終わる世界のブレイブス チート能力で楽して暮らそうと思ったら、人類が滅びかけてるんだが？

育成の始まり

能力検分

　この頭に感じる熱は、どうやら気持ちの悪いものではないらしい。
　後頭部から伝わってくる温もりは柔らかい、このまま眠ってしまいたいほどに。
　しかし何か、やらなければならない事があったような。
　そう確か、何かを見たいと願っていたんだ。
　重い目蓋は、確かな欲望によって開かれる、その理由はきっと忘れてしまった。

「・・・クロード様？もう起きられて大丈夫なんですか？もっとお休みになられても・・・」
「・・・アンナ？なんだ、なにが・・・ひぃ！？」

　クロードの頭を膝枕していたアンナは、薄く目蓋を開いた彼に気がつくと、優しく気遣う声を掛ける。
　下から見上げる彼女の顔に、状況が飲み込めないクロードは瞬きをすると、視界に飛び込んできたウインドウに身体を縮こませた。

「ひぃぃぃ！！？止めろ、止めてくれぇぇぇぇ！！」
「クロード様！？大丈夫ですか！！誰か、誰か来て！！」

　目蓋を閉じてみても消えない情報に、彼は意識を失う前の恐怖思い出して悲鳴を上げる。
　急に膝上で暴れだした彼の姿に、動揺したアンナは周りへと助けを求める、その声に少女達が駆け寄ってきていた。

「アンナ、目を覚ましたの！？」
「これは・・・一体どうすれば」
「ああぁぁぁぁ！！止めろ、止めてく、れ・・・ん、これは？」

　アンナの声に目を覚ましたクロードの姿を見た少女達は、戸惑いの声を上げる。
　復活の能力を事前に知らされていたために、それほど取り乱していなかった彼女達も、再び苦しみだした彼の姿に対応の術をなくして混乱してしまう。
　動揺する彼女達に構っている余裕のないクロードは、そんな事を気にも留めない、彼は悲鳴を上げ続けていた。
　しかしそれもいつか疑問へと変わる、その目蓋の裏にはアンナのステータスと呼べるものしか映っていなかった。

「いけるか？えー・・・っと、あぁ！そんな感じね、なるほどなるほど」
「だ、大丈夫ですか、クロード様？」
「・・・平気？」

　恐る恐る目蓋開いたクロードの視界には、相変わらずアンナのステータスだけが表示されている。
　彼は心配そうにこちらを覗き込んでいるイダへと意識を向けると、アンナのステータスが消え彼女のそれが表示された。
　一人納得の言葉を呟いているクロードに、少女達が心配げな声を掛ける。
　彼はその少女達に視線を巡らせると、一通りステータスを確認していた。

「なんだよ、普通に使えるじゃん。待てよ、あいつ最初にこれは神の領域とか言ってたな・・・さっきのは完全に、それだったじゃねぇか。くそっ！調節ミスりやがったな、あの駄女神め・・・」
「・・・何の事でしょうか、クロード様？」
「あぁ、いやなんでもないんだ。気にしないでくれ」

　明らかな調整ミスによる被害を被ったクロードは、その原因に対して文句を漏らす。
　その独り言を近くで聞いていたアンナは、よく分からない内容に首を捻る。
　思わず出てしまった言葉に、すぐに誤魔化したクロードの声にも、彼女は首を捻り続けていた。

「ふーん、皆そんな感じなんだ・・・なるほどなるほど。あれ、でもこれって・・・？」
「もう大丈夫なんですか、クロード様？先ほどは大変な状態でしたけど・・・」
「平気平気、さっきは心配掛けて悪かったな。もう大丈夫だから、安心してくれ」

　周りの少女達に視線を巡らせて、そのステータスを切り替えては内容を把握するクロードは、その内容に疑問を感じる。
　先ほどまでの様子に心配の声を掛けてきたクラリッサへと視線を向ける彼は、彼女を安心させるための言葉を捜しながら、そのステータスに注意を向けていた。

「やっぱり、そうだよなぁ・・・」
「ちょっと、なんか視線がいやらしいだけど！」
「にゃはは！！にいやんのエッチー！！」
「・・・ティオ、捲りすぎ」

　再び彼女達へと視線をやってはステータスを確認しているクロードに、エミリアはそのなだらかな胸元を隠した。
　彼女の振る舞いを見たティオフィラは笑い声を上げると、寧ろ服をパタパタはためかせては肌を露出させている。
　そんなティオフィラの仕草に、イダは必要以上に服が捲れないようその裾を抑えてあげていた。

「ち、違うって！これはだなぁ・・・おほんっ！えぇー、今から皆さんの能力を発表します」
「ほ、本当に見えるのですか、クロード様！？」

　少女達からセクハラ疑惑を掛けられたクロードは否定の言葉に詰まると、さっさと視線の意図を説明する事に意識を切り替える。
　彼の言葉にクラリッサが驚きの声を上げるが、周りの皆も一様に驚きの表情を作っていた。

「見える、見える。ていうか、見えてる。それじゃ、話してもいいか？あ、でもそうか・・・他人には聞かれたくなかったりするかな？個別に話した方がいいか？」
「いえ、ここで話していただいて構いません・・・私達は、運命共同体ですから。皆もいいわね？」

　クラリッサの疑問の声に、クロードは彼女のステータスへと視線をやりながら答えてみせた。
　まだ半信半疑ながらも引き下がったクラリッサに、早速話し始めようとしたクロードは、しかしその内容が重大なプライバシーに関わるのではないかと懸念する。
　その懸念は優しく微笑んだクラリッサに払拭される、彼女に同意を求められた少女達も、その言葉に迷わず頷いていた。

「・・・そうか、そうだったな。じゃあ、まず始めにクラリッサの能力から・・・」
「は、はい！お願いします！！」

　自らが発した言葉を受け入れてくれた少女達の姿に、クロードは照れくさそうに微笑んだ。
　彼は表示したままだった、クラリッサのステータスから発表を始める。
　緊張に両拳を握り締めたクラリッサの気合の入った声が響く、周りを囲む少女達もどこか背筋を伸ばしているように見えた。