88 / 308
初めてのお客様
ハロルドは意地を貫き通す 3
しおりを挟む
「くっ、これしかないのか・・・!」
二体目のスケルトンがこちらに来てしまえば、彼らにはもはやどうしようもない。
それを押さえる為にはアイリスも戦わざるを得ないだろうし、それを気にしてはハロルドも集中を保てる訳もない。
迫るタイムリミットに、ハロルドはその不確かな知識によって決断を下す。
未熟な魔力の制御が、彼の身体に炎となって揺らめいていた。
「燃えろよぉぉぉぉ、うわぁぁぁぁっ!!!」
雄叫びと共に発動させた魔法は、ハロルドの両手からスケルトンへと炎を巻き起こす。
その制御されていない火力は、彼自身の身体をも焼いている。
その痛みは気合と共に放った雄叫びをいつしか悲鳴へと変えて、彼の身体を焼き続けていた。
「ハロルド!?お願い・・・どうか、彼を助けて!」
ハロルドの悲鳴に、アイリスは杖を握る力を強くする。
彼女に今出来るのは、彼を癒す事だけだ。
意識を集中させる彼女の身体からは、眩い光が放たれている。
その輝きはハロルドが生み出す炎と拮抗するように、その力を争っていた。
「どう、だ・・・?」
猛烈な痛みにも、アイリスの癒しの魔法のためかハロルドの身体はそれほど傷ついてはいない。
彼はやがて脱力したように腕を下げると、その手に纏った炎を消し去っていた。
薄く揺らめく炎が今だ漂う向こう、そこにある筈の敵の姿を、ハロルドは願うような面持ちで見詰めていた。
「ははは・・・やっぱりそう、うまくは、いかない・・・か」
望まぬ結果に、ハロルドは自嘲の笑みを漏らす。
彼の視線の先には、無傷のスケルトンが佇んでいた。
彼はそれを目にすると、力尽きるように倒れこんでゆく。
それは力を使い果たした故か、それとも心が折れてしまったからだろうか。
どちらにしろ彼は、佇むスケルトンに向かってゆっくりと崩れ落ちていってしまっていた。
「ハロルド!えっ、これは・・・どういう事?」
倒れゆくハロルドの姿に、アイリスは慌てて彼の身体を支えようと駆け寄っていく。
しかし彼女は予想だにしない光景に、その足を止めてしまっていた。
ハロルドが倒れこんだ先に佇んでいたスケルトンは、彼の身体が触れると突然パラパラと崩れ始めていく。
それはやがて完全に崩壊を始め、気づけばそれはただの骨片へと姿を変えてしまっていた。
「なる、ほど・・・骨が熱に、よって脆く・・・なったのか。本の知識も、案外悪く、ない・・・ね」
自分の身体が下敷きにした骨の欠片と、周りに広がるそれを目にしたハロルドは、得てきた知識も無駄ではなかったと笑う。
その意識はゆっくりと遠のいていく。
アイリスの魔法によってその身体の傷は癒されていても、彼が受けた痛みや消耗が消える訳ではない。
その身体はとっくに限界を超えていて、目蓋を落ちるのを止める術などありはしなかった。
「ハロルド、ハロルド!?起きて、ねぇ起きてってば!ハロルド!!」
その身体を揺するアイリスの声にも、ハロルドの意識は戻らない。
彼が最後に見たのは、アイリスへと近づいてくるスケルトンと、クリスに止めを刺そうとしているもう一体のスケルトンの姿であった。
二体目のスケルトンがこちらに来てしまえば、彼らにはもはやどうしようもない。
それを押さえる為にはアイリスも戦わざるを得ないだろうし、それを気にしてはハロルドも集中を保てる訳もない。
迫るタイムリミットに、ハロルドはその不確かな知識によって決断を下す。
未熟な魔力の制御が、彼の身体に炎となって揺らめいていた。
「燃えろよぉぉぉぉ、うわぁぁぁぁっ!!!」
雄叫びと共に発動させた魔法は、ハロルドの両手からスケルトンへと炎を巻き起こす。
その制御されていない火力は、彼自身の身体をも焼いている。
その痛みは気合と共に放った雄叫びをいつしか悲鳴へと変えて、彼の身体を焼き続けていた。
「ハロルド!?お願い・・・どうか、彼を助けて!」
ハロルドの悲鳴に、アイリスは杖を握る力を強くする。
彼女に今出来るのは、彼を癒す事だけだ。
意識を集中させる彼女の身体からは、眩い光が放たれている。
その輝きはハロルドが生み出す炎と拮抗するように、その力を争っていた。
「どう、だ・・・?」
猛烈な痛みにも、アイリスの癒しの魔法のためかハロルドの身体はそれほど傷ついてはいない。
彼はやがて脱力したように腕を下げると、その手に纏った炎を消し去っていた。
薄く揺らめく炎が今だ漂う向こう、そこにある筈の敵の姿を、ハロルドは願うような面持ちで見詰めていた。
「ははは・・・やっぱりそう、うまくは、いかない・・・か」
望まぬ結果に、ハロルドは自嘲の笑みを漏らす。
彼の視線の先には、無傷のスケルトンが佇んでいた。
彼はそれを目にすると、力尽きるように倒れこんでゆく。
それは力を使い果たした故か、それとも心が折れてしまったからだろうか。
どちらにしろ彼は、佇むスケルトンに向かってゆっくりと崩れ落ちていってしまっていた。
「ハロルド!えっ、これは・・・どういう事?」
倒れゆくハロルドの姿に、アイリスは慌てて彼の身体を支えようと駆け寄っていく。
しかし彼女は予想だにしない光景に、その足を止めてしまっていた。
ハロルドが倒れこんだ先に佇んでいたスケルトンは、彼の身体が触れると突然パラパラと崩れ始めていく。
それはやがて完全に崩壊を始め、気づけばそれはただの骨片へと姿を変えてしまっていた。
「なる、ほど・・・骨が熱に、よって脆く・・・なったのか。本の知識も、案外悪く、ない・・・ね」
自分の身体が下敷きにした骨の欠片と、周りに広がるそれを目にしたハロルドは、得てきた知識も無駄ではなかったと笑う。
その意識はゆっくりと遠のいていく。
アイリスの魔法によってその身体の傷は癒されていても、彼が受けた痛みや消耗が消える訳ではない。
その身体はとっくに限界を超えていて、目蓋を落ちるのを止める術などありはしなかった。
「ハロルド、ハロルド!?起きて、ねぇ起きてってば!ハロルド!!」
その身体を揺するアイリスの声にも、ハロルドの意識は戻らない。
彼が最後に見たのは、アイリスへと近づいてくるスケルトンと、クリスに止めを刺そうとしているもう一体のスケルトンの姿であった。
0
お気に入りに追加
183
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
へなちょこ勇者の珍道記〜異世界召喚されたけど極体魔法が使えるのに無能と誤判定で死地へ追放されたんですが!!
KeyBow
ファンタジー
突然の異世界召喚。
主人公太一は誤って無能者判定され死地へと追放され、その後知り合った2人のエルフの美少女と旅を始める。世間知らずの美少女は無防備。太一はインテリだが意気地なし。そんな3人で冒険をし、先々でトラブルが・・・
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。
しかし、ある日――
「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」
父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。
「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」
ライルは必死にそうすがりつく。
「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」
弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。
失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。
「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」
ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。
だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。
異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜
KeyBow
ファンタジー
主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。
そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。
転生した先は侯爵家の子息。
妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。
女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。
ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。
理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。
メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。
しかしそう簡単な話ではない。
女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。
2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・
多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。
しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。
信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。
いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。
孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。
また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。
果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる