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第2話
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私の一族リノーマ侯爵家は、龍人の妻になれるようだ。
龍人は人間を妻にしなければならない周期があり、今回はリノーマ侯爵家の女性を妻にしたいらしい。
人間の貴族達と契約する伝承があるみたいで、龍人は妻になってくれるのなら望みを一つ叶えてくれるようだ。
今まで契約した貴族は膨大な魔力や財宝を受け取ったようで、それにより繁栄している。
私とヒリスの代が龍人の妻になる時期と聞いたけど、二度と会えなくなるから「生贄」とされているようだ。
婚約者モグルド王子が、私の妹ヒリスを浮気していることを私が知って数日が経っている。
ベッドで苦しんでいるモグルドの元に私とリノーマ家の家族が集まり、領主の父が話す。
「原因不明の病だ……治すには、龍人と契約するしかないだろう!」
「龍人の妻となれば望みを叶えてくれる。その伝承が本当なら、龍人と契約してモグルド殿下の魔力を強化して貰えば問題ありません!」
父と妹ヒリスが話しているけど、演技と私は知っている。
確かに何も知らなければ私が龍人の妻になると言い、後はヒリスに任せていそう。
全て私を消すことで、モグルドが膨大な魔力を得る計画だ。
「今から龍人が来ることになっている。問題は、ルナかヒリスのどちらかが生贄にならなければならない……」
父の発言で部屋が静かになるけど、これは私が立候補するのを待っているからだ。
それがモグルドの計画で、全てを知った私は苦しめたいと考えている。
ここまでは予定通りだけど、これはモグルド達に合わせているからだ。
「……私が、龍人の妻になります」
「わかった。モグルド殿下、ヒリスもそれでいいか?」
「ルナが決めたことだから、仕方ないだろう」
「そうですね。私は怖くて立候補できませんでした」
演技で辛そうな顔をしているけど、内心笑っていることはわかっている。
そんなことを考えていると、父が杖のような魔法道具に魔力を籠めた。
そして私達の目の前に魔法陣が浮かび上がり、そこから龍人が現れる。
赤髪に銀色の角が生えた美青年で、杖を使った私の父に向かって話す。
「呼び出したか……俺はヒューム。妻になる者は名乗り、望みを言って欲しい」
そう言ってヒュームと名乗った龍人は、私とヒリスを眺めている。
どちらかが妻になると確信していそうで、モグルドが私を指差して言う。
「生贄はそこのルナだ! 望みは俺に膨大な魔力を与えることで――」
「――俺の発言が理解できなかったのか?」
「うっっ!? 申し訳ありません!!」
ヒュームに睨まれて、モグルドは委縮して謝罪する。
膨大な魔力で威圧されたけど、モグルドは全身を震えさせながら笑みを浮かべていた。
これから力を手に入れられると考えて、楽しみにしているのがよくわかる。
そんなモグルドを苦しめるため、私はヒュームと対面して話す。
「私が貴方の妻になるルナ・リノーマです。望みは――私を、幸せにしてください」
契約は絶対だから、こう言えば悪いようにはされないはず。
計画とは全然違う発言をすることで、部屋にいた私とヒューム以外の人達は唖然としていた。
龍人は人間を妻にしなければならない周期があり、今回はリノーマ侯爵家の女性を妻にしたいらしい。
人間の貴族達と契約する伝承があるみたいで、龍人は妻になってくれるのなら望みを一つ叶えてくれるようだ。
今まで契約した貴族は膨大な魔力や財宝を受け取ったようで、それにより繁栄している。
私とヒリスの代が龍人の妻になる時期と聞いたけど、二度と会えなくなるから「生贄」とされているようだ。
婚約者モグルド王子が、私の妹ヒリスを浮気していることを私が知って数日が経っている。
ベッドで苦しんでいるモグルドの元に私とリノーマ家の家族が集まり、領主の父が話す。
「原因不明の病だ……治すには、龍人と契約するしかないだろう!」
「龍人の妻となれば望みを叶えてくれる。その伝承が本当なら、龍人と契約してモグルド殿下の魔力を強化して貰えば問題ありません!」
父と妹ヒリスが話しているけど、演技と私は知っている。
確かに何も知らなければ私が龍人の妻になると言い、後はヒリスに任せていそう。
全て私を消すことで、モグルドが膨大な魔力を得る計画だ。
「今から龍人が来ることになっている。問題は、ルナかヒリスのどちらかが生贄にならなければならない……」
父の発言で部屋が静かになるけど、これは私が立候補するのを待っているからだ。
それがモグルドの計画で、全てを知った私は苦しめたいと考えている。
ここまでは予定通りだけど、これはモグルド達に合わせているからだ。
「……私が、龍人の妻になります」
「わかった。モグルド殿下、ヒリスもそれでいいか?」
「ルナが決めたことだから、仕方ないだろう」
「そうですね。私は怖くて立候補できませんでした」
演技で辛そうな顔をしているけど、内心笑っていることはわかっている。
そんなことを考えていると、父が杖のような魔法道具に魔力を籠めた。
そして私達の目の前に魔法陣が浮かび上がり、そこから龍人が現れる。
赤髪に銀色の角が生えた美青年で、杖を使った私の父に向かって話す。
「呼び出したか……俺はヒューム。妻になる者は名乗り、望みを言って欲しい」
そう言ってヒュームと名乗った龍人は、私とヒリスを眺めている。
どちらかが妻になると確信していそうで、モグルドが私を指差して言う。
「生贄はそこのルナだ! 望みは俺に膨大な魔力を与えることで――」
「――俺の発言が理解できなかったのか?」
「うっっ!? 申し訳ありません!!」
ヒュームに睨まれて、モグルドは委縮して謝罪する。
膨大な魔力で威圧されたけど、モグルドは全身を震えさせながら笑みを浮かべていた。
これから力を手に入れられると考えて、楽しみにしているのがよくわかる。
そんなモグルドを苦しめるため、私はヒュームと対面して話す。
「私が貴方の妻になるルナ・リノーマです。望みは――私を、幸せにしてください」
契約は絶対だから、こう言えば悪いようにはされないはず。
計画とは全然違う発言をすることで、部屋にいた私とヒューム以外の人達は唖然としていた。
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