笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア

文字の大きさ
上 下
70 / 112

18

しおりを挟む



「かなり前の方が取れたから、よく見えると思う。ここの花火は豪華だから、おすすめだ」



 言いながら稀吏は土手をきょろきょろと見渡し、何かを見つけて手を振った。視線を辿ると樋口と綿谷兄弟がいて、既に地面に敷かれたシートの上に座っていた。



「「おそーい!!」」


「随分遅かったですね。何かありましたか」


「い、いや、ちょっと立ち話してただけだ!」


「……そうですか」




 絶対に勘繰られたと思うのだが、樋口は稀吏に苦笑して流した。やっぱり、付き合いが長いから慣れてるんだろうか。


 
「ところで、一つのシートに全員座るには多いので二手に分かれて座ることになりました」




 そう言われてシートに目を向ける。





 …………余裕で全員座れそうな感じだが。




「いや、十分広いとおも……」


「いやいや!!!狭いんだ!その、見た目は広いように見えるかもだが実は狭いんだ!!」




 異論を挟もうとした俺を稀吏が慌てたように遮った。それに目を眇める。




 また何か隠そうとしてるな……。



 稀吏の反応でそう察したが、まあ言いたくないことを無理に暴いても仕方ない。俺は誘われた身なわけだし、あまり好き勝手発言するのは無礼だろう。



俺が引き下がると、稀吏は分かりやすく安堵した。ほっとしたように言い切る。



 
「じゃあ瑚珀と統和がもう一方のシートだな!」




 いや、二人だけなのか。それは何だかあまり二手に分ける必要性を感じられないんだが。




 しかし満面の笑みの稀吏にそれを言うのは気が引けた。



「じゃあさっさと行くぞ」




 納得できていない俺の手首を再び掴み、慎重に手を繋ぎ直した西連寺はずんずんと先へ行く。


 普通、二つに分かれる時は分かれるとはいえ配置は近くにするものだと思うんだが、なぜこんな稀吏達から少し離れたところに位置しているのだろうか。歩いて移動する距離とは……。



















































 

────その頃の乾達。



「これで良かったんですか、稀吏?」


「ああ!ありがとう滉!!」


「急に何を言い出すのかと思えば、会長と風紀委員長を仲良くさせたいだなんて………今まで散々衝突していたのですから、親睦を深めるなんて私は無理なように思いますがね」


「かいちょーじゃなくて俺がこはちゃんと二人っきりが良かったなぁ~」


「あなたはただ美形を組み敷きたいだけでしょう」


「えーなんか聞こえ悪いなぁ。それだとなんか俺がめっちゃ乱暴してるみたいじゃん?俺言っとくけどすっごく優しいんだからね~?」


「やってることは同じですよ」


「酷いよ滉ちん!」


「「あれ、きーちゃんニヤニヤしてる~」」


「あ、ほんとだ。きりりん珍しいね~」


「えっ?!?!いや、別にニヤついてなんかない!」


「あ、なるほどね、かいちょーが早速………」


「あああダメだ千秋!バレる!!」


「?何なんですかさっきから」


「「ちーちゃんときーちゃん変なのー」」


「うう…俺まで変……グサってきた」


「ちょ、きりりんそれ俺がいつも変って言ってるの?!?!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

副会長様は平凡を望む

BL
全ての元凶は毬藻頭の彼の転入でした。 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー 『生徒会長を以前の姿に更生させてほしい』 …は? 「え、無理です」 丁重にお断りしたところ、理事長に泣きつかれました。

ボクに構わないで

睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。 あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。 でも、楽しかった。今までにないほどに… あいつが来るまでは… -------------------------------------------------------------------------------------- 1個目と同じく非王道学園ものです。 初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。

王道学園なのに会長だけなんか違くない?

ばなな
BL
※更新遅め この学園。柵野下学園の生徒会はよくある王道的なも のだった。 …だが会長は違ったーー この作品は王道の俺様会長では無い面倒くさがりな主人公とその周りの話です。 ちなみに会長総受け…になる予定?です。

僕の平凡生活が…

ポコタマ
BL
アンチ転校生によって日常が壊された主人公の話です 更新頻度はとても遅めです。誤字・脱字がある場合がございます。お気に入り、しおり、感想励みになります。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

生徒会長親衛隊長を辞めたい!

佳奈
BL
私立黎明学園という全寮制男子校に通っている鮎川頼は幼なじみの生徒会長の親衛隊長をしている。 その役職により頼は全校生徒から嫌われていたがなんだかんだ平和に過ごしていた。 しかし季節外れの転校生の出現により大混乱発生 面倒事には関わりたくないけどいろんなことに巻き込まれてしまう嫌われ親衛隊長の総愛され物語! 嫌われ要素は少なめです。タイトル回収まで気持ち長いかもしれません。 一旦考えているところまで不定期更新です。ちょくちょく手直ししながら更新したいと思います。 *王道学園の設定を使用してるため設定や名称などが被りますが他作品などとは関係ありません。全てフィクションです。 素人の文のため暖かい目で見ていただけると幸いです。よろしくお願いします。

処理中です...