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第53話

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マリウス視点

 数週間後――玉座のある部屋で、俺は陛下と2人話をしていた。
 捜索隊の報告を聞いて、父上が焦りながら呟く。
 
「宰相の危惧していた通り、捜索隊が冒険者達によって追い払われるとはな……」

「……はい」

 理由は現聖女アビリコと、護衛の俺が大して活躍していないせいだと理解している。

 もしフィーレが冒険者達や国民達と組んでクーデターを起こせば、この国は終わりだ。
 何も起きていないことに安堵しているが、このままではいずれローノック国は滅ぶしかない。

 俺は最後の手段を、父上に提案する。

「これはもう……魔法協会に頼むしかないのではありませんか?」

「ぐっっ……それでは膨大な金を支払うことになる。どちらにせよ終わりだ!」

 魔法協会に助けを求めた時、法外な金を請求されたとは聞いていた。
 聖女を勝手に選んだ際、父上の対応が最悪だったせいだろう。
 
 膨大な力を持つ魔法協会を馬鹿にしたせいで、ローノック国は崩壊寸前だ。
 聖女アビリコの力が弱いとされているが、この国の魔法使いの中では強い部類に入る。

「聖女を、アビリコから別の者に変えますか?」

「そうだな。理想はフィーレだったが……試してみるか」

 俺の提案を聞いて、陛下が賛同してくれる。
 他の聖女候補はアビリコより魔法の成績がいいが、貴族の階級が低かった。

 理想は公爵令嬢のアビリコだったが、止むを得ない。
 そう考えていた時――部屋の扉を、兵士が勢いよく開けて叫ぶ。

「侵入者です! 兵士達を薙ぎ払い、ここに近づいています!!」

 扉を開けた兵士は必死の形相で叫び、危機的状況だと一瞬で理解する。
 いきなり侵入者が現れたことで、取り乱した陛下が叫んだ。

「なっ……兵士長のジェノスはどうした!?」

「それが――」

「――ジェノスは賢明な男でな。力の差を理解して、俺の話を聞くようだ」

 報告を最後まで言い切れず、兵士が意識を失って倒れる。
 そして声がした方向……扉の陰には1人の美青年と、同行している兵士長ジェノスの姿があった。
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