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決戦、エイルアン城
デニスとギード 2
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『おい、お前達!何をやっている、さっさと逃げるぞ!!』
『ヴァイゼさん!逃げる?どうしてだ、俺達は・・・』
部屋の隅で壁の隙間からやってくる魔物達を抑えていたゴブリン達は、オーデンが倒れたことで勢いがなくなった魔物達の前に、どうしていいか分からなくなって立ち往生してしまっていた。
彼らは頼れる存在であるヴァイゼの登場に喜びの声を上げるが、同時に彼が口走った言葉に疑問を感じてもいた。
彼らからすれば悪の権化であるオーデンは倒されたのだから、急いで逃げる理由などない筈に思える、その考えから彼らはヴァイゼの指示に反感を示していた。
『オーデンが倒れても俺達が裏切った事に変わりはない!今はこの混乱の内に逃げ出すことだけ考えろ、いいな!!』
『し、しかし・・・』
ヴァイゼが大声で伝えた事実にも、彼らの浮ついた心を完全に冷ますまでには至らない。
どうにか食い下がろうとする彼らの中から、一人のゴブリンが進み出ると、彼はある方向を指差していた。
『ヴァイゼさん、逃げるならあの穴を使おう。この騒ぎだ、あそこにいた他の奴らはもういないだろう。俺達が上るときに足場は崩したが、上から下りる分にはどうにかなる筈だ』
集団の中から進み出てきたゴブリン、ギードはヴァイゼに対して彼らがこの部屋へとやってきた穴を指し示す。
それはここから少しだけ距離があるが、その周辺には誰もおらず、誰しもが倒れ伏したオーデンへと注目している中であれば、安全に移動できそうだった。
『ギード、お前!?』
『俺達は生き残るためにこれまで戦ってきた筈だ!そのチャンスを掴もうとして、なにが悪い!!』
ギードの行動に仲間のゴブリン達は驚きと反感の声を上げるが、それに反応した彼の声はさらに強い怒りに満ちていた。
彼らはこれまでも、必死に生き残ろうとして振舞ってきた筈だ。
それなのに目の前の勝利の匂いに惑わされ、転がってきた生き残るチャンスをふいにしようとしている仲間達に、ギードは心底怒り狂い拳を振り上げる。
その迫力に他のゴブリンは圧倒され、続けようとしていた文句を飲み込むことしか出来なくなっていた。
『そうか、悪くないな・・・お前達もそれでいいな?』
ギードの怒りもどこ吹く風と、彼に示された逃走ルートを検討していたヴァイゼは、納得がいったように頷くと、彼らに同意を求めて視線を向けていた。
しかしその冷たい瞳は、これでついてこなければ見捨てると暗に語っている。
事実、彼らがまだ同意していないにもかかわらず、ヴァイゼ達はすでにその穴へと向かって身体を翻しつつあった。
『あ、あぁ・・・分かりました。これでいいんだろ、ギード?』
『ふんっ!遅すぎるんだよ!!』
立ち去ろうとしているヴァイゼ達の姿に慌てて了承を返したゴブリン達は、窺うようにギードへと視線を向ける。
その振る舞いに不満そうに鼻を鳴らしたギードは、駆け足でヴァイゼ達の後を追い始めていた。
『あいつ・・・ギードっつったか?前にも思ったが、悪くないんじゃねぇの?』
『確かにな・・・デニス、お前はどう思う?』
先ほどまでのギードの振る舞いを黙って観察していたアクスは、その姿に可能性を感じ嬉しそうな笑みを漏らす。
彼は先行する相棒に同意を求めて声を掛けるが、ヴァイゼはどこか言葉を濁すと、僅かに後ろを駆けていたデニスへと話題を振っていた。
『あいつは・・・おそらく生き残るために仲間を裏切って人間についた。そういう生き方は、俺は好きじゃない』
これまでの出来事から、ギード達が魔物を裏切って人間側についたゴブリンだと推測したデニスは、チラリと振り返ってギードの姿に目をやると、軽蔑するような視線向ける。
後ろについてきているゴブリン達となにやら言葉を交わしていたギードは、その視線に気がつき振り向くと、デニスに対して睨みつけるような目つきを返していた。
『いや、どちらかというとお前の方が・・・ぐっ!』
『そうだな、デニス。お前は正しい』
ギードの振る舞いを生き残るための必死と考えれば、デニスがした事はただの我が侭に過ぎない。
それを指摘し、茶化そうとしていたアクスの口をヴァイゼは塞いでいた。
デニスの考えや行動は、あまりに青臭く潔癖すぎるものであった。
しかしヴァイゼはそのあり方こそに価値があると感じていた、その理想にこそゴブリンを導く未来があると。
『・・・そうか』
ヴァイゼに自らの考えを肯定されたデニスは、そう短く返すと黙りこくり、黙々と走り始める。
その後ろでは、ギードが後ろの仲間達となにやら言い合いながら、騒がしくついてきていた。
『ヴァイゼさん!逃げる?どうしてだ、俺達は・・・』
部屋の隅で壁の隙間からやってくる魔物達を抑えていたゴブリン達は、オーデンが倒れたことで勢いがなくなった魔物達の前に、どうしていいか分からなくなって立ち往生してしまっていた。
彼らは頼れる存在であるヴァイゼの登場に喜びの声を上げるが、同時に彼が口走った言葉に疑問を感じてもいた。
彼らからすれば悪の権化であるオーデンは倒されたのだから、急いで逃げる理由などない筈に思える、その考えから彼らはヴァイゼの指示に反感を示していた。
『オーデンが倒れても俺達が裏切った事に変わりはない!今はこの混乱の内に逃げ出すことだけ考えろ、いいな!!』
『し、しかし・・・』
ヴァイゼが大声で伝えた事実にも、彼らの浮ついた心を完全に冷ますまでには至らない。
どうにか食い下がろうとする彼らの中から、一人のゴブリンが進み出ると、彼はある方向を指差していた。
『ヴァイゼさん、逃げるならあの穴を使おう。この騒ぎだ、あそこにいた他の奴らはもういないだろう。俺達が上るときに足場は崩したが、上から下りる分にはどうにかなる筈だ』
集団の中から進み出てきたゴブリン、ギードはヴァイゼに対して彼らがこの部屋へとやってきた穴を指し示す。
それはここから少しだけ距離があるが、その周辺には誰もおらず、誰しもが倒れ伏したオーデンへと注目している中であれば、安全に移動できそうだった。
『ギード、お前!?』
『俺達は生き残るためにこれまで戦ってきた筈だ!そのチャンスを掴もうとして、なにが悪い!!』
ギードの行動に仲間のゴブリン達は驚きと反感の声を上げるが、それに反応した彼の声はさらに強い怒りに満ちていた。
彼らはこれまでも、必死に生き残ろうとして振舞ってきた筈だ。
それなのに目の前の勝利の匂いに惑わされ、転がってきた生き残るチャンスをふいにしようとしている仲間達に、ギードは心底怒り狂い拳を振り上げる。
その迫力に他のゴブリンは圧倒され、続けようとしていた文句を飲み込むことしか出来なくなっていた。
『そうか、悪くないな・・・お前達もそれでいいな?』
ギードの怒りもどこ吹く風と、彼に示された逃走ルートを検討していたヴァイゼは、納得がいったように頷くと、彼らに同意を求めて視線を向けていた。
しかしその冷たい瞳は、これでついてこなければ見捨てると暗に語っている。
事実、彼らがまだ同意していないにもかかわらず、ヴァイゼ達はすでにその穴へと向かって身体を翻しつつあった。
『あ、あぁ・・・分かりました。これでいいんだろ、ギード?』
『ふんっ!遅すぎるんだよ!!』
立ち去ろうとしているヴァイゼ達の姿に慌てて了承を返したゴブリン達は、窺うようにギードへと視線を向ける。
その振る舞いに不満そうに鼻を鳴らしたギードは、駆け足でヴァイゼ達の後を追い始めていた。
『あいつ・・・ギードっつったか?前にも思ったが、悪くないんじゃねぇの?』
『確かにな・・・デニス、お前はどう思う?』
先ほどまでのギードの振る舞いを黙って観察していたアクスは、その姿に可能性を感じ嬉しそうな笑みを漏らす。
彼は先行する相棒に同意を求めて声を掛けるが、ヴァイゼはどこか言葉を濁すと、僅かに後ろを駆けていたデニスへと話題を振っていた。
『あいつは・・・おそらく生き残るために仲間を裏切って人間についた。そういう生き方は、俺は好きじゃない』
これまでの出来事から、ギード達が魔物を裏切って人間側についたゴブリンだと推測したデニスは、チラリと振り返ってギードの姿に目をやると、軽蔑するような視線向ける。
後ろについてきているゴブリン達となにやら言葉を交わしていたギードは、その視線に気がつき振り向くと、デニスに対して睨みつけるような目つきを返していた。
『いや、どちらかというとお前の方が・・・ぐっ!』
『そうだな、デニス。お前は正しい』
ギードの振る舞いを生き残るための必死と考えれば、デニスがした事はただの我が侭に過ぎない。
それを指摘し、茶化そうとしていたアクスの口をヴァイゼは塞いでいた。
デニスの考えや行動は、あまりに青臭く潔癖すぎるものであった。
しかしヴァイゼはそのあり方こそに価値があると感じていた、その理想にこそゴブリンを導く未来があると。
『・・・そうか』
ヴァイゼに自らの考えを肯定されたデニスは、そう短く返すと黙りこくり、黙々と走り始める。
その後ろでは、ギードが後ろの仲間達となにやら言い合いながら、騒がしくついてきていた。
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