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初めてのお客様

ダンジョンチェックのお時間 3

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「おっと、そうだ・・・ヴェロニカ、聞いているか?」
『は、はいっ!何でしょうか、カイ様?何か至らぬ点がありましたでしょうか?』

 その途中で何かを思い出したカイは、近くの壁へと手を伸ばしてヴェロニカへと呼びかける。
 早速カイに申し付けられた作業へと取り掛かっていたのか、モニターから聞こえてくるカイの声に驚いた様子を見せるヴェロニカは、何か失敗でもしてしまったのかと恐る恐る尋ねていた。

「いや、そうではない。回復したスケルトンが、再配置されないようにしてもらわないとなと思ってな。彼らは帰り道には敵は現れないと考えていた、それを裏切る訳にはいかないだろう?」
『あぁ・・・なるほど、畏まりました。それは・・・これから倒される魔物も同様の処理を?』
「そうだな、頼む」
『ははっ』

 回収され、回復した魔物は基本的に配置されていた場所に再配置される。
 しかしそれではクリス達が考えていた、帰り道の安全が保障されなくなってしまう。
 そのためその設定は解除する必要があった。
 それをヴェロニカへと申し付けたカイは、自らの考えの抜けていた部分を修正する彼女の提案にも即座に頷いていた。

「いやぁ、やっぱりヴェロニカは優秀だな。そうだよな、これから倒される奴の設定も解除しとかないと不味いもんな」

 壁から手を離し、自らの部下の優秀さに感心した声を漏らしていたカイは、そのままダンジョンの奥へと向かっていく。

「あれ?でもこれって、向こうに帰れなくないか?だって基本的にずっと一本道だもんな」

 クリス達の後を追ってダンジョンの奥へと向かおうとしていたカイは、その途中にある事実に思い至り足を止めてしまう。
 それはクリス達が前にいる限り、彼はヴェロニカ達の待つ最奥の間に戻れないという事実であった。

「あー・・・不味ったなぁ。ダンジョンに所属する者だけが通れる隠し通路とか、用意しとくべきだったなこれは。なんか色々と使い道ありそうだもんな、それ。うん、次からはそうしよう」

 クリス達と遭遇する事なく、最奥の間に至る道がない状況に、カイは失敗してしまったダンジョンの構成を反省する。
 これからもダンジョンに外部の者がいる状況で、自由に動きたい場合などあるだろう。
 それを考えればダンジョンに所属する者だけが通れる通路を作るのは、必須の課題とも言えた。

「次はそれでいいとして、今はどうするかなぁ・・・まぁ、歩きながら考えるか」

 このダンジョンをより快適な環境へと変えるアイデアを思いついたカイも、今目の前に立ち塞がる問題はどうする事も出来ない。
 そう急いで戻らなければならない理由もない彼は、適当な諦めを告げると、そのままぷらぷらと前へと進み始めていた。
 その前方に、クリス達の気配はない。
 彼らの下に追いつくまでには、何かいい考えが思いついているだろうと、彼は気楽に足を進め続けていた。
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