上 下
4 / 10

第四話

しおりを挟む
 私はレイン様の屋敷に呼び出され、婚約を受けていた。

 ジェード様と違ってレイン様が優しいことを、私は昔から知っている。
 私の魔法の力が凄くて、レイン様とはよく魔法に関する話をしていた。

 ジェード様の婚約者になってからは、レイン様の方から関わらなくなっている。
 私を気遣っての行動だと思うし、仕方ないことだと思っていた。

 レイン様は私のことを今でも気にしていて、ジェード様が婚約破棄したと知って行動に出ていた。
 私を気遣いながら婚約破棄にショックを受けていないか確認して、婚約してくれている。

 レイン様の家族としては、侯爵令嬢の私が婚約者になるのなら大丈夫らしい。
 私の家族もジェード様に婚約破棄を言い渡された悪評があるから、レイン様が婚約してくれるのなら受け入れてくれるでしょう。

 妹クーナスは文句を言いそうだけど、それで何かが変わることはない。
 問題なく婚約者になれそうだと考えると、レインが呟く。

「クーナス様がジェード様の新たな婚約者とは……同情してしまうな」

 呆れた様子なのは、私の魔力力の方が遙かに凄いことを知っているからだ。

「クーナスの魔法力は、一応平均より少し上ですけどね」

「平均より少し上程度だ。アイリス様とは天地の差がある」

 過大評価ではなく、本当にそれほどまでに力がある。
 その気になればレイン様と同様に立場が上の人より偉くなれたけど、私は目立ちたくなかった。

 ジェード様と婚約者になったから、私は婚約者を支えることにしていた。
 そしてジェード様は優秀な貴族になったけど、私がいないのに評判を維持することはできないはず。

 ジェード様は私より妹のクーナスの方が凄いと考えていて、頼りにするのは間違いない。
 魔法力を分析していたレイン様には聞きたいことができたから、聞いておこう。

「ジェード様の魔法力は、どれほどだと考えていますか?」

「……なんだ? アイリス様はジェード様が気になるのか?」

 少し不機嫌になったレイン様に、私は思わず微笑みを浮かべながら尋ねる。

「もしかして、嫉妬していますか?」

「嫉妬していたが、嬉しそうな君の声を聞いてようやく安心できた……ジェード様の魔法力は平均以下で、アイリスのお陰で優秀だと今まで認識されていた……もうそろそろ追い詰められるだろう」
 
 どうでもよさそうに教えてくれたけど、ジェード様の力は確かにその程度だ。

「私もそう思いますけど、もう私には関係ないことです」
 
 その後、レイン様の発言通り……これからジェード様と妹クーナスは、窮地に立たされていく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

〖完結〗いつ私があなたの婚約者を好きだと言いました?

藍川みいな
恋愛
「メーガン様は、私の婚約者のグレン様がお好きみたいですね。どういうおつもりなんですか!? 」 伯爵令嬢のシルビア様から話があると呼び出され、身に覚えのないことを言われた。 誤解だと何度言っても信じてもらえず、偶然その場にメーガンの婚約者ダリルが現れ、 「メーガン、お前との婚約は破棄する! 浮気する女など、妻に迎えることは出来ない!」 と、婚約を破棄されてしまう。だがそれは、仕組まれた罠だった。 設定ゆるゆるの架空の世界のお話です。 全10話で完結になります。

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。 最後に取ったのは婚約者でした。 ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。

【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前

地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。 あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。 私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。 アリシア・ブルームの復讐が始まる。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……

小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。 この作品は『小説家になろう』でも公開中です。

婚約者の座は譲って差し上げます、お幸せに

四季
恋愛
婚約者が見知らぬ女性と寄り添い合って歩いているところを目撃してしまった。

処理中です...