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決戦、エイルアン城

集う者たち 4

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「ふっふっふ・・・それなら、ティオが魔法で―――」
『おいおいおい!!何をちんたら話し合ってやがる!!てめぇら状況を分かってんのか!?こっちには人質がいるんだぞ、とっとと武装解除して投降しやがれ!!』
「にゃぁ・・・」

 手詰まりな話し合いに、ようやく自分の出番だともったいぶって会話に割り込もうとしたティオフィラは、さらに割り込んできたオーデンの怒鳴り声に出番を奪われる。
 オーデンはお互いに顔を突き合わせてひそひそと話し合いを続けているクロード達に、主導権はこちらにあるとアンナを高く掲げて見せ付けていた。
 その言葉の意味は分からなかったが、彼に出番を奪われてしまったティオフィラは、悲しそうに耳を伏せて唇を尖らせていた。

『あぁ?ちっ、そうかよ。言葉が通じてねぇんじゃ、意味ねぇか・・・じゃあ、こうすりゃ分かるか!!』
「あぁ、あぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 投降の宣告にもいまいち反応が薄いクロード達に、言葉が通じていないと思い出したオーデンは、それがなくとも伝わるアクションで訴えかけること選択する。
 それは高く掲げたアンナを、握りつぶそうと力を込めることだ。
 みしみしと軋む骨格に、潰れて歪んだ肉は猛烈な痛みを届けている、その激痛に絶叫を上げたアンナは、足だけを精一杯暴れさせていた。

「あいつ!!」
「止めろ、アンナが殺されちまう!武器を捨てて投降しろって言ってんだ、今は従うしか・・・」

 アンナの悲鳴に激昂したエミリアはすぐに弓を構えるが、それはクロードによって制止されていた。
 彼はオーデンが先ほど話していた内容を端的に伝え、自らはエミリアから譲り受けた弓を床に置くが、エミリアは納得が出来ないといった風に唸り声を漏らしていた。

「クロード様、それは・・・」

 クロードの言葉に判断を迷わせるクラリッサも、躊躇いながらもその杖を床へとそっと置いた。
 彼女はオーデンに締め付けられるアンナの事を考えていた、クロード達が武装を解除していくのを眺めている彼は、その間はアンナを締め付ける力を弱めているようだった。

「俺の力なら素手でも問題ない。奴が近づいてきたら床を崩すから、後は皆でアンナを!」
「そんなにうまくいくものかしら・・・?」

 クロードはその手に僅かに光を纏わせながら、考えていた作戦を説明する。
 しかしそれは、かなり成り行き任せの適当なものであった。
 彼の話した内容に呆れながらも、それしか手段がないとしぶしぶ従ったエミリアは、その手にした弓と背中に背負った斧を床へ置いていく。

「にゃ~?ティオはどうすればいいにゃ?」
「・・・ティオはそのまま、座ってて」
「にゃ!分かったにゃ!」

 武装に見えるものを特に身につけていないティオフィラは、周りが次々に武器を置いていく姿に戸惑い、首を捻ってしまっていた。
 隠したナイフをオーデンにまだ見つかっておらず、外していないクラリッサと違い、彼にばれているためそれを床に置いていたイダは、ティオフィラに座るように指示を出すと自らも蹲る。
 自然とイダの横に並んだティオフィラは、彼女の肩に自らのそれを合わせると、どこか楽しそうに床に両手をつけていた。

『おぉ?随分と物分りがいいじゃねぇか?やっぱ人間共にはこういうのが効くのか?まぁいい、誰か奴らの得物を・・・って誰もいないのか』

 次々に得物を放り出して床に跪き、投降の意思をその姿で示しているクロード達に、オーデンは意外そうに軽く驚いていた。
 彼は自らの言葉が、クロードによって翻訳されているなど知る由もない。
 そのため彼はアンナを強く握って痛めつけてみせた振る舞いが、それほど有効だったのかと首を捻りながらも自画自賛していた。

『ちっ、奴らはいつまで揉めてるんだ?いや、あれも後で処理しなけりゃならんのか・・・まったく』

 クロード達の武器を回収するように周りへと下した命令は、誰からも答えられる事なく流れていく。
 オーデンの視線の先には、今だに絡み合って揉めているゴブリンとリザードマンの姿があった。
 彼らの姿は今や大広間の向こう側の柱に隠れ、その手足や身体の一部が見えるばかり。
 その姿に呆れたような溜め息を漏らしたオーデンも、彼らが裏切り者であることを思い出せば、今度は頭が痛くなる。
 再び長々と溜め息を吐いた彼は、のっしのっしとクロード達へと近づいていった。

「今だっ!!」
『なんだぁ?うおっ!?』

 自らの目の前にあった武器へと手を伸ばしたオーデンの姿に、平伏する仕草で床に手を伸ばしていたクロードはその能力を発動させる。
 眩く光るは黄金の輝き、それはオーデンの周辺を覆って立ち上った。
 声を上げたクロードに反応して少女達は一斉に自らの獲物を手に取った、不意を突かれたオーデンはその眩さに驚きの声を上げるしかできない。

『舐めるなぁ!!!』
「なっ!がぁっ!!?」

 驚き、戸惑っていたと思われたオーデンは、その実素早く足を引いてクロードの力の影響範囲から逃れていた。
 その上彼は、空いている方の手でクロードの身体を弾き飛ばしてもいた。
 能力を発動しきる前に床から手を離された事で、その影響は限定され床の一部が崩れただけで終わってしまう。

『一度見せた事が命取りだったなぁ!!』

 クロード達が壁を破壊して謁見に間へとやってくるのを、オーデンは目撃していた。
 その際に見た光と同じ光が足元を覆えば、その後の展開は予想がつくというもの。
 彼は自らが吹き飛ばしたクロードに向かって、勝ち誇った声を上げる。
 オーデンの馬鹿力によって弾かれたクロードの身体は、床の上をごろごろと転がると柱にぶつかって動かなくなっていた。

「クロード様!!?」
「クラリッサ、今は!!」

 吹き飛ばされ動かなくなったクロードの姿に、駆け寄ろうとしたクラリッサをエミリアが制止する。
 はっきりとした抵抗の意思を見せてしまった以上、ここで少なくともアンナを助けられなければ詰んでしまう。
 エミリアの言葉に躊躇いを呑み込んだクラリッサは、手にした杖を抱え込むと空いた片手にナイフを取り出していた。
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