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穏やかな日々の終り
アンナは一人、道を外れる
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大振りの木の枝に、縛られ吊り下げられた猪の死骸が揺れる。
身長の違いからか、イダとクラリッサが担いでいる前方へとその棒は傾き、荷重もそちらへと多く掛かっているようだったが、一行の中で一番力持ちのイダが頑張ってそれを運んでいた。
「あ!あれは・・・やっぱり!」
彼女らの後方に位置し、周辺を警戒していたアンナは、何かを見つけるとそちらに駆け出していく。
アンナは森の中の僅かに開けた場所に座り込むと、そこに生えていた草を摘んでは指で潰す。
草の汁が染みた指先を鼻に近づけた彼女は、何か納得するような声を上げていた。
「何か使える植物でも見つけたの?アンナが喜ぶとしたら、料理につかえるものかしら?」
「うん、レモンミント。一杯あるからちょっと取っておきたいの、先に行ってて」
彼女の突然の行動に、一向は足を止めていた。
エミリアはアンナの振る舞いに、彼女がその行動を行った理由を探し当てる。
上機嫌に周りを眺めては草を摘み取っていたアンナは、その声に顔を上げると皆に先に行っているようお願いをしていた。
「・・・一人で大丈夫?」
「三人でもなんとか運べそうですし、私かエミリアも残りましょうか?」
一人でこの場に残るというアンナに、エミリアとクラリッサが口々に心配を述べる。
ティオフィラとイダも言葉にこそしないが、心配そうな表情を浮かべていた。
「もう!私だって成長してるんだから!!一人でも大丈夫!それに少しの間だから、必要な量集めたらすぐに追いかけるし」
彼女達の心配に、アンナは自らの腕を叩いて成長をアピールしていた。
確かにこの数ヶ月の戦いで後方支援役だった彼女は、立派な盾役として成長している。
単独行動を望む彼女には、それによって培った自負があった。
「そう?本当に大丈夫なのね?」
「平気平気、心配ないって!」
それでもなお心配そうな視線を向けるクラリッサに、アンナは心配ないと力強く言い切った。
それは成長を望む背伸びであり、自信に裏づけされた飛躍の芽生えでもある。
アンナの表情にこれ以上強く引き止めるのは、彼女の成長に良くないと判断したクラリッサは渋々引き下がっていた。
「分かったわ、アンナ。なるべく早く切り上げるのよ?何かあったら大声を上げるように」
「うん」
クラリッサの言いつけに素直に頷くアンナは、すぐにでも植物の採取に戻りたいのか、どこかうずうずしていた。
その様子に判断を誤ったかという考えがよぎったクラリッサも、今更許可を取り消すのは難しく、彼女が採取に戻るのを止める事は出来なかった。
「それじゃ、私達は帰りましょう。危ないと感じたら、すぐに切り上げるのよ!」
「は~い」
アンナを見送ったクラリッサは、帰途の道を再開する。
よぎった不安に最後に掛けた注意にも、アンナは気のない返事を返すだけだった。
不安を抱えたままのクラリッサは、ゆっくりと歩みを進ませ始める。
アンナが植物の採取に夢中になって、時間を忘れるまでにそう暇は掛からなかった。
身長の違いからか、イダとクラリッサが担いでいる前方へとその棒は傾き、荷重もそちらへと多く掛かっているようだったが、一行の中で一番力持ちのイダが頑張ってそれを運んでいた。
「あ!あれは・・・やっぱり!」
彼女らの後方に位置し、周辺を警戒していたアンナは、何かを見つけるとそちらに駆け出していく。
アンナは森の中の僅かに開けた場所に座り込むと、そこに生えていた草を摘んでは指で潰す。
草の汁が染みた指先を鼻に近づけた彼女は、何か納得するような声を上げていた。
「何か使える植物でも見つけたの?アンナが喜ぶとしたら、料理につかえるものかしら?」
「うん、レモンミント。一杯あるからちょっと取っておきたいの、先に行ってて」
彼女の突然の行動に、一向は足を止めていた。
エミリアはアンナの振る舞いに、彼女がその行動を行った理由を探し当てる。
上機嫌に周りを眺めては草を摘み取っていたアンナは、その声に顔を上げると皆に先に行っているようお願いをしていた。
「・・・一人で大丈夫?」
「三人でもなんとか運べそうですし、私かエミリアも残りましょうか?」
一人でこの場に残るというアンナに、エミリアとクラリッサが口々に心配を述べる。
ティオフィラとイダも言葉にこそしないが、心配そうな表情を浮かべていた。
「もう!私だって成長してるんだから!!一人でも大丈夫!それに少しの間だから、必要な量集めたらすぐに追いかけるし」
彼女達の心配に、アンナは自らの腕を叩いて成長をアピールしていた。
確かにこの数ヶ月の戦いで後方支援役だった彼女は、立派な盾役として成長している。
単独行動を望む彼女には、それによって培った自負があった。
「そう?本当に大丈夫なのね?」
「平気平気、心配ないって!」
それでもなお心配そうな視線を向けるクラリッサに、アンナは心配ないと力強く言い切った。
それは成長を望む背伸びであり、自信に裏づけされた飛躍の芽生えでもある。
アンナの表情にこれ以上強く引き止めるのは、彼女の成長に良くないと判断したクラリッサは渋々引き下がっていた。
「分かったわ、アンナ。なるべく早く切り上げるのよ?何かあったら大声を上げるように」
「うん」
クラリッサの言いつけに素直に頷くアンナは、すぐにでも植物の採取に戻りたいのか、どこかうずうずしていた。
その様子に判断を誤ったかという考えがよぎったクラリッサも、今更許可を取り消すのは難しく、彼女が採取に戻るのを止める事は出来なかった。
「それじゃ、私達は帰りましょう。危ないと感じたら、すぐに切り上げるのよ!」
「は~い」
アンナを見送ったクラリッサは、帰途の道を再開する。
よぎった不安に最後に掛けた注意にも、アンナは気のない返事を返すだけだった。
不安を抱えたままのクラリッサは、ゆっくりと歩みを進ませ始める。
アンナが植物の採取に夢中になって、時間を忘れるまでにそう暇は掛からなかった。
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