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第6話

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 私は屋敷の応接室で、ユアンと話をしている。

「エドガーはこれから処罰を受けて、もうルクル様と関わることもなくなります」

「ユアン様。証拠を集めてくださり、ありがとうございました」

 エドガーが私に嫌がらせをすることを予測して、ユアンは証拠を集めてくれた。

 最初は無関係だと言い張っていたエドガーだけど、これで言い逃れることはできないようだ。

 罪は重く、評判からエドガーは家族に勘当されるらしい。

 もう決まっていることで、魔法学園は退学になったようだ。

 私がお礼を伝えると、ユアンは微笑みを浮かべて話す。

「ルクル様が気にすることはありません……俺は、力になれてよかったと想っています」

「そう、ですか」

 ユアンの発言を聞いて嬉しくなるけど……気になっていることもある。

 それでも、聞くべきではないと考えていた時だった。

「――ルクル様は、俺に聞きたいことがありそうです」

 ユアンが尋ねたことで、私は動揺してしまう。

 真剣な眼差しに顔が少し熱くなっているのを自覚しつつ、私は頷く。

「はい。あの――ユアン様が、私の記憶を消したのではありませんか?」

 これはただの推測で、関係が壊れてしまうのが怖くて聞けなかった。

 それでも――聞いておかないと、私とユアンの関係は進展しない気がする。

 私が尋ねると、ユアンが笑顔を浮かべた。

「どうして、そう考えたのですか?」

「今までのユアン様の言動による推測です……今まで関わっていなかったのに、あそこまで自信があったのが気になりました」

 婚約破棄を言い渡されるまで、記憶喪失の私はユアンのことを一切知らなかった。

 それなのに――ユアンは私が婚約を破棄されてからすぐ、行動に出ている。

 私の本来の実力を見抜き、その後エドガーの嫌がらせを対処していた。

 確証はないけれど、ユアンの発言から思わず聞いてしまう。

 疑っているなんて知られたら、ユアンは私に失望するかもしれない。

 そう考えて今まで聞けなかったけど、ユアンは返答する。

「ルクル様の考えている通り、記憶喪失は俺の魔法によるものですけど――これは、記憶を失う前のルクル様の頼みでもあります」

 そう言って、ユアンが全てを話そうとしていた。
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