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第一章 海神ポセイドン

17話 終わりの歌と始まりの歌

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朝を迎え俺達は再び岬を目指す

ガラガラガラガラー

馬車を走らせなんとか月が顔を出す前には目的地の岬へと辿り着いた

『ランスロットとレオが言ってた岬って本当にここで合ってるのか?
小島なんてもんどこにも見えねーぞ!
それともここから舟がなきゃいけねーのか?だとしたら舟なんてねーし無駄足だったのか!?』

『御者によるとお父様達の言っている岬はここで合っているらしいですわ。しかし本当に小島らしきものなんて見当たりませんわね。もう満月もでているといいますのに、なにも起こりませんね。』


シロウ達が小島を探していると突然

ゴゴゴゴゴゴゴッ
と大きな音と共に海の向こうに小さな島が浮かび上がってくる

島が浮かび上がるとひとすじの光が海を照らし、その光が岬の先端へと伸びてきて一本の光の道の様に見える

『なんだこれ!?』

『さぁ?そう言われましても私にも何が起きているのかわかりませんわ。』

スタスタスタスタ
『おーい!この光の上を人が歩いても大丈夫みたいさー。海に落ちなさそうだし、島に続いてるみたいさー』

だからお前はなんでそう躊躇なく行けるんだよ!?
相変わらずダイスケ俺はたまにお前が怖いよ…

仕方ねえダイスケもそう言ってる事だし行ってみるか!!
そう思いシロウとグィネヴィアも光の道を進んで行く

『俺が先頭を行くから、グィネヴィアは真ん中でダイスケは後ろを頼むぞ!』


~~♪
そう言ってシロウ達は道を進み島が近づいてくると歌のようなものが聴こえてくる!
島へと近づくにつれその歌声は大きくなっていく、

『なんて美しい歌声だ!
こんなの日本にいた時でも聴いた事ねーぜ。』

そして島へと着き歌声のする方を見ると


そこにはとても儚げな顔で唄う下半身が魚である絶世の美女がいた

『これが人魚か??
当たり前だけど初めて見たがこんなに美しいもんなんだな』

どうやら向こうもこちらに気付いたようであり声をかけられる

『!!!
もしやっオデュッセウス!?あなたなの??』

ん?何だ?オデュッセウスって?
人の名前か?
などと思っていると

『チッ、どうやら違うようね!
我が名はセイレーン。私はこの場所にて想い人であるオデュッセウスを待っている!
その邪魔をするやつには消えてもらう。
海へと沈むがよい!

テンプテーションソング!』
~♪♪♪

まただっ!またあの歌声が!
まるで魂ごと引き抜かれちまいそうな心地よさだ。
やべーこのままだと完全に魅了されちまう!皆にあんな大見得きっちまったのによ。
あぁダメだもう思考がまとまらねー



『セイレーン今行くよ』

シロウはフラフラとした足取りで一歩、二歩とセイレーンの方へと歩き出す


ブチッ!
その様子を見ていたグィネヴィアが怒りを露にする!

『シロウ貴方あんな大言壮語を吐いておきながらなんですのその様は!?
それに私という最も美しい存在がこんなに近くにいるというのに、そんな歌声に負けるなんて許されません事よ!目を覚ましなさいっ!!
サンダーレクイエム!』

バチバチバチバチバチィー………

『セイレーンもうすぐだから待っててね』

『クッ、そうでしたわ!この男には電撃が効かないのでしたわ。どうしましょうこのままでは本当にシロウが危ないですわ』

グィネヴィアが焦りを感じどうすればよいか思案していると、セイレーンの歌をかき消す音がし始める

ベンッベベンベンッ♪
ベンッベベンベンッ♪

『浜での野外ライブ仕様におばーの所でマイク内蔵のエレキ三線に進化させたさー!電気は俺たちのスキルの放電があるからいらないし。』

『オデュッセウスが私に気付いてくれる様に唄い続けているのに邪魔をするなっ!』
セイレーンの歌声も益々大きくなる!

ダイスケも調子がでてきたのかついには唄いだす
『ハイサイおじさん♪
ハイサイおじさん♪』

『ギャァー、頭が割れるーー!
その陽気な歌を止めてー!』
セイレーンは苦しみだし歌を止めた

しかしダイスケはノッている
ついには
『アイヤ♪イヤササ♪』
セイレーンが合いの手をいれはじめた

『セイレーンどこに?……』
パァーーンッ
強烈なビンタの音が鳴り響く
『シロウ貴方はいつまでそうやってるつもりです事!?』

ハッ!なんだ!?
何がどうなってやがる!?
確かセイレーンの歌声を聴いた辺りから思いだせねー。

ダイスケの演奏が終わり、そこには最初の儚げな顔のセイレーンの姿はなくとても満足した顔をしている


『フーッ、久しぶりに心から楽しめた!礼を言うぞ。』

『しかし何でこんな所でずっと1人で唄ったりしてたか気になるさー』

『昔私にはオデュッセウスという恋人がいてな、私はこの足だ人間の国では暮らせん。だからオデュッセウスは一緒にここで暮らしてくれると言っていたが、オデュッセウスはどこかの貴族の息子らしく一度家に帰って報告してくる。
そしたら必ず戻ると言っていたがそれから戻って来ることはなくてな。
来たくてもこの場所を忘れてしまったのかも知れん。
それ以来彼と出会った美しい満月の夜に彼が好きだった歌をオデュッセウスに見つけてもらえるまで唄い続ける事にしたんだ。』



『………オデュッセウス、オデュッセウスねぇ
ってそれ
どこかで聞いた名前だと思ったらそれって私の曾祖父の名前と同じですわ!!
確かどこかの女性と恋に落ちて駆け落ちしようとして、その時に付き合ってる恋人との関係を精算しようと帰ったらすでに妊娠しているのがわかったので恋に落ちた女性との駆け落ちを諦めたとかいう話を聞いた事がありますわ。』

『娘よ、その話は本当か!?
ではオデュッセウスは今どこに!?』

『あなたの言っているオデュッセウスが私の曾祖父と同一人物かはわかりませんけど、残念ながら曾祖父はもう何年も前に亡くなっていますわ!』

『亡くなっている!?
私の愛したオデュッセウスが!?
嘘だ…』

『まだ同一人物かもわからないなら確認すればいーさー』
ダイスケが呑気にそう言う

『貴方お名前は??』
セイレーンがダイスケに問う

『俺はダイスケでこっちがシロウ、このお嬢様はグィネヴィアって言うさーね』

『ダイスケ私は貴方の音楽を深く気に入りました!まるで海と1つになれるかのような音楽。
そうだっ!ダイスケ私はこのままではここから動けませんので貴方の魂と同化して一緒に行く事にします。
同化したらあなたも力を手に入れる事ができるし、どうですか?』

『大丈夫よー!』

ダイスケがそう言うとセイレーンは光となり空へと駆け昇って行き、そして再び降りてきてダイスケの胸へと吸い込まれた
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