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ハロルドは意地を貫き通す 3

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「くっ、これしかないのか・・・!」

 二体目のスケルトンがこちらに来てしまえば、彼らにはもはやどうしようもない。
 それを押さえる為にはアイリスも戦わざるを得ないだろうし、それを気にしてはハロルドも集中を保てる訳もない。
 迫るタイムリミットに、ハロルドはその不確かな知識によって決断を下す。
 未熟な魔力の制御が、彼の身体に炎となって揺らめいていた。

「燃えろよぉぉぉぉ、うわぁぁぁぁっ!!!」

 雄叫びと共に発動させた魔法は、ハロルドの両手からスケルトンへと炎を巻き起こす。
 その制御されていない火力は、彼自身の身体をも焼いている。
 その痛みは気合と共に放った雄叫びをいつしか悲鳴へと変えて、彼の身体を焼き続けていた。

「ハロルド!?お願い・・・どうか、彼を助けて!」

 ハロルドの悲鳴に、アイリスは杖を握る力を強くする。
 彼女に今出来るのは、彼を癒す事だけだ。
 意識を集中させる彼女の身体からは、眩い光が放たれている。
 その輝きはハロルドが生み出す炎と拮抗するように、その力を争っていた。

「どう、だ・・・?」

 猛烈な痛みにも、アイリスの癒しの魔法のためかハロルドの身体はそれほど傷ついてはいない。
 彼はやがて脱力したように腕を下げると、その手に纏った炎を消し去っていた。
 薄く揺らめく炎が今だ漂う向こう、そこにある筈の敵の姿を、ハロルドは願うような面持ちで見詰めていた。

「ははは・・・やっぱりそう、うまくは、いかない・・・か」

 望まぬ結果に、ハロルドは自嘲の笑みを漏らす。
 彼の視線の先には、無傷のスケルトンが佇んでいた。
 彼はそれを目にすると、力尽きるように倒れこんでゆく。
 それは力を使い果たした故か、それとも心が折れてしまったからだろうか。
 どちらにしろ彼は、佇むスケルトンに向かってゆっくりと崩れ落ちていってしまっていた。

「ハロルド!えっ、これは・・・どういう事?」

 倒れゆくハロルドの姿に、アイリスは慌てて彼の身体を支えようと駆け寄っていく。
 しかし彼女は予想だにしない光景に、その足を止めてしまっていた。
 ハロルドが倒れこんだ先に佇んでいたスケルトンは、彼の身体が触れると突然パラパラと崩れ始めていく。
 それはやがて完全に崩壊を始め、気づけばそれはただの骨片へと姿を変えてしまっていた。

「なる、ほど・・・骨が熱に、よって脆く・・・なったのか。本の知識も、案外悪く、ない・・・ね」

 自分の身体が下敷きにした骨の欠片と、周りに広がるそれを目にしたハロルドは、得てきた知識も無駄ではなかったと笑う。
 その意識はゆっくりと遠のいていく。
 アイリスの魔法によってその身体の傷は癒されていても、彼が受けた痛みや消耗が消える訳ではない。
 その身体はとっくに限界を超えていて、目蓋を落ちるのを止める術などありはしなかった。

「ハロルド、ハロルド!?起きて、ねぇ起きてってば!ハロルド!!」

 その身体を揺するアイリスの声にも、ハロルドの意識は戻らない。
 彼が最後に見たのは、アイリスへと近づいてくるスケルトンと、クリスに止めを刺そうとしているもう一体のスケルトンの姿であった。
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