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第58話

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マリウス視点

 元賢者の青年カオスは、禁忌とされるモンスターと同化する魔法を成功させたらしい。
 それ程までの存在が、どうして数百年前に封印されて、今になって復活したのか。

 思い当たる節があり俺は焦ると、宰相が恐る恐る尋ねる。

「そ、それほどまでの強さがあって、なぜ封印されたのですか?」

 興味本位のフリをしているが、同じ方法で封印しようと目論んでいるに違いない。
 カオスはそれを理解しているのか、平然としながら返答する。

「当時の俺は世界最強の存在だったが……どうやら世界というのは、どうしようもない事態になると手を打つらしい」

「それは、いったい……」

「聖女の力だ。この国はやけに聖女の力が膨大だっただろう? それは、封印されていた俺という存在を抑え込むためだ」

 今までカオスをこの国に聖女が封印していたから、副産物として今の聖女も強くなるようだ。
 魔法の成績が悪いアビリコが膨大な力を得ていた理由に納得しながら、俺と陛下は焦っている。

 カオスの発言を聞いて、俺達は後悔するしかない。
 ローノック国が不自然に平和過ぎて聖女の力が膨大だったのは、本来カオスを抑えるための力だった。

 そして――アビリコはその聖女の力を使いこなせなかった結果、カオスの封印が1年程度で解かれている。
 取り返しのつかないことをしてしまったと、俺は後悔を強めるしかなかった。
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