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止まらない連鎖
痴情の縺れとその結末 1
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「いい?私がここで注意を引きつけるから、貴方は窓から侵入して、中の女を殺すの。出来るわね?」
滝原達が泊まっている部屋の前で下妻は座り込むと、目の前の存在に向かって言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
彼女が言い聞かせているのは、ホッケーマスクを被った髪の長い少女であった。
その少女は彼女の言葉を聞いているのかいないのか分からない態度で、なにやら口元をモゴモゴと動かしていた。
「もごもご、うまうま・・・」
「ねぇ、ちゃんと聞いてる?」
どうやら飴玉を舐めている様子の少女は、その甘さにうっとりするようにそれを堪能している。
そんな彼女の態度に不安になったのか、下妻はちゃんと話を聞いているのかと問い掛けていた。
「き、聞いてるよ!」
「そう、なら良かった。じゃあそろそろ始めるから、お願いね。あ、それと!中にいる男の人に手を出したら駄目だから!ちゃんと分かってる?」
「ん」
下妻の問い掛けに、図星を突かれたと肩を跳ねさせた少女は、咄嗟に聞いていたと嘯いている。
そんな彼女の態度を若干いぶかしみながらも、下妻はこれ以上待てないと計画を開始する。
その最後に彼女は、絶対に守らなければならないことだけを、少女にもう一度確認していた。
「そう、なら・・・美倉夏香!!ここを開けなさい!!さもないと、あの事を話すわよ!!!」
最後の確認に、頷きを返した少女に満足した下妻はそっと立ち上がると、激しくドアをノックする。
何か、人に知られたくない秘密を暴露すると迫る彼女の後ろで、少女もまたチェーンソーのエンジン音を響かせていた。
「んんぅ・・・ちょっと待っててね。はぁ?あんた、何言ってんの?私には一体何の事だか、分からないんですけど?負け犬の遠吠えは止めてもらえます?」
「あの事よ。分かるでしょ?」
下妻が暴露しようとしている事に、心当たりがないと美倉は話す。
美倉は勝者の余裕たっぷりに下妻を見下す言葉を吐くが、それも彼女が意味ありげな言葉を囁くまでだ。
「っ!?それを言ったら、あんたにだって・・・!」
下妻が囁いた言葉に何やら心当たりがあった美倉は、顔色を変えると急に声のトーンを落とし始める。
それはどうやら、その話の内容を後ろにいる滝原に聞かせないためらしい。
「私は敗者ですもの。今更、失うものなんてないわ」
下妻が暴露しようとしている秘密はどうやら、彼女自身にもダメージがいく類のものらしい。
そのため言う筈がないと考えていた美倉は、自爆すらも覚悟している彼女の態度に驚きを隠せない。
下妻はそんな彼女の態度を鼻で笑うと、背後で手を振っては少女に早く動いてと合図を送っていた。
「じゃあ、早速言わせて貰うけど。私達がここに来れたのは・・・」
「ちょ、ちょっと待って!分かった開けるから、開けるからお願い・・・それは言わないで」
早速とばかりに口を開いた下妻に、美倉は必死に制止すると、すぐさま閉ざしていたドアを開けようとそれをガチャガチャと弄りだす。
簡単なはずのその作業も、焦っているためか一向にうまくいく気配がない。
そんな美倉の姿に、下妻は心底嬉しそうな笑みを見せていた。
「早くしてくださらない?あんまり遅いと、私うっかり口を滑らしてしまい・・・えっ?」
美倉の焦った様子に笑みを見せては、彼女を煽るような言葉を話していた下妻はしかし、その途中で何かに驚き言葉を詰まらせてしまう。
その何かとは、一体何の事だろうか。
彼女はゆっくりと自らのお腹を見下ろすと、そこから飛び出しているギザギザの刃を見詰めていた。
「あ、あの・・・その、余りにも隙だらけだったから、つい」
それは、彼女の腹から突き出ている、チェーンソーの刃であった。
まるで油の切れたブリキの人形のように、ガタガタとした動きでゆっくり後ろへと振り返った下妻が目にしたのは、心底申し訳なさそうに顔を俯かせている少女の姿だ。
そして彼女は、止めていたチェーンソーのエンジンを再開させる。
「あ、あぁ・・・あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぁぁぁぁっ!!?」
回り始めたチェーンソーの刃は、下妻の内臓を掻き混ぜて、それを飛沫として撒き散らす。
その振動に巻き込まれるように、彼女はぶるぶると震えると、激しく顎を上下に揺らしていた。
「や、やっと開いた・・・さぁ、これでその事はもう・・・きゃああああっ!!?」
中々うまく開かないドアに注意を持っていかれていた美倉は、実際にドアを開きそれを目にするまで、その事態に気付くことはなかった。
そうして対面した惨劇に、彼女は悲鳴を上げる。
「な、何が・・・う、うわぁぁぁっ!!?」
悲鳴を上げる美倉の後ろで、慌てて衣服を身に纏ったのであろう、まだベルトもうまく締められていない滝原が顔を覗かせている。
彼は取り乱す美倉の様子に何事かと視線を送るが、それはその先の光景を目にすれば一目で理解出来るだろう。
事実、美倉の背中の向こう側から覗く下妻の姿と、その腹にぽっかりと開いた穴の姿に、滝原はすぐに悲鳴を上げてしまっていた。
滝原達が泊まっている部屋の前で下妻は座り込むと、目の前の存在に向かって言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
彼女が言い聞かせているのは、ホッケーマスクを被った髪の長い少女であった。
その少女は彼女の言葉を聞いているのかいないのか分からない態度で、なにやら口元をモゴモゴと動かしていた。
「もごもご、うまうま・・・」
「ねぇ、ちゃんと聞いてる?」
どうやら飴玉を舐めている様子の少女は、その甘さにうっとりするようにそれを堪能している。
そんな彼女の態度に不安になったのか、下妻はちゃんと話を聞いているのかと問い掛けていた。
「き、聞いてるよ!」
「そう、なら良かった。じゃあそろそろ始めるから、お願いね。あ、それと!中にいる男の人に手を出したら駄目だから!ちゃんと分かってる?」
「ん」
下妻の問い掛けに、図星を突かれたと肩を跳ねさせた少女は、咄嗟に聞いていたと嘯いている。
そんな彼女の態度を若干いぶかしみながらも、下妻はこれ以上待てないと計画を開始する。
その最後に彼女は、絶対に守らなければならないことだけを、少女にもう一度確認していた。
「そう、なら・・・美倉夏香!!ここを開けなさい!!さもないと、あの事を話すわよ!!!」
最後の確認に、頷きを返した少女に満足した下妻はそっと立ち上がると、激しくドアをノックする。
何か、人に知られたくない秘密を暴露すると迫る彼女の後ろで、少女もまたチェーンソーのエンジン音を響かせていた。
「んんぅ・・・ちょっと待っててね。はぁ?あんた、何言ってんの?私には一体何の事だか、分からないんですけど?負け犬の遠吠えは止めてもらえます?」
「あの事よ。分かるでしょ?」
下妻が暴露しようとしている事に、心当たりがないと美倉は話す。
美倉は勝者の余裕たっぷりに下妻を見下す言葉を吐くが、それも彼女が意味ありげな言葉を囁くまでだ。
「っ!?それを言ったら、あんたにだって・・・!」
下妻が囁いた言葉に何やら心当たりがあった美倉は、顔色を変えると急に声のトーンを落とし始める。
それはどうやら、その話の内容を後ろにいる滝原に聞かせないためらしい。
「私は敗者ですもの。今更、失うものなんてないわ」
下妻が暴露しようとしている秘密はどうやら、彼女自身にもダメージがいく類のものらしい。
そのため言う筈がないと考えていた美倉は、自爆すらも覚悟している彼女の態度に驚きを隠せない。
下妻はそんな彼女の態度を鼻で笑うと、背後で手を振っては少女に早く動いてと合図を送っていた。
「じゃあ、早速言わせて貰うけど。私達がここに来れたのは・・・」
「ちょ、ちょっと待って!分かった開けるから、開けるからお願い・・・それは言わないで」
早速とばかりに口を開いた下妻に、美倉は必死に制止すると、すぐさま閉ざしていたドアを開けようとそれをガチャガチャと弄りだす。
簡単なはずのその作業も、焦っているためか一向にうまくいく気配がない。
そんな美倉の姿に、下妻は心底嬉しそうな笑みを見せていた。
「早くしてくださらない?あんまり遅いと、私うっかり口を滑らしてしまい・・・えっ?」
美倉の焦った様子に笑みを見せては、彼女を煽るような言葉を話していた下妻はしかし、その途中で何かに驚き言葉を詰まらせてしまう。
その何かとは、一体何の事だろうか。
彼女はゆっくりと自らのお腹を見下ろすと、そこから飛び出しているギザギザの刃を見詰めていた。
「あ、あの・・・その、余りにも隙だらけだったから、つい」
それは、彼女の腹から突き出ている、チェーンソーの刃であった。
まるで油の切れたブリキの人形のように、ガタガタとした動きでゆっくり後ろへと振り返った下妻が目にしたのは、心底申し訳なさそうに顔を俯かせている少女の姿だ。
そして彼女は、止めていたチェーンソーのエンジンを再開させる。
「あ、あぁ・・・あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぁぁぁぁっ!!?」
回り始めたチェーンソーの刃は、下妻の内臓を掻き混ぜて、それを飛沫として撒き散らす。
その振動に巻き込まれるように、彼女はぶるぶると震えると、激しく顎を上下に揺らしていた。
「や、やっと開いた・・・さぁ、これでその事はもう・・・きゃああああっ!!?」
中々うまく開かないドアに注意を持っていかれていた美倉は、実際にドアを開きそれを目にするまで、その事態に気付くことはなかった。
そうして対面した惨劇に、彼女は悲鳴を上げる。
「な、何が・・・う、うわぁぁぁっ!!?」
悲鳴を上げる美倉の後ろで、慌てて衣服を身に纏ったのであろう、まだベルトもうまく締められていない滝原が顔を覗かせている。
彼は取り乱す美倉の様子に何事かと視線を送るが、それはその先の光景を目にすれば一目で理解出来るだろう。
事実、美倉の背中の向こう側から覗く下妻の姿と、その腹にぽっかりと開いた穴の姿に、滝原はすぐに悲鳴を上げてしまっていた。
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