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弱肉強食

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・「また、倒れちゃったのかな?」

俺は体を起こす。
すでに窓の外は明るかった。
昨日の事はよく思い出せる。
新技を使ってみたけど師匠には通用しなかった。

・「技の練成度0の技じゃ通用しないよな」

・ナナ
「そうでもないぞ、中々良い攻撃だった。
その口ぶりからして、、、
とっさに思い付いた技なのか?」

師匠、いつの間に、、、

・ナナ
「まぁ、そんな顔するな。
これでも心配していたんだぞ?」

ポリポリと顔を掻きつつ話す師匠、

・ナナ
「とりあえず、起きたなら飯だ。
しっかり食わないと動けないだろうからな
準備できたら食堂に来い」

そう言って師匠は出て行った。

・「師匠の特訓を受けて何日目だ?
初日はチャッピーに追いかけられただろ?
次の日は師匠に倒された、、、
わずか2日で新技が増えた。
強くなっていくのは嬉しいな」

ステータス
レベル 31
筋力 201 +72
知力 130 +30
敏捷性 221 +83
体術LV31 補正LV6 筋力12 敏捷性 18
鍛冶LV9 補正値 筋力10
魔装術LV16 補正LV3 知力 30
龍鱗の籠手 筋力 +50 敏捷性 +75

・「びっくりするほどLVが上がっている?
あれか、キロスのあの魔法で湖を半分消した時。
凄まじい勢いで敵が倒されたって流れたよな?
今度会ったらキロスにお礼言っとかなきゃな。」

思いもよらない所で高LVになっていた自分に驚く、このLVなら正規の兵士にだってなれそうだ。
確認後は急いで食堂に移動する、食卓には食事が並んでいた。

・ナナ
「よし、好きなだけ食え。
昨夜は晩飯食えなかっただろ?
その、悪かったな。」

・「いいえ、俺が未熟だっただけですから。
またよろしくお願いします。
では、いただきます!」

食事を始めた俺を見て、師匠は満面の笑みだ。
何だかんだで優しいよなぁ~

・ナナ
「さて、今日の修行なんだが、夜までは何もなしだ。
城に呼ばれててよ、さすがに何日も行かないわけにいかん。
仕事しろってオーランドが煩くてな。
また夜になって帰ってきたら戦うぞ。」

そう言って師匠は出て行った。
そっか、今日も朝から修行するもんだと思っていた。
折角だから新技の練習でもしてこようかな、、、
食べ終わる頃、屋敷のメイドさんがやってきた。

・メイドさん
「ニュート様、お客様がいらっしゃってます。」

・「俺に?誰だろう、、」

・メイド
「本日は夜までナナ様がいらっしゃいません
ですので『ハミラ高原』に行ってみては如何でしょうか?」

・「『ハミラ高原』ですか?」

・メイド
「はい、北区の『国土門』を出てまっすぐ進むとその高原に着きます。
高原にはオークやゴブリン、さらにワーム系の魔物が多く生息しておりますので昨夜の技を試すにはもってこいかと思われます。」

・「そうなんですね、ありがとう。
では今日はそこに行ってくることにします。」

・メイド
「もしも『砂漠の花』を発見できましたら持って帰っていただけると助かります。」

・「『砂漠の花』?」

・メイド
「特殊なワームの背に生えると言われる植物になります、ある病気の特効薬となっていますで、、、」

・「わかった、探してみるよ。
いろいろとありがとうね」

・メイド
「はい、お気をつけていってらっしゃいませ。
お客様は応接間に通してあります。」

俺はメイドさんにお礼を言っ応接間に向かう。
そこに居たのはクラスだった

・クラス
「ニュート!びっくりしたわ。
ナナ様の屋敷に住み込みで修行してるだなんて。」

・「やあクラス、俺も驚きだよ。
ところで、何か用だったかな?」

・クラス
「私たちはもうPTなのですよ?
用事がなきゃ一緒に居ちゃダメだなんて少し寂しいです。」

ちょこっと怒り気味のクラス。
PTメンバーなんて初めてだから解らなかった、
なんだか悪い事したかな?

・「そうだね、ごめんよクラス
今日は『ハミラ高原』に行きたいんだけど、
良かったら一緒に行ってくれないかな?」

俺が頼んでみるとクラスは嬉しそうに笑顔になる

・クラス
「もちろんです!」

こうして、今日の行き先が決まった。
目指すは『ハミラ高原』、北区の門まで移動だ。

・「ところでクラス、『ハミラ高原』って行ったことある?」

・クラス
「はい、昔家族でピクニックに行きました。
ある季節になると、新緑が広がる素晴らしい場所ですわ。
今は枯れて砂の大地が広がる季節のはずです。」

凄いねクラス、物知りだ。
ありがたい、これで迷わずいけそうだ。

・「じゃあ行こうか、クラスはすぐに行ける?」

・クラス
「はい、いつでも行けます。
そう言えばメイドさんがニュートにこれを渡してくれって言ってました。」

クラスから鞄を受け取る。
中を見てみると魔法石が大量に入っていた。

・「魔法石?何に使うんだろう、、
まぁいいや、じゃあ持っていこうかな。」

俺とクラスは『ハミラ高原』に向けて移動する。
北区にある『国土門』って初めて見るかも。

・クラス
「北区には魔法学院があるんですよ?
キロスは今日から寮に入って学院生です。」

・「そういえば合格したって言ってたね。
すごいな、将来は有名な魔導士になりそうだね。
あの魔法だけは気を付けて使わないと大変な事になりそうだけど」

・クラス
「凄まじい魔法でしたもんね、
『アストラル・フレア』でしたっけ?」

・「うん、でもキロスならきっと上手くやるさ
ところで、敬語がちょくちょく出てるね」

・クラス
「あ、、、、本当だ。
気を抜くとすぐに出ちゃう」

・「どっちでも良いよ、クラスはクラスだしね
どっちのクラスも素敵だから」

自然にこう言う言葉が出てくるところは何となくライオットと少し似ていた。
憧れの冒険者に近づいている証拠なのだろうか?

・クラス
「あぅぅぅ、、、」

真っ赤になったクラス、
その事に気付かないニュート、
二人は歩いていく。
日がちょうど真上に来た頃『ハミラ高原』についた

・クラス
「先にお食事にします?
あ、、、お昼ご飯にする?」

しっかりと言い直すクラス
それを可愛いと思いながらも笑顔で返すニュート

・「そうだね、先に食べちゃおうか。
えっと、携帯食は、、、」

・クラス
「あ、、、
私作ってきたの、良かったら一緒に食べよ?」

クラスは元々ニュートを誘って出かける予定だった為、お弁当を作って来ていた。

・「ありがとう~、うれしいな。
じゃあ一緒に食べよう」

ニュートも嬉しそうだ。
思えば小さな頃から家計を助けるために色々と手伝いや仕事をしていたニュートにとって、この様にゆっくりと外で食べることは無かった。

・「すごくおいしいよ、クラス。
イトにも、食べさせてあげたかったな。」

・クラス
「イトちゃんなら毎日一緒に夜ご飯食べてるよ。
可愛い妹さんね。」

・「イトを知ってるの?」

・クラス
「もちろん!既にニュートのお母様とイトちゃんは新しい屋敷に来てるから。
夜ご飯は私とキロスとセーラお母様、時々お父様も一緒に食事してるよ。
私も妹が出来たみたいで嬉しいの。」

嬉しくて涙が出そうだ、
これで母さんもイトも幸せになれるかな。
良かった、本当に良かった

・クラス
「今度、ニュートも一緒にご飯食べよう。」

・「そうだね、ありがとうクラス。
君たちに会えて本当に良かった。」

恥ずかしいけど、少し泣いてしまったんだ。
そんな俺をクラスは優しく見つめていてくれた。
少しの間、そんな時間が流れた、、、

・「ありがとう、落ち着いたよ。
さて、それじゃあLV上げでもしようか」

・クラス
「うん!
私ね、ニュートと出会った数日でLV30になったんだよ、出会った頃なんて一桁だったのにね。
すごいよね、ニュートのおかげ。」

・「俺も31まで上がってたよ。
どちらかと言うとキロスの魔法のおかげかもね。」

そんな会話を進めながら奥に向かう。
しばらく歩くと前方に敵影が見える。

・「オークとゴブリンだ。
あの種族って仲良いのかな?知らなかった」

・クラス
「この高原に住むオークは普通のオークと少し違うみたいだよ。見た目もちょっとスリムだしね。
ゴブリン族と仲がいいのはここだけかも。」

不思議な事もあるもんだ。

・「何だか、攻撃するのが悪い気がしてくるね。
ここは素通りで行こうかな、、、」

・クラス
「ニュート、あいつらの荷物見て」

俺は仲良く話している?オークとゴブリンの手元を見てみた。
真っ赤に染まったリュック、その後ろに人の手?

・「まさか、、、」

・クラス
「魔物にとって人間はただの獲物。
狩らなきゃ狩られる、そんな世界なんだよ?
それでも、見逃す?」

弱肉強食か、そう言えば貧民街でも言われたな。
情けは無用、殺される前に殺すしかないって。
解りやすくも恐ろしい世界だな。
だが、分かってたはずだろ?ニュート!
 
・「クラス、ゴブリンに『魔弾』を頼む
オークは俺がやる」

静かにうなずくクラス。
そしてすぐに行動に移す。

・クラス
「行くわね」

クラスの『魔弾』が真っ直ぐに飛んでいく。
奇襲受けたゴブリンは一瞬ではじけ飛ぶ。
目の前にいたオークは驚きで体が硬直する。
そこに『空走』で一気に飛び込み、

・「悪いが、死んでくれ」

固まった体に俺の拳が突き刺さり、
俺が離脱してから破裂する。

・ゴブリンガイドを倒しました
・アサルトオークを倒しました

・「難なく倒せたね」

・クラス
「そうね、でももう少し私たちが早く来ていたらこの人は死なずに済んだのかな?」

まだ乾いていない血の付いたリュックと、右手らしき残骸。
俺の迷いを吹き飛ばすには十分過ぎる程の、凄惨な現場。

・「俺が間違っていたかもしれない。
俺がこうなっていてもおかしくはないんだね。」

気を引き締める二人、
そして姿なき亡骸に手を合わせて奥へと進む。
そこからは黙々と狩りを行った。
敵は基本的に2匹、時々3匹いる時もあったが、
危なげなく倒していく。
暫く探しては殲滅を繰り返していた。
ある場所まで来たとき、クラスが俺を止めた。

・クラス
「ニュート、この先には『オーワーム』が居ると聞いたことがあるわ。強敵かもしれない、どうする?」

・「オーワーム?」

・クラス
「ワーム系の魔物で消化液を吐きかけてくる。
昔、お父様が魔法で倒していたけど数が多くて逃げたと聞いたの。危険な相手かもしれないわ。」

・「ワーム系か、、
『砂漠の花』ってアイテムあるかな?」

・クラス
「クイーンワームの背中に咲く花の事ね。
確かにこの季節に取れるはずだけど、クイーンワームを倒すのには強力なPTが必要よ。
私たち2人じゃ危ないかもしれないわ」

・「そうか、じゃあやめておこうか。
まだまだ俺たちは弱い、無理して戦うのは今じゃない気がするんだ」

・クラス
「冷静なのね、頼もしい。
今回は辞めておきましょうか、
もっと強くなってからチャレンジしましょう」

・「そうだね、そろそろ日も傾いてきたし、
街に戻ろうか。」

そうして二人は高原の入り口までやってきた。
そこで数人の冒険者と出会う。
軽い挨拶を交わして帰ろうとしたとき、気になるひと言が聞こえた。

・???
「なあ、本当に良いのか?
チェルシーがまだワームの巣にいるんだぞ?」

・???
「しかし、俺たちだけで何が出来るっていうんだ?
カウスだってやられちまってオークに持っていかれたんだ。逃げるしかなかっただろう?」

・クラス
「あの、何かありました?」

クラスが事情を聴いてみた

・???
「なあ、あんたらLVはいくつだ?」

突然聞かれてビックリしたが、緊迫した雰囲気が教えなきゃいけないと思わせる。

・「俺は31でこの子は30です。」

・???
「俺の名はヒューイ、こっちはマスク。
頼む、俺たちに力を貸してくれ。」

何だか雲行きが怪しくなってきたな、、、
話の内容からして何となくわかる。
俺とクラスは目を合わせて、頷いた。

・「事情を聞かせてくれ。」

こうして、、、
『ハミラ高原の戦い』
は静かに始まりを迎える事となる
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