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だから私はレベル上げをしない
効果実証
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「あ、開いた」
突如、自らのお腹から溢れた光にも、それに心当たりがあればパニックにはならない。
事実、それが突如光り始めてもセラフは取り乱すことなく、どこか誇らしげな表情を浮かべていた。
それは彼女の目の前に立ち塞がっていた重厚な扉が、音もなく開いていく姿を目にすれば自ずと理解出来るだろう。
それがマックス達に探索を頓挫させていた、例の扉なのだという事が。
「ちっ」
その様を目にしたマックスは、小さく舌打ちを漏らしている。
その扉を開ける手段を必死に探し、ようやく開けることが出来た感動の場面に、彼は何故そんな仕草を見せたのか。
その理由は彼のその仕草を目敏く目撃し、今まさに指を差しているセラフの振る舞いを見れば分かる。
「あーーー!?あんた今、舌打ちしたでしょう!!自分の意見が間違ってて、悔しかったんだ!ねーねー?どんな気持ち?ねぇ、今どんな気持ちー?」
セラフが飲み込んだアイテムを、彼女のお腹を殴ってでも即座に取り出そうとしたのはマックスだ。
彼はそうしなければ、アイテムの効果が発揮されないと考えたからこそ、その行動を取ろうとしていた。
それが今、目の前で起きた事態によって否定されてしまった。
彼はその事実に、小さく舌打ちを漏らしていたが、それはセラフからすれば盛大におちょくり、煽るだけの理由になっているようだった。
「ふんっ!今の気持ちだと?あぁ、嬉しいね!嬉しくて堪らないさ!!ようやく先に進めるんだからな!!」
顔を背けたマックスの視界へと回り込んでは、下から覗き込むように彼の顔を見詰めるセラフは、その顔にニヤニヤとした表情を浮かべている。
マックスはそんな彼女のおちょくる言葉に開き直ると、吐き捨てるようにして喜びの言葉を叫ぶ。
事実、ようやく開いた先へと進む道に、それが喜ばしいことなのは間違いない。
彼はそれを証明するように、一人先へと進んでいく。
「あ!逃げた!!ふふーん、本当は悔しいくせにー?そうやって負け惜しみをいうんだー?へぇー」
一人、先へと進んだ勇ましさも、セラフの目線からは負け惜しみの逃亡にも映る。
それを言葉にしてはさらに煽ってみせるセラフに、マックスは振り返ることもせずに歩みを進め続けていた。
「マックス!一人で進んじゃ危ないよ!!ほら、セラフも!いつまでも遊んでないで、行くよ!!」
「えー?あいつなら、一人でも平気でしょー?」
一人でどんどんと先に進んでいるマックスの姿に、アリーが心配そうに声を掛けている。
マックスはその声にも振り返ることはなかったが、その足は僅かに緩んだように見えていた。
「ここからは、まだ誰も進んだことがない所なんだから!!警戒は怠っちゃいけないの!!ウィリアム!」
ここに到るまでの道中は、主にマックスとウィリアムの力によって簡単に敵を蹴散らしてきた。
その経験から、完全に観光気分で余裕を語っているセラフに、アリーはここからは勝手が違うと必死に呼びかけている。
彼女は今だにピンと来ていない様子でだらだらとしているセラフの手を掴むと、無理矢理引っ張って先に進み始めていた。
「おぅ!後ろは任せるぜよ!!」
セラフを無理矢理引っ張り駆け出していったアリーは、その最後に後ろに控えるウィリアムへと声を掛けていた。
彼女の声に威勢よく答え、にっこりと笑って見せたウィリアムは、その背中に背負った得物へと手を伸ばす。
そこには今までのボロボロの斧ではなく、このダンジョンの仄暗い明かりの中でもキラキラと輝く、新品の斧が括られていた。
それを軽く撫で、満足した様子のウィリアムは、駆け足で先を進むセラフ立ちを追い駆けてゆく。
それは奇しくも、彼らがこの道中を進んできた隊列と同じ形となっていた。
突如、自らのお腹から溢れた光にも、それに心当たりがあればパニックにはならない。
事実、それが突如光り始めてもセラフは取り乱すことなく、どこか誇らしげな表情を浮かべていた。
それは彼女の目の前に立ち塞がっていた重厚な扉が、音もなく開いていく姿を目にすれば自ずと理解出来るだろう。
それがマックス達に探索を頓挫させていた、例の扉なのだという事が。
「ちっ」
その様を目にしたマックスは、小さく舌打ちを漏らしている。
その扉を開ける手段を必死に探し、ようやく開けることが出来た感動の場面に、彼は何故そんな仕草を見せたのか。
その理由は彼のその仕草を目敏く目撃し、今まさに指を差しているセラフの振る舞いを見れば分かる。
「あーーー!?あんた今、舌打ちしたでしょう!!自分の意見が間違ってて、悔しかったんだ!ねーねー?どんな気持ち?ねぇ、今どんな気持ちー?」
セラフが飲み込んだアイテムを、彼女のお腹を殴ってでも即座に取り出そうとしたのはマックスだ。
彼はそうしなければ、アイテムの効果が発揮されないと考えたからこそ、その行動を取ろうとしていた。
それが今、目の前で起きた事態によって否定されてしまった。
彼はその事実に、小さく舌打ちを漏らしていたが、それはセラフからすれば盛大におちょくり、煽るだけの理由になっているようだった。
「ふんっ!今の気持ちだと?あぁ、嬉しいね!嬉しくて堪らないさ!!ようやく先に進めるんだからな!!」
顔を背けたマックスの視界へと回り込んでは、下から覗き込むように彼の顔を見詰めるセラフは、その顔にニヤニヤとした表情を浮かべている。
マックスはそんな彼女のおちょくる言葉に開き直ると、吐き捨てるようにして喜びの言葉を叫ぶ。
事実、ようやく開いた先へと進む道に、それが喜ばしいことなのは間違いない。
彼はそれを証明するように、一人先へと進んでいく。
「あ!逃げた!!ふふーん、本当は悔しいくせにー?そうやって負け惜しみをいうんだー?へぇー」
一人、先へと進んだ勇ましさも、セラフの目線からは負け惜しみの逃亡にも映る。
それを言葉にしてはさらに煽ってみせるセラフに、マックスは振り返ることもせずに歩みを進め続けていた。
「マックス!一人で進んじゃ危ないよ!!ほら、セラフも!いつまでも遊んでないで、行くよ!!」
「えー?あいつなら、一人でも平気でしょー?」
一人でどんどんと先に進んでいるマックスの姿に、アリーが心配そうに声を掛けている。
マックスはその声にも振り返ることはなかったが、その足は僅かに緩んだように見えていた。
「ここからは、まだ誰も進んだことがない所なんだから!!警戒は怠っちゃいけないの!!ウィリアム!」
ここに到るまでの道中は、主にマックスとウィリアムの力によって簡単に敵を蹴散らしてきた。
その経験から、完全に観光気分で余裕を語っているセラフに、アリーはここからは勝手が違うと必死に呼びかけている。
彼女は今だにピンと来ていない様子でだらだらとしているセラフの手を掴むと、無理矢理引っ張って先に進み始めていた。
「おぅ!後ろは任せるぜよ!!」
セラフを無理矢理引っ張り駆け出していったアリーは、その最後に後ろに控えるウィリアムへと声を掛けていた。
彼女の声に威勢よく答え、にっこりと笑って見せたウィリアムは、その背中に背負った得物へと手を伸ばす。
そこには今までのボロボロの斧ではなく、このダンジョンの仄暗い明かりの中でもキラキラと輝く、新品の斧が括られていた。
それを軽く撫で、満足した様子のウィリアムは、駆け足で先を進むセラフ立ちを追い駆けてゆく。
それは奇しくも、彼らがこの道中を進んできた隊列と同じ形となっていた。
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