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止まらない連鎖
殺人鬼の手から逃れて
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「あ、兄貴・・・!兄貴ぃぃぃ!!」
とすっという軽い音を立てて倒れ付した陣馬に、床に膝を着いたままのサブが駆け寄っていく。
その身体は半ばまで両断されており、彼の命が既に途絶えてしまっている事は疑いようがない。
そんな彼の姿を見下ろしては、あさひは血塗れの顔でにっこりと満面の笑顔を浮かべていた。
「あー・・・楽しかったぁ!!」
陣馬を惨殺した感触に、大変満足したと息を漏らすあさひは、その喜びをそのまま声にして叫んでいた。
その振る舞いに滲むはっきりとした狂気に、彼女が自分達とは完全に別種の生き物だとようやく認識した大助達は、静かに唾を飲み込んでいる。
「あさひ、お前・・・何で・・・?」
とりわけ、あさひのそんな振る舞いにショックを受けたのは、先ほどまで彼女と仲良く遊んでいた翔だろう。
彼はチェーンソーを抱えては、それにうっとりと頬ずりをしている彼女に向かって、縋りつくように腕を伸ばしていた。
「じゃあ、次はぁ・・・誰を殺そっかなー?」
再び、唸りを上げるチェーンソーに、彼女はゆっくりと歩き始める。
既に殺した人間には興味がないのか、彼女は陣馬とそれにすがり付いているサブを無視しては、部屋の中へと歩みを進めていた。
「っ!?翔、こっちへ来なさい!!」
あさひを止めるために動いた距離が、翔とのそれを離してしまっている。
大助は部屋の中で一人、離れた場所にいる翔へとこっちに来いと呼びかける。
しかしそれは、あさひがそこへと割り込む方が早い。
「あははははっ!駄目だよ、そんなの!!」
翔を迎えに行こうと伸ばした腕は、あさひが振るったチェーンソーによって、その目的へと届くことはない。
大助の行動を妨害したあさひは、彼の振る舞いが気に入らなかったのか、そちらへとターゲットを絞ったようだった。
「おい、お前。お前だよお前!こっちに来い!!」
大助達へと移ったターゲットに、一人取り残された翔へと声をかける者がいた。
それは死に絶えた陣馬の身体へと取りすがっていた、サブであった。
彼はその死体の影に隠れるようにしながら翔へと呼びかけ、こちらへと来るように手招いている。
「で、でも・・・父ちゃん達が」
「いいから、来いって!!今はそんな事、考えてる場合じゃないんだよ!」
あさひにジリジリと追い詰められ、もはや壁際にまで追いやられている大助達に、翔はサブの呼びかけに応えるのを躊躇っている。
そんな翔の様子に、今はそれ所じゃないと手を伸ばしたサブは、彼の腕を無理矢理引っつかんではそのままドアの外へと駆け込んでいく。
「ま、待て!あさひちゃん!!話せば分かる、君はそんな事をする子じゃない筈だ!!」
部屋の外へと逃げて行った翔達の姿に、大助が安堵したのは僅かな間だけだ。
彼らはあさひによって窓際にまで追い詰められており、もはや逃げ場のない状況に陥ってしまっていた。
「えー?でも殺すのって、楽しいよ?」
しかしそんな状況にありながらもまだ、大助はあさひの説得を諦めてはいない様子だった。
彼はその手を伸ばして彼女にそれ以上近づくなと警告し、どうにかここで凶行を止めるようにと言葉を並べている。
しかしそんな大助の言葉にも、あさひはただただ人殺しが好きで好きで堪らないのだと返していた。
「そんな・・・君は・・・」
あさひのその反応は、とても純粋で無邪気なものであった。
それは彼女が、翔とゲームを楽しんでいる時に見せていた表情と同じもので、それを知ってしまった大助は絶望に言葉を失ってしまう。
「貴方、もういいですよ!!」
そんな彼の背後で、何か大きなものが倒れる音が響いていた。
それは殺人鬼の侵入を防ぐために、大助が窓へと立て掛けていたベッドが倒れる音だ。
大助があさひと会話をして時間を稼いでいる間に、それを何とか取り外した静子は、確保した逃走経路に彼も急ぐように呼びかけている。
「し、しかし・・・」
「何を迷う事があるんですか!?あれは人殺しです!ただの子供じゃないんですよ!?」
猛烈な吹雪が荒れ狂っている外へと足を踏み出し、開いた窓を支えている静子は、大助にも早くこちらに来いと手を伸ばしている。
しかしあさひの説得を諦め切れない大助は、それにすぐに手を伸ばそうとせず、その場に留まっては躊躇う様子を見せてしまっていた。
「っ!早くこっちへ!!」
「待ってくれ、まだ・・・ぐぅ!?」
しかしそんな彼の事を、殺人鬼であるあさひは待ってなどくれない。
それにいち早く気がついた静子が彼を無理矢理を引っ張っても、それはあさひがその手に持ったチェーンソーを振り下ろす方が早い。
それは大助の背中を切り裂いて、確かな傷跡を残していた。
「あーあ、逃がしちゃった・・・」
背中を切り裂かれながらも、大助はそのままこの部屋の外へと抜け出している。
そんな彼の姿を見送ったあさひは、心底残念そうに溜め息をつく。
彼女はそのまま窓へと近づきその先へと視線を移すが、激しい吹雪に視界は効かず、既に彼らの姿は見えなくなってしまっていた。
「くちゅん!止めよ・・・お外、寒いし」
吹き込む寒風に思わずくしゃみをしてしまったあさひは、その原因となった窓を閉ざすと彼らを追う事を諦める。
そうして彼女は一人、誰もいなくなった部屋に佇む。
その視線の先には、翔が手放していった携帯ゲーム機だけが、煌々と光を放っていた。
「に、逃げたのはいいが・・・どこに行きゃいいんだ!?部屋に戻ってもな・・・」
殺人鬼の潜む部屋から逃げ出したサブは、一体どこに向かえばいいのかと迷っている。
出来る事ならば今すぐにでもこのロッジから逃げ出したい彼だったが、外は相変わらず大吹雪の状況だ。
そんな天気で外に出ることなど、無謀を通り越して不可能だ。
そんな訳で彼はとりあえず身を隠せる場所を探しては、このロッジの中をうろうろと彷徨っているが、中々それを見つけられずにいた。
「お、おじさん・・・どこに行くの?僕、疲れちゃったよ」
「あぁ?おじさんだぁ?まだそんな年じゃあ・・・ちっ、んなことガキに言っても仕方ねぇか」
サブに手を引かれ、彼の後を必死について走っていた翔は、その速度に疲れたと弱音を吐いている。
まだ大した距離を走っていない時間に、翔がそんな弱音を吐いてしまったのは、やはり先ほど精神的なショックが無関係ではないだろう。
そんな翔のおじさん呼びに、サブは一瞬カチンときた表情を見せるが、彼にそんな事を言っても仕方ないと、すぐに頭を掻いてはその怒りを発散させていた。
「俺は、サブ。陸道三座(りくどう さんざ)って立派な名前があんだ、おじさんなんて呼んでんじゃねぇよ。サブって呼びな、分かったな?」
「う、うん。分かったよ、サブ兄ちゃん」
自らの名前を知らない翔に、サブは本名を名乗るとその呼び名を強制する。
そんな彼の言葉に翔は頷くと、僅かに気を遣うように強制された呼び名に、一つ呼称を付け加えていた。
「へっ、やれば出来るじゃねぇか。おっ、あれは・・・おーい、あんたらー!」
翔の呼び方にむず痒そうに鼻を擦ったサブは、満更でもないような様子で彼の頭をくしゃくしゃと掻き混ぜる。
そうして翔の頭を適当に突き放したサブは、視線を移した向こうに人影の姿を見つけて、それに大きく手を振っては声をかけている。
こんな状況では、とにかく多くの人数で一塊になる事が有効だろう。
翔の手をぎゅっと握ったサブは、その人影と合流しようと駆け足でそちらへと向かっていく。
とすっという軽い音を立てて倒れ付した陣馬に、床に膝を着いたままのサブが駆け寄っていく。
その身体は半ばまで両断されており、彼の命が既に途絶えてしまっている事は疑いようがない。
そんな彼の姿を見下ろしては、あさひは血塗れの顔でにっこりと満面の笑顔を浮かべていた。
「あー・・・楽しかったぁ!!」
陣馬を惨殺した感触に、大変満足したと息を漏らすあさひは、その喜びをそのまま声にして叫んでいた。
その振る舞いに滲むはっきりとした狂気に、彼女が自分達とは完全に別種の生き物だとようやく認識した大助達は、静かに唾を飲み込んでいる。
「あさひ、お前・・・何で・・・?」
とりわけ、あさひのそんな振る舞いにショックを受けたのは、先ほどまで彼女と仲良く遊んでいた翔だろう。
彼はチェーンソーを抱えては、それにうっとりと頬ずりをしている彼女に向かって、縋りつくように腕を伸ばしていた。
「じゃあ、次はぁ・・・誰を殺そっかなー?」
再び、唸りを上げるチェーンソーに、彼女はゆっくりと歩き始める。
既に殺した人間には興味がないのか、彼女は陣馬とそれにすがり付いているサブを無視しては、部屋の中へと歩みを進めていた。
「っ!?翔、こっちへ来なさい!!」
あさひを止めるために動いた距離が、翔とのそれを離してしまっている。
大助は部屋の中で一人、離れた場所にいる翔へとこっちに来いと呼びかける。
しかしそれは、あさひがそこへと割り込む方が早い。
「あははははっ!駄目だよ、そんなの!!」
翔を迎えに行こうと伸ばした腕は、あさひが振るったチェーンソーによって、その目的へと届くことはない。
大助の行動を妨害したあさひは、彼の振る舞いが気に入らなかったのか、そちらへとターゲットを絞ったようだった。
「おい、お前。お前だよお前!こっちに来い!!」
大助達へと移ったターゲットに、一人取り残された翔へと声をかける者がいた。
それは死に絶えた陣馬の身体へと取りすがっていた、サブであった。
彼はその死体の影に隠れるようにしながら翔へと呼びかけ、こちらへと来るように手招いている。
「で、でも・・・父ちゃん達が」
「いいから、来いって!!今はそんな事、考えてる場合じゃないんだよ!」
あさひにジリジリと追い詰められ、もはや壁際にまで追いやられている大助達に、翔はサブの呼びかけに応えるのを躊躇っている。
そんな翔の様子に、今はそれ所じゃないと手を伸ばしたサブは、彼の腕を無理矢理引っつかんではそのままドアの外へと駆け込んでいく。
「ま、待て!あさひちゃん!!話せば分かる、君はそんな事をする子じゃない筈だ!!」
部屋の外へと逃げて行った翔達の姿に、大助が安堵したのは僅かな間だけだ。
彼らはあさひによって窓際にまで追い詰められており、もはや逃げ場のない状況に陥ってしまっていた。
「えー?でも殺すのって、楽しいよ?」
しかしそんな状況にありながらもまだ、大助はあさひの説得を諦めてはいない様子だった。
彼はその手を伸ばして彼女にそれ以上近づくなと警告し、どうにかここで凶行を止めるようにと言葉を並べている。
しかしそんな大助の言葉にも、あさひはただただ人殺しが好きで好きで堪らないのだと返していた。
「そんな・・・君は・・・」
あさひのその反応は、とても純粋で無邪気なものであった。
それは彼女が、翔とゲームを楽しんでいる時に見せていた表情と同じもので、それを知ってしまった大助は絶望に言葉を失ってしまう。
「貴方、もういいですよ!!」
そんな彼の背後で、何か大きなものが倒れる音が響いていた。
それは殺人鬼の侵入を防ぐために、大助が窓へと立て掛けていたベッドが倒れる音だ。
大助があさひと会話をして時間を稼いでいる間に、それを何とか取り外した静子は、確保した逃走経路に彼も急ぐように呼びかけている。
「し、しかし・・・」
「何を迷う事があるんですか!?あれは人殺しです!ただの子供じゃないんですよ!?」
猛烈な吹雪が荒れ狂っている外へと足を踏み出し、開いた窓を支えている静子は、大助にも早くこちらに来いと手を伸ばしている。
しかしあさひの説得を諦め切れない大助は、それにすぐに手を伸ばそうとせず、その場に留まっては躊躇う様子を見せてしまっていた。
「っ!早くこっちへ!!」
「待ってくれ、まだ・・・ぐぅ!?」
しかしそんな彼の事を、殺人鬼であるあさひは待ってなどくれない。
それにいち早く気がついた静子が彼を無理矢理を引っ張っても、それはあさひがその手に持ったチェーンソーを振り下ろす方が早い。
それは大助の背中を切り裂いて、確かな傷跡を残していた。
「あーあ、逃がしちゃった・・・」
背中を切り裂かれながらも、大助はそのままこの部屋の外へと抜け出している。
そんな彼の姿を見送ったあさひは、心底残念そうに溜め息をつく。
彼女はそのまま窓へと近づきその先へと視線を移すが、激しい吹雪に視界は効かず、既に彼らの姿は見えなくなってしまっていた。
「くちゅん!止めよ・・・お外、寒いし」
吹き込む寒風に思わずくしゃみをしてしまったあさひは、その原因となった窓を閉ざすと彼らを追う事を諦める。
そうして彼女は一人、誰もいなくなった部屋に佇む。
その視線の先には、翔が手放していった携帯ゲーム機だけが、煌々と光を放っていた。
「に、逃げたのはいいが・・・どこに行きゃいいんだ!?部屋に戻ってもな・・・」
殺人鬼の潜む部屋から逃げ出したサブは、一体どこに向かえばいいのかと迷っている。
出来る事ならば今すぐにでもこのロッジから逃げ出したい彼だったが、外は相変わらず大吹雪の状況だ。
そんな天気で外に出ることなど、無謀を通り越して不可能だ。
そんな訳で彼はとりあえず身を隠せる場所を探しては、このロッジの中をうろうろと彷徨っているが、中々それを見つけられずにいた。
「お、おじさん・・・どこに行くの?僕、疲れちゃったよ」
「あぁ?おじさんだぁ?まだそんな年じゃあ・・・ちっ、んなことガキに言っても仕方ねぇか」
サブに手を引かれ、彼の後を必死について走っていた翔は、その速度に疲れたと弱音を吐いている。
まだ大した距離を走っていない時間に、翔がそんな弱音を吐いてしまったのは、やはり先ほど精神的なショックが無関係ではないだろう。
そんな翔のおじさん呼びに、サブは一瞬カチンときた表情を見せるが、彼にそんな事を言っても仕方ないと、すぐに頭を掻いてはその怒りを発散させていた。
「俺は、サブ。陸道三座(りくどう さんざ)って立派な名前があんだ、おじさんなんて呼んでんじゃねぇよ。サブって呼びな、分かったな?」
「う、うん。分かったよ、サブ兄ちゃん」
自らの名前を知らない翔に、サブは本名を名乗るとその呼び名を強制する。
そんな彼の言葉に翔は頷くと、僅かに気を遣うように強制された呼び名に、一つ呼称を付け加えていた。
「へっ、やれば出来るじゃねぇか。おっ、あれは・・・おーい、あんたらー!」
翔の呼び方にむず痒そうに鼻を擦ったサブは、満更でもないような様子で彼の頭をくしゃくしゃと掻き混ぜる。
そうして翔の頭を適当に突き放したサブは、視線を移した向こうに人影の姿を見つけて、それに大きく手を振っては声をかけている。
こんな状況では、とにかく多くの人数で一塊になる事が有効だろう。
翔の手をぎゅっと握ったサブは、その人影と合流しようと駆け足でそちらへと向かっていく。
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