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引き際

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・女神さん
「こんにちわ。」

・「はい、こんにちわ」

頭痛が強まった時、何となくここに来るんじゃないかと思ってたんだ。
思った通りだね♪

・女神さん
「何だか余裕がありますね。」

・「何となく予想出来ましたから。」

流石に慣れてきた。
俺に危険が迫ると助けてくれる。
女神さんは優しいなぁ~、、、あと綺麗だな~
倒れる前、皆の前で演説したあの人物は誰だろう。
女神さんは俺の中の存在に気付いていて警告してきたのかな?
随分と俺の事を知っているような言い方だった。

・女神さん
「あの方が誰か、、、、気になりますか?」

・「そうですね、俺の名かに今も居るんですか?
ちょっと気になりますし、一方的に切り替わられても困りますし。」

・セリス
「ここが、マルチが言っていた場所か。」

あら、今回はセリスが居る。
自分の中の存在よりも、セリスがここに居る事実の方が気になって来た。

・女神さん
「(セリスさんのお陰で何とかなる、、、かもしれませんね)」

・セリス
「よぉ、ライオット。
ここは不思議な世界だな。」

・「そ、そうだな、、、、
てかセリスが何でいるの?」

・セリス
「なんだ?居ちゃまずいのか?
っと言いたいところだが、さっきまでアタシも同じこと考えてた。
答えはこれだ、『ランバート』に貰った腕輪。
この腕輪には次元を超える力があるらしい。」

女神さんに色々と教えてもらったって所かな?
しかし次元を超える力か、、、
俺をここに呼んだ女神さんなら知ってても不思議じゃない。
『初代勇者』が授けてくれた腕輪か、、、
あの人も異世界人だったな。
この腕輪があれば俺も次元を超えて元の世界に戻れるんじゃないか?

・女神さん
「その気になれば元の世界に戻る事が出来ます。
しかし、ライオットさん。
貴方は元の世界には戻れません。
いえ、私が戻しません。」

うわぁ~、なんだか手厳しい一言が、、、

・セリス
「なぁ、ライオット。
元の世界に戻りたいと思っているかは知らないが。
アタシと、アタシたちと一緒に居てくれないか?
アタシは、お前の事が好きだ。
一緒に居てほしい、、、」

随分とストレートだな、、、
でも、何となく違和感がある。

・「なぁ、セリス。
そのセリフ、女神さんに言わされてる感じ?
それとも俺の知らない何かを聞かされた感じ?」

セリスが止まる。
図星だね、解りやすくて可愛いな。 

・セリス
「変なところは鋭いよね、、、
本当のことを言うと、半分本当。
ライオットと一緒に居たいのは本当の事。
元の世界に戻したくない事も本当だよ。
貴方の知らない事を知ってる。
それはライオットの推測通り。
教えられないけど、、、、
アタシを信じて聞かないで欲しい。」

久しぶりに、おしとやかセリスさんが出て来たな。
この状態での嘘は無いと見た。
つまり、俺が元の世界に戻る事に対して何らかのデメリットがあるって感じかな?
詳しく聞きたいところだが、、、
女神さんは話せないだろうしなぁ~
この様子だとセリスも話さないだろうし、、、
まったく秘密事が多すぎですぞ!

・女神さん
「女性には話せない事が多くあるのですよ。」

ごまかした!!
女神さんのテヘペロが妙に可愛い!
っと、そんなこと言ってる場合じゃないか。

・「セリスが言うのなら何も聞かないよ。
それに、元の世界に戻りたいとは考えてないしね。
既に向こうの世界の記憶も曖昧だし。
両親に一言伝えたかったけど、信じてもらえないだろうしね。
『貴方の息子は異世界で頑張っています』とは言えない。」

元の世界か、、、
正確に言うと所々が消えてる感じなんだよな。
仕事してた頃の記憶はある。
友人の名前も言える。
家族の事も、ある程度は鮮明に覚えている。
でも、この世界に来る前の数年辺りの記憶がサッパリ無い。
何かあったのか、、、?
考えようとすると頭痛がする、、、

・女神さん
「貴方のやりたかった事は終わりました。
普通の冒険者に戻って、楽しく過ごして下さい。」

俺が頭痛と闘っている頃、女神さんが話をまとめていた。
そろそろ戻る時間か、、、

・セリス
「ライオット、、、、
アタシは、いつでもあなたの味方だからね。
何処にも行かないからね。」

そんなセリスの一言を聞きながら、光に包まれた。

~元の世界~

・「ここは、、、、」

ゆっくりと体を起こす。
俺の屋敷の一部屋かな?
多分、5つの部屋をぶち抜いて医務室に改良した部屋の一つ。
どうやら俺はまた倒れたらしい。
倒れてばっかりだな。

・セリス
「おはよう、ライオット。
目が覚めたか?」

奥から水を持って現れたセリス。
同じ空間に居たから起き上がるタイミングも分かるよな。

・セリス
「色々聞きたいだろうけど、、、
今日はゆっくりしてろ。
どうしても知りたいのなら話してやる。」

いつものセリスに戻ってるな。
聞きたい事か、確かにたくさんある。
でも折角セリスが気を使ってくれてるんだ、あまり迷惑かけない様にしよう。

・「じゃぁ、一つだけ聞かせてくれ。
イベントはどうなった?」

・セリス
「大成功って所だな。
殆ど予定通りに行われた。
あれから2日経ったが大きな混乱や事件は起こっていない。」

2日も経ったの?
マジか、結構寝てたなぁ~。

・セリス
「しっかり寝てスッキリしたって顔してるな。」

・「流石に2日も寝てれば目覚めは良いね。」

・セリス
「、、、そうか。
なら、これからどうする?」

・「ん~、、飯でも食べて。
その後は町中を散歩したいかな。」

・セリス
「解った、付き合おう。
マルチも行くと言うだろうから起こす事にする。
3人で飯を食ってから街に繰り出そうか。」

セリスが段取りを決めてくれる。
今はあまり考えたくないからありがたいなぁ~。
マルチは自分の部屋で寝てるのかな?
ここに来るまで待ってた方が良いかな。

・セリス
「マルチ、ライオットが起きたぞ。」

隣に居るんかい!!
すかさず起き上がる音が聞こえて、、、
次の瞬間、仕切りのシーツが燃えた。
そして衝撃と共にマルチが俺にタックル、、、
いや抱き着いて来た。
嬉しいんだけど仕切りを燃やしちゃダメでしょ。
そして地味に痛いです。

・マルチ
「じんばいじた。
ずっごぐ、、じんばいじだ。
ぶじでよがっだ。」

濁点多めの言葉と共に涙を流しながら顔をぐりぐりしてくる。
マルチさん、鼻水も付いてますけど。
まぁ、可愛いから良いか。
可愛いは正義です。

・セリス
「なぁ、ライオット。
あの空間で、女神の所で言われた事がある。
お前の事だ。
お前には話す事は出来ない。
しかし、マルチとミズキには話そうと思う。
いずれリーシュにも話したいが、今リーシュは国を離れている。
3人には話しても良いか?」

へぇ~、リーシュさんは国を離れているのか。
だから会議に来なかったんだな。

・「構わないよ。
4人に秘密事はしたくないしね。」

・セリス
「すまないな、、、」

少し申し訳なさそうなセリスが印象的だった。
そんなに悪い事なのだろうか?
ん~、気になる。

その後、マルチを慰めた俺達は食堂に移動して飯を食べた。
俺はスープのみと強く言われて渋々従った。
本当は肉が食べたかった、、、
食後は街に繰り出した。
大きな混乱は起こっていない。
街の多くの人々は『レプリカの服』を着ている。
各々に様々な色で、楽しそうに話している。
時々、貴族を見かけた。
普段は来ない様な下町にまで来ている所を見ると、虹色の服を見せびらかせに来ているのだろう。
街の人から称賛を浴びる貴族は何とも気持ちよさそうな顔だ。
まぁ、評価されてるのは服なんだけどね。

・セリス
「下町はこんな感じだな。
貴族街は凄いぞ、みんな服がキラキラしてて目がチカチカするからな。
次は貧民街に行ってみるか?」

今回のイベントの目的はそこだからな。

・「たのむ。」

俺とマルチ、セリスの3人は貧民街へと向かう。
両サイドに美少女がいて引っ付いてくる。
まさに両手に花とはこの事だな。
まぁ、2人とも見た目は可愛くても年齢は400歳は超えていると言う事が発覚したからかな?
なんとも複雑な気持ちになる。
一度、正確な年齢を聞いてみようかしら、、、

やめとこう、、、殺されそうだ。

~貧民街~

貧民街では孤児が多い。
孤児たちは集まってその日その日を暮らしている。
最近知った事だが、食事はネネさんの炊き出しが1日に一回行われていて食いつないでいたようだ。
それまでは強盗・窃盗が当たり前だったらしい。
その度に殺される子も多かったと聞いた。
昔は優秀な回復魔法の使い手で、軍に所属していたネネさん。
その現状を変える為に教会の神官になったとリーシュから聞いた。
その話を聞いてからは俺も参加すると決めた。
主に資金提供と、ギルドに炊き出し手伝い依頼を出したのだ。
お陰で今は1日2回の炊き出しが可能となった。
そう言えば今回の企画でロイヤルから多額の資金が入ったんだったな。
それもこっちに回すか、、、
まずは1日3回の食事を目指す。
その後は住み込みの学校みたいなものも作れたら良いな。
それもこれも、全ては金次第。
経済力って大事だね。
子供たちにも出来る事はやってもらおう。
人間、貰ってばかりだと腐っていくから、、、
よく遊び、適度に働き、よく食べて、よく寝る。
バランスよく熟せれば、ねじ曲がった人物には育たないだろう。
簡単な仕事をロイヤルから引き入れる事も検討しておこう。

・セリス
「おい、何か面倒な事考えて無いか?」

どうやら顔に出ていたらしい、、、
考え込む癖があるみたいです。

・「ん~、まぁ色々とね。」

・セリス
「何かやる時は行動に移す前に相談しろ。
後からじゃあ止める事も出来ないから。」

セリスの一言にマルチも大きく頷く。
何だか色々と迷惑を掛けたみたいだ。

・「ありがとう、気を付けるよ。」

3人は貧民街をひた歩く。
大人には色付きの服、子供は普通の服。
ただし保温性は格段に子供の服の方が良い。
うむ、狙い通りになっていると言って良いかもしれない。

・セリス
「そうだ、一つだけ変更点があったぞ。
ロイヤルが指揮してやるらしいが、1着だけでは足りないだろう?
だから数ヶ月に一回の支給制度にするらしい。
5回ほど支給できれば困らないだろうという事だ。
ただし、支給を受けれるのはこの国に登録されている人物だけという話になった。
イベントの時に配布した名簿を基に行うらしいぞ。
よく分からんが、名簿は随時更新するとか言ってたな。」

考えたな、爺さん。
これで現国民にはロイヤルブランドの名が売れる。
評判も上がるだろう。
そして他の国の国民がこの服を欲しがれば、この国に登録しなくてはいけなくなる。
貴族の服は虹色に輝くんだ。
見栄の強い人物ならこの国に移住する家も出てくるだろう。
必然的にこの国の国益にも繋がり、国の名もさらに売れる。
最少の先行投資で最大の利益を狙うか、、、
敵に回したくない人物だなぁ~

・「後の事は爺さんに任せていいかもな。
俺の役目は終わりだ。
のんびりやるかぁ~」

最後にドーンの武器屋にやって来た。
貧民街の中心辺りに構える結構大きな店だ。
思ったより立派だな、、、
俺達は店の中に入っていった。

・ドーン
「よう、大将!調子はどうだい?」

ウキウキのドーンが現れた。

・「それなりに元気です。
なんだかうれしそうですね。」

・ドーン
「おう!!
お前さんのお陰でこんなにでっかい店が持てた。
感謝してるぜ!」

聞くと、これもロイヤルが動いたらしい。
ロイヤルブランドを扱う店として相応しい様に新しく建てたとの事だ。
武器屋の大きな工房の裏には何やら受付らしきものまである。
この武器屋を拠点に新技術の発信を行うらしい。
貧民街から成功者が出たと思わせれば、どの身分でもチャンスがあるからという事で、他の国から人が流れてくるだろうと考えたんだな。
その中の優秀な人物を引き抜くつもりだろう。
何から何まで恐ろしい人だ、、、

俺はもう、手を引こう。

その後、ドーンと話をして屋敷に戻った。
とりあえず目的は達成だ。
この後どうなるかは知ったこっちゃない。
ロイヤルが上手やるだろう。
個人の俺が出来るのはここまでだ。
引き際を間違えると面倒だしね。
マップを見ると赤点がちらほら近くにあるし。
これ以上は踏み込まない事にしよう。
手遅れになる前に、、、


~登場人物~

・ライオット(主人公)
企画が成功した事でホッとしている。
引き際と感じてビジネスの件からは身を引く予定。

・セリス(ヒロインの1人)
サリスと何やら調整中の様子。

・マルチ(ヒロインの1人)
今回も心配させられたら人物。
口数が少ないのは色々と考えていたからか?

・ドーン(貧民街武器屋の親父)
夢であった工房を備えたデカい店を持てた事に喜びを隠せない様子。
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