す。
「聖女の力を得たシルフは自慢の娘だ。しかし、婚約者のズドラ様に伝えるべきではないだろう」
「そうですね……ズドラ様は侯爵令嬢のロゼス様と仲がよくて、シルフに対する態度が最悪ですもの」
お母様が、お父様の発言に賛同する。
スキルが手に入っても、王家に報告するのは本当にスキルの力だと確信できた時だけらしい。
思い込みによる嘘の報告が多いようで、何度も審査があると聞いている。
婚約者のズドラはラークロ伯爵家の令息で、私に対する態度が悪かった。
婚約者になってから侯爵令嬢のロゼスを好きになったようで、私が邪魔なようだ。
私はズドラとロゼスが仲良くしている場面を目撃して、お父様が調査してくれたから間違いない。
「聖女の力があると知られたら、ズドラ様がシルフをどんな目に合わせるかわからない……聖女の力を知らない限り、ズドラ様は婚約破棄を言い渡してくるだろうから、その後に聖女の力を報告するのがよさそうだ」
お父様は調査をしていて、ズドラは何らかの理由をつけて私に婚約破棄を言い渡してくると考えていた。
そんな相手に聖女の力を知られたくないようで、私も同意見だ。
「わかりました……聖女の力は、家族以外誰にも話しません」
ありえないと思うけど、今後ズドラが改心するかもしれない。
私が16歳になるまでには婚約を破棄してくるだろうから、その後に聖女の力を報告しよう。
その時の私と家族はそう考えていたけど――ズドラは、それ以上の行動に出ようとしていた。
■◇■◇■◇■◇■
聖女の力を得て半年後――私は、婚約者ズドラから毒を飲まされていた。
ズドラの屋敷に招待されて出てきた紅茶に毒が入っていたけど、私は聖女の力で解毒に成功している。
「シルフの話はつまらないな、俺を楽しませる話を用意しておけと言っただろう」
見下しながら話すズドラは、私が飲んだ紅茶を凝視している。
解毒したことでわかったけど、紅茶に入っていた毒は命を奪う猛毒だった。
どうやらズドラは婚約破棄ではなく、毒を使って私を消そうと考えたようだ。
今はズドラの部屋で2人きりだから、私が毒で命を落としても処分は容易いと考えたのかもしれない。
送迎はズドラ達ラークロ伯爵家の馬車で行われていたから、何らかの理由をつけて事故として処理しそう。
そこまで考えて――私は、我慢の限界がくる。
ズドラが侯爵令嬢のロゼスを好きになって以降、婚約者の私が目障りなのは態度でわかっていた。
聖女だから毒は効かず、この状況は好機でもある。
ズドラがそこまでするのなら――私は、やり返そうと決意していた。
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