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初めてのお客様
露見した正体にカイ・リンデンバウムは焦る 5
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『話しても、よろしいか?』
「あぁ、頼む」
『うぉっほん・・・実はその時に、コンソール?というんじゃろうか、ダンジョンの操作端末をヴェロニカが叩いてしまって・・・ほれ、こういうのは叩くと不味いんじゃろう?』
ダミアンが話したのは、カイがクリスから殴られてしまった時の出来事だろう。
あの時どこからか響いてきたような物音は、どうやらヴェロニカが操作端末を殴りつけてしまった時のものだったようだ。
あくまで扱う者が操作しやすいようにと具現化されている端末に、物理的な衝撃で壊れてしまうような内部構造は存在しないだろう。
しかしその行動によって、訳の分からないコマンドが入力されてしまう可能性はあった。
「あ~・・・確かにそれは不味いかもしれないな。う~ん・・・どうしたものか。ヴェロニカ、どうにか出来そうにないのか?」
『は、はい・・・その、申し訳ありません。私にはちょっと、手に負えそうもありません』
大分操作に慣れてきたといっても、ヴェロニカはまだそれに触れて一週間とちょっとといったところに過ぎない。
ダンジョンの操作に限っていえばカイも同様であったが、彼にはそれの元となったパソコンの操作経験があった。
そもそもそれらの操作方法は、彼の記憶や知識に基づいて最適化されたものであろう。
その操作に彼が一番適しているのは、もはや自明の理ともいえた。
「そうか・・・そうとなれば、私がそこに戻るしかないだろうな。急いで戻る、だから安心して待っているといい」
意図しない入力によって陥った事態は、もはやヴェロニカの手には負えないようだ。
そうなればカイ自ら赴いて、手を下すよりは他にないだろう。
『は、はい!お待ちしております、カイ様!』
自らの主人が、自分の失敗を拭いにやってくる。
その宣言を耳にして、ヴェロニカは陶酔したような声を漏らしている。
彼女はその興奮に忘れてしまったのだ。
カイに伝えるべき事があったことを。
『・・・伝えなくて、良かったのかの?』
『何、ダミアン?今はちょっと黙っていて欲しいのだけど』
主の格好いい振る舞いに、ヴェロニカはうっとりと頬を押さえている。
そんな時に無粋な声を掛けてきたダミアンなどには、彼女は冷たくあしらうだけだ。
しかし彼はそんなあしらわれかたをしても、喋りかけるのを止めようとはしない。
それは、どうしても伝えなければならない事があったからだ。
『いやなに、あの者達がもうすぐ近くまで迫ってると、カイ様に伝えなくて良かったのかと思ったのだが・・・もう遅かろうな』
『・・・あっ!?』
カイが立ち去ったボス部屋に、賑やかな話し声が近づいてきている。
それの主は、今更説明しなくとも分かっているだろう。
一刻も早くと最奥の間に急ぐカイは、もはや壁に触手を伸ばすこともなく、ただひたすらに走り続けていた。
「あぁ、頼む」
『うぉっほん・・・実はその時に、コンソール?というんじゃろうか、ダンジョンの操作端末をヴェロニカが叩いてしまって・・・ほれ、こういうのは叩くと不味いんじゃろう?』
ダミアンが話したのは、カイがクリスから殴られてしまった時の出来事だろう。
あの時どこからか響いてきたような物音は、どうやらヴェロニカが操作端末を殴りつけてしまった時のものだったようだ。
あくまで扱う者が操作しやすいようにと具現化されている端末に、物理的な衝撃で壊れてしまうような内部構造は存在しないだろう。
しかしその行動によって、訳の分からないコマンドが入力されてしまう可能性はあった。
「あ~・・・確かにそれは不味いかもしれないな。う~ん・・・どうしたものか。ヴェロニカ、どうにか出来そうにないのか?」
『は、はい・・・その、申し訳ありません。私にはちょっと、手に負えそうもありません』
大分操作に慣れてきたといっても、ヴェロニカはまだそれに触れて一週間とちょっとといったところに過ぎない。
ダンジョンの操作に限っていえばカイも同様であったが、彼にはそれの元となったパソコンの操作経験があった。
そもそもそれらの操作方法は、彼の記憶や知識に基づいて最適化されたものであろう。
その操作に彼が一番適しているのは、もはや自明の理ともいえた。
「そうか・・・そうとなれば、私がそこに戻るしかないだろうな。急いで戻る、だから安心して待っているといい」
意図しない入力によって陥った事態は、もはやヴェロニカの手には負えないようだ。
そうなればカイ自ら赴いて、手を下すよりは他にないだろう。
『は、はい!お待ちしております、カイ様!』
自らの主人が、自分の失敗を拭いにやってくる。
その宣言を耳にして、ヴェロニカは陶酔したような声を漏らしている。
彼女はその興奮に忘れてしまったのだ。
カイに伝えるべき事があったことを。
『・・・伝えなくて、良かったのかの?』
『何、ダミアン?今はちょっと黙っていて欲しいのだけど』
主の格好いい振る舞いに、ヴェロニカはうっとりと頬を押さえている。
そんな時に無粋な声を掛けてきたダミアンなどには、彼女は冷たくあしらうだけだ。
しかし彼はそんなあしらわれかたをしても、喋りかけるのを止めようとはしない。
それは、どうしても伝えなければならない事があったからだ。
『いやなに、あの者達がもうすぐ近くまで迫ってると、カイ様に伝えなくて良かったのかと思ったのだが・・・もう遅かろうな』
『・・・あっ!?』
カイが立ち去ったボス部屋に、賑やかな話し声が近づいてきている。
それの主は、今更説明しなくとも分かっているだろう。
一刻も早くと最奥の間に急ぐカイは、もはや壁に触手を伸ばすこともなく、ただひたすらに走り続けていた。
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