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第三話

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 お父様から話を聞いて数日後、私はレイン様の屋敷にやって来ていた。
 応接室にはレイン様がいて、私を待っていた様子だ。

 レイン様は面倒だからと髪を切らず、腰まで伸びた銀色の髪が目立つ。
 目つきが鋭くて凜々しい顔立ちをしているけど、怖そうと思われるのかもしれない。

 私は昔関わったことがあるから、怖いとは思わない。
 悪評の理由を察していると、レイン様が私を眺めて話す。

「久しぶりだなアイリス様……婚約を破棄したと聞いて、聞きたいことが2つある」

 立場は私の方が上だけど、レイン様は昔のように敬語では話さない。
 それが許される程の功績を挙げているからだけど、変人と呼ばれている理由でもあった。

「なんでしょうか?」

「新たな婚約者がクーナス様だと聞いたが、どうしてそうなった?」

 レイン様が困惑しながら尋ねたのは、理由が理解できないからでしょう。
 理由を話すと、レイン様は溜息を吐きながら呟く。

「アイリスは優秀なのに、妹は酷いな……そして、ジェード様は愚かだ」

 愚痴になってしまった気もするけど、レイン様はしっかり聞いてくれた。
 家だとクーナスがいて言えなかったから、こうして会えてよかったと思えるようになっている。

「あの、もう1つ聞きたいことがあるはずですけど、なんでしょうか?」

 興味があったから尋ねると、レイン様は私をじっと眺める。

「言いたくないのなら答える必要はないが……ジェード様に婚約破棄を言い渡されて、どんな気持ちになった?」

「えっと……最初はショックでしたけど、私の忠告を無視した時点でどうでもよくなりました」

 私はジェード様の力になるよう行動していたけど、それを当然のことだと思っていたようだ。
 そして妹クーナスが狡猾な手段で私より有能だと思わせて、それを信じたジェード様は私の忠告を聞かなかった。

 本心を伝えると、レイン様は頷いて話す。

「アイリス様は新しい婚約者を見つけて、ジェード様と完全に決別したいようにみえる」

「……よく、わかりましたね」

「君は私が最も婚約したかった人だからな。チャンスが来ることを願い、色々と調べていた」

 レイン様の発言に、私は動揺する。
 困惑していると、レイン様が私に告げる。

「もし新たな婚約者を探しているのなら、私と婚約しないか?」

「えっと……婚約ですか?」

「ジェード様と婚約が決まった時は仕方ないと考えていたはずなのに、心というのは割り切れないものだ」

 レイン様は自分自身に関心しているようで、変人と噂されているだけはある。
 それでもこうして私がショックを受けてないか訪ねた上で、レイン様は婚約を申し込んでくれた。

「わかりました……私は、レイン様の婚約者となります」

 その優しさは元婚約者ジェードには一切なかったもので、私は婚約を受け入れることにしていた。
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