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決戦、エイルアン城
エイルアン城の死闘 3
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「・・・いや、それで十分だ」
しかし、彼の絶望はそれに答える者によって拭われる。
クロードによって再び作り直された剣で床に線を描いているレオンは、今だに痺れが取れずに動きが鈍いオーデンに向かって、ゆっくりと駆け出し始めていた。
『ぐっ、お前は!近づくな、それ以上俺様に近づくんじゃねぇぇぇ!!!』
徐々にスピードを上げて近づいてくるレオンの姿に、オーデンは怯えたような声を上げて斧を振り上げた。
たとえ今まで何度も弾き飛ばし圧倒してきた相手だとしても、そいつだけが自分にとって脅威になる存在だと彼も理解している。
そのためそれを遠ざけるために放った一撃は、片手だけであるにもかかわらず鋭く重い。
しかしレオンはそれに反応する素振りすら見せず、ただ一直線にオーデンへと向かって走り続けていた。
「イダ!」
「・・・分かってる」
彼はそれを気にする必要などなかった、なぜなら仲間が必ず守ってくれると知っていたから。
オーデンが振るった斧の軌道に割り込んだアンナとイダは、二人の盾を重ねるように構えてその衝撃に備えている。
その後ろをレオンが駆け抜けていく、彼は通り際にチラリとそちらに視線を向けると、スピードを加速させてオーデンへと向かっていった。
『その程度で、止められると思うな!!』
どんなに準備をしていたとしても、オーデンの重い一撃を受け止めて何の影響がない訳もない。
重ねた盾は、強い衝撃に斜めに傾いてしまう、オーデンはその上に刃を奔らせると、再び高く斧を掲げ、そのままレオンに追撃を放っていた。
「エミリア!!」
「任せなさい!!こんっっっのぉぉぉぉっ!!!」
慌てた声を上げたティオフィラは、その手に紫色の光を纏っている。
彼女が何をしたのかはわざわざその声を聞かなくても、目の前を通り過ぎようとしているオーデンの腕を見れば分かる。
紫色のもやを纏っているその腕に狙いを澄ませたエミリアは、雄叫びを上げながら斧を振り下ろしていた。
『がぁぁぁぁっ!!俺の腕が、腕がぁぁぁぁぁぁっ!!!』
エミリアの一撃は、弱体の掛かったオーデンの肉を切り裂き骨を絶つ。
彼女がその斧を振り下ろすと、オーデンが振るおうとしていた斧は逆に高く舞い上がっていた。
切り飛ばされたオーデンの腕は、その残った勢いと反動に高く舞い上がり、やがて床へと叩きつけられる。
よほど強く握られていたのか、床に叩きつけられても斧を手放さなかったそれは、転がる床に彼へと駆け寄るレオンへと迫る。
レオンはそれを軽く跳ねて避けると、オーデンの懐へと飛び込んでいった。
「皆・・・俺が、決着をつける!」
オーデンの懐にまで飛び込んだレオンは、静かにその剣を振るう。
今だに掛かったままの弱体に、見事な技術によって振るわれた剣は、冗談みたいに深くその肉を切り裂いていた。
しかしあまりに分厚いオーデンの肉に、その傷は深手であっても致命傷には届かない。
レオンは彼の命を狙って、さらに深くと剣を振るう。
『舐めるなぁぁぁっ!!!』
胸元辺りを深く切り裂かれたオーデンは、痛みと怒りで絶叫を上げると、跳ね飛ばされて転がってきていた自らの腕を掴んでいた。
それから斧だけを掴み取ろうとした彼は、しかし一向に離れない自らの腕に、それごと掴んで斧をレオンへと叩きつける。
『構うな!そのまま止めを!!』
『ぐっ!?邪魔を、するなぁぁぁっ!!!』
オーデンの腕の内側、その繋ぎ目辺りに短槍を突き刺したデニスは、それをつっかえさせる様にして彼の攻撃を防いでいた。
その妨害は、少し角度を変えて斧を振るえば何の意味のないものだったかもしれない。
しかし怒りに我を忘れたオーデンは、そのまま振り切ることに固執し、つっかえた槍をみしみしとへし折ろうと力を込めるばかりだった。
「これで、終わりだ」
何度も深く肉を切り裂いていたレオンは、ようやくその奥に蠢く巨大な心臓を捉えていた。
彼はそれを目掛けて思いっきり剣を振りかぶると、全力で突き入れる。
切り裂いた肉に吹き出る血潮が邪魔して視界ははっきりとしないが、その剣先は確かにオーデンの心臓へと届いていた。
『うがぁぁぁぁぁっ!!?お前・・・俺に、俺に・・・何をしたぁぁぁっ!!!』
痛みに絶叫を上げたオーデンは、心臓を貫かれたのにも関わらず意識を保っていた。
しかしそれは正気とは言い難いだろう、血走った目に涎をだらだらと流している彼は、怒りと狂気に蝕まれ暴れ始めている。
「くっ、まだ息があるのか!?もう一度・・・!」
暴れまわるオーデンに振り落とされそうになっていたレオンは、まだ命を失う様子のないオーデンに、再び止めを刺そうと突き刺したままの剣を抜き放とうと腕を伸ばす。
しかし暴れまわるオーデンに、その周りの肉は彼が切り裂いてしまっており、掴んでも捲れるばかりで中々剣まで辿りつけなかった。
「よし、これで・・・」
「レオン!そこから離れて!!」
ようやく剣へと辿り着き、その柄へと手を伸ばしたレオンの背中に声が掛かる。
そちらへと目をやれば、杖を構えそれをこちらへと真っ直ぐに伸ばしたクラリッサがいた。
彼女の周りからはなにやら魔法的な輝きが漏れている、その顔色は青白く冷たい汗も伝っていたが、魔法を使わずに休んだ時間に、どうやら振り絞れるほどの魔力を回復したらしい。
「くっ、マジかっ!?」
「ライトニング!!!」
慌てて掴んだ剣を手放して、そこから飛び降りたレオンの頭の上を、クラリッサが放った雷光が通り過ぎていく。
クラリッサの放った魔法はレオンが手放した剣を狙っており、それを射抜いた雷はその雷光をオーデンの身体の内部へと浸透させると、心臓ごと彼の身体を焼き尽くしていた。
「あっぶねぇ・・・うおぉっ!?」
稲妻に射抜かれ焼け焦げたオーデンの身体は、ぷすぷすと煙を上げながらゆっくりと倒れ付していく。
クラリッサの魔法からギリギリ逃れ、ほっと一息ついていたレオンは、上から迫り来る影に慌ててその場から飛び退いていた。
「やったにゃ!?やったー!!やってやったにゃー!!!」
「ちょっとティオ!?安心するには、まだ・・・」
床に倒れ伏せ、身体から煙を上げているオーデンの姿を目にしたティオフィラは、勝利を確信すると拳を振り上げる。
彼女は歓声を上げながら走り出すと、近くにいたエミリアへと飛び込んでいく。
いきなり飛び込んできたティオフィラの身体を何とか受け止めたエミリアは、安心するのはまだ早いと警戒を口にする。
しかしその口元は、抑えきれない喜びで緩んでしまっていた。
「やった・・・やりましたね、クロード様!!私・・・!」
「・・・重い」
斜めになった盾から顔を覗かせて、勝利の喜びをゆっくりと噛み締めるアンナは、真っ先にそれをクロードに伝えようとそちらへと振り向いている。
しかしアンナのお尻はイダの身体を下敷きにしており、苦しそうな彼女の声にようやくそれを思い出したアンナは、慌ててそこから飛び退いていた。
「ご、ごめんねイダ!私気づかなくて・・・」
「・・・問題ない。クロード、ぶい」
アンナのお尻によって押し潰されていたイダは、彼女に助け起こされることでようやく立ち上がっていた。
その格好は少しばかり草臥れているようで、それを自分のせいだと気にするアンナが謝罪の言葉と共に、直してあげている。
ある程度整えられたところでそれを手で制止したイダは、クロードの方へと向き直ると小さくブイサインを作っていた。
「やったな、クラリッサ!・・・これでなんとか生き残れそうだ」
他の魔物達を抑える戦いから抜け出してクラリッサへと近づいてきたロイクは、勝利に沸く少女達の姿を満足そうな表情で眺めていた彼女へと声を掛ける。
彼がそこから抜け出せたのも、オーデンが床へと倒れ伏せる姿に、魔物達が呆気に取られ戦うどころではなくなっていたからだろう。
「えぇ、そうですね。これで向こうの士気が落ちて混乱してくれれば、その間に・・・」
声を掛けてきたロイクの方へと目をやったクラリッサは、そのままその後方へと視線を向ける。
そこには彼が先ほどまで戦っていた魔物達がおり、その多くは倒れ伏したオーデンに驚き目を見開いては戦意を失っていた。
彼らの中には武器を取り落とし、崩れ落ちるように膝をついている者すらいた、その姿にクラリッサは次の行動への思案を深める。
彼女達がここにやってきた理由は元々アンナを助け出すためだ、何もこの城のボスを倒す事が目的だった訳ではない、それを忘れていないクラリッサは、どうにか無事に逃げ出す方法を画策していた。
しかし、彼の絶望はそれに答える者によって拭われる。
クロードによって再び作り直された剣で床に線を描いているレオンは、今だに痺れが取れずに動きが鈍いオーデンに向かって、ゆっくりと駆け出し始めていた。
『ぐっ、お前は!近づくな、それ以上俺様に近づくんじゃねぇぇぇ!!!』
徐々にスピードを上げて近づいてくるレオンの姿に、オーデンは怯えたような声を上げて斧を振り上げた。
たとえ今まで何度も弾き飛ばし圧倒してきた相手だとしても、そいつだけが自分にとって脅威になる存在だと彼も理解している。
そのためそれを遠ざけるために放った一撃は、片手だけであるにもかかわらず鋭く重い。
しかしレオンはそれに反応する素振りすら見せず、ただ一直線にオーデンへと向かって走り続けていた。
「イダ!」
「・・・分かってる」
彼はそれを気にする必要などなかった、なぜなら仲間が必ず守ってくれると知っていたから。
オーデンが振るった斧の軌道に割り込んだアンナとイダは、二人の盾を重ねるように構えてその衝撃に備えている。
その後ろをレオンが駆け抜けていく、彼は通り際にチラリとそちらに視線を向けると、スピードを加速させてオーデンへと向かっていった。
『その程度で、止められると思うな!!』
どんなに準備をしていたとしても、オーデンの重い一撃を受け止めて何の影響がない訳もない。
重ねた盾は、強い衝撃に斜めに傾いてしまう、オーデンはその上に刃を奔らせると、再び高く斧を掲げ、そのままレオンに追撃を放っていた。
「エミリア!!」
「任せなさい!!こんっっっのぉぉぉぉっ!!!」
慌てた声を上げたティオフィラは、その手に紫色の光を纏っている。
彼女が何をしたのかはわざわざその声を聞かなくても、目の前を通り過ぎようとしているオーデンの腕を見れば分かる。
紫色のもやを纏っているその腕に狙いを澄ませたエミリアは、雄叫びを上げながら斧を振り下ろしていた。
『がぁぁぁぁっ!!俺の腕が、腕がぁぁぁぁぁぁっ!!!』
エミリアの一撃は、弱体の掛かったオーデンの肉を切り裂き骨を絶つ。
彼女がその斧を振り下ろすと、オーデンが振るおうとしていた斧は逆に高く舞い上がっていた。
切り飛ばされたオーデンの腕は、その残った勢いと反動に高く舞い上がり、やがて床へと叩きつけられる。
よほど強く握られていたのか、床に叩きつけられても斧を手放さなかったそれは、転がる床に彼へと駆け寄るレオンへと迫る。
レオンはそれを軽く跳ねて避けると、オーデンの懐へと飛び込んでいった。
「皆・・・俺が、決着をつける!」
オーデンの懐にまで飛び込んだレオンは、静かにその剣を振るう。
今だに掛かったままの弱体に、見事な技術によって振るわれた剣は、冗談みたいに深くその肉を切り裂いていた。
しかしあまりに分厚いオーデンの肉に、その傷は深手であっても致命傷には届かない。
レオンは彼の命を狙って、さらに深くと剣を振るう。
『舐めるなぁぁぁっ!!!』
胸元辺りを深く切り裂かれたオーデンは、痛みと怒りで絶叫を上げると、跳ね飛ばされて転がってきていた自らの腕を掴んでいた。
それから斧だけを掴み取ろうとした彼は、しかし一向に離れない自らの腕に、それごと掴んで斧をレオンへと叩きつける。
『構うな!そのまま止めを!!』
『ぐっ!?邪魔を、するなぁぁぁっ!!!』
オーデンの腕の内側、その繋ぎ目辺りに短槍を突き刺したデニスは、それをつっかえさせる様にして彼の攻撃を防いでいた。
その妨害は、少し角度を変えて斧を振るえば何の意味のないものだったかもしれない。
しかし怒りに我を忘れたオーデンは、そのまま振り切ることに固執し、つっかえた槍をみしみしとへし折ろうと力を込めるばかりだった。
「これで、終わりだ」
何度も深く肉を切り裂いていたレオンは、ようやくその奥に蠢く巨大な心臓を捉えていた。
彼はそれを目掛けて思いっきり剣を振りかぶると、全力で突き入れる。
切り裂いた肉に吹き出る血潮が邪魔して視界ははっきりとしないが、その剣先は確かにオーデンの心臓へと届いていた。
『うがぁぁぁぁぁっ!!?お前・・・俺に、俺に・・・何をしたぁぁぁっ!!!』
痛みに絶叫を上げたオーデンは、心臓を貫かれたのにも関わらず意識を保っていた。
しかしそれは正気とは言い難いだろう、血走った目に涎をだらだらと流している彼は、怒りと狂気に蝕まれ暴れ始めている。
「くっ、まだ息があるのか!?もう一度・・・!」
暴れまわるオーデンに振り落とされそうになっていたレオンは、まだ命を失う様子のないオーデンに、再び止めを刺そうと突き刺したままの剣を抜き放とうと腕を伸ばす。
しかし暴れまわるオーデンに、その周りの肉は彼が切り裂いてしまっており、掴んでも捲れるばかりで中々剣まで辿りつけなかった。
「よし、これで・・・」
「レオン!そこから離れて!!」
ようやく剣へと辿り着き、その柄へと手を伸ばしたレオンの背中に声が掛かる。
そちらへと目をやれば、杖を構えそれをこちらへと真っ直ぐに伸ばしたクラリッサがいた。
彼女の周りからはなにやら魔法的な輝きが漏れている、その顔色は青白く冷たい汗も伝っていたが、魔法を使わずに休んだ時間に、どうやら振り絞れるほどの魔力を回復したらしい。
「くっ、マジかっ!?」
「ライトニング!!!」
慌てて掴んだ剣を手放して、そこから飛び降りたレオンの頭の上を、クラリッサが放った雷光が通り過ぎていく。
クラリッサの放った魔法はレオンが手放した剣を狙っており、それを射抜いた雷はその雷光をオーデンの身体の内部へと浸透させると、心臓ごと彼の身体を焼き尽くしていた。
「あっぶねぇ・・・うおぉっ!?」
稲妻に射抜かれ焼け焦げたオーデンの身体は、ぷすぷすと煙を上げながらゆっくりと倒れ付していく。
クラリッサの魔法からギリギリ逃れ、ほっと一息ついていたレオンは、上から迫り来る影に慌ててその場から飛び退いていた。
「やったにゃ!?やったー!!やってやったにゃー!!!」
「ちょっとティオ!?安心するには、まだ・・・」
床に倒れ伏せ、身体から煙を上げているオーデンの姿を目にしたティオフィラは、勝利を確信すると拳を振り上げる。
彼女は歓声を上げながら走り出すと、近くにいたエミリアへと飛び込んでいく。
いきなり飛び込んできたティオフィラの身体を何とか受け止めたエミリアは、安心するのはまだ早いと警戒を口にする。
しかしその口元は、抑えきれない喜びで緩んでしまっていた。
「やった・・・やりましたね、クロード様!!私・・・!」
「・・・重い」
斜めになった盾から顔を覗かせて、勝利の喜びをゆっくりと噛み締めるアンナは、真っ先にそれをクロードに伝えようとそちらへと振り向いている。
しかしアンナのお尻はイダの身体を下敷きにしており、苦しそうな彼女の声にようやくそれを思い出したアンナは、慌ててそこから飛び退いていた。
「ご、ごめんねイダ!私気づかなくて・・・」
「・・・問題ない。クロード、ぶい」
アンナのお尻によって押し潰されていたイダは、彼女に助け起こされることでようやく立ち上がっていた。
その格好は少しばかり草臥れているようで、それを自分のせいだと気にするアンナが謝罪の言葉と共に、直してあげている。
ある程度整えられたところでそれを手で制止したイダは、クロードの方へと向き直ると小さくブイサインを作っていた。
「やったな、クラリッサ!・・・これでなんとか生き残れそうだ」
他の魔物達を抑える戦いから抜け出してクラリッサへと近づいてきたロイクは、勝利に沸く少女達の姿を満足そうな表情で眺めていた彼女へと声を掛ける。
彼がそこから抜け出せたのも、オーデンが床へと倒れ伏せる姿に、魔物達が呆気に取られ戦うどころではなくなっていたからだろう。
「えぇ、そうですね。これで向こうの士気が落ちて混乱してくれれば、その間に・・・」
声を掛けてきたロイクの方へと目をやったクラリッサは、そのままその後方へと視線を向ける。
そこには彼が先ほどまで戦っていた魔物達がおり、その多くは倒れ伏したオーデンに驚き目を見開いては戦意を失っていた。
彼らの中には武器を取り落とし、崩れ落ちるように膝をついている者すらいた、その姿にクラリッサは次の行動への思案を深める。
彼女達がここにやってきた理由は元々アンナを助け出すためだ、何もこの城のボスを倒す事が目的だった訳ではない、それを忘れていないクラリッサは、どうにか無事に逃げ出す方法を画策していた。
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