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しおりを挟む※微注意
手の拘束から抜け出そうと足掻くも、一向に外れそうもない。御法川の方が身長があるせいなのか、それとも案外筋肉があるのかは分からないがよくない状況なのは変わりない。
「一年のことのついでに、瑚珀にちょっと忠告しとこうか。少しは警戒心を持ってもらわなきゃ、ね」
そう言って目を細めた御法川は、俺の学ランの襟元をパチンと外し慣れた手つきで中のシャツのボタンを三つ開け手を滑り込ませた。
「っ?!……っお、前、なっんの、つもりだっ」
腹から胸元にかけて御法川の長い指がつーっと皮膚の上を滑ると、ゾクゾクとした得体の知れない痺れが身体に走る。触れられている、たったそれだけのことなのに体のどこにも力が入らない。
「ははっ、可愛い。なんか余計に意地悪したくなっちゃったな。」
艶然と微笑んだ御法川の端正な顔立ちがぐっと近くなり、吐息が耳にかかった。柔軟剤か何かなのか、ほんのり甘い匂いがして俺はぼんやりとしてしまう。
「……どうしよう、思った以上だ」
「っ、何が……んぅっ?!」
独り言のように呟かれたその言葉への問いは、首筋に生暖かいものが這ったことで遮られた。思わずビクッと背筋を震わせる。
「自覚は無理かもしれないけど……危機感は持とうね?」
「い゛っ………」
首に小さな痛みが走り、御法川の体が首から離れる。熱は離れたのに何故かそれとは裏腹に俺の顔は熱を集めた。
「それで、そろそろ話す気になったかな?僕はそんなに気が長い方じゃないんだけど」
「っ……言、わない」
きっと睨むと、御法川の目が冷めたものに変わったのが分かる。
「強情だなぁ」
また御法川が近づく気配がして、不覚にも俺は目をぎゅっと瞑ってしまった。
と、その時。
ガチャっ。
「おはようございま………は?」
風紀室の扉が開いた音がして、亘の地を這うような声が聞こえた。目を開けると、御法川の背中越しに亘が入ってくるのが見えた。
何だか、誤解を招きそうだな……。
「あれ、庵司だ。おはよう」
にっこりとして俺の上で御法川が挨拶する。この状況でよくお前は平然としてられるな。というか退け、重い。
「………今すぐ委員長から半径十メートル以上離れて一回あの世に召されてください、御法川先輩。」
相当怒ってるな、亘。
これはおっかない、と勝手に思っていると、御法川が大袈裟に溜め息を吐く。
「あーあ、庵司が来ちゃったし、仕方ないか。でも、これでちょっとは分かったよね?瑚珀の警戒が足りないって」
「分かったから、もう退け。いい加減重い」
仕方ないなぁ、と言いながら御法川が降りた瞬間、亘が目にも止まらぬ速さで御法川の頭を手にしていた分厚いファイルで殴った。
「いっっったああああ!?」
「角では殴っていないので問題ないでしょう。とりあえず聞きたいことはたくさんありますが今は視界に入ると暴力の衝動が抑えられないのであと三秒で風紀室から出て行ってください」
「えっ」
「三秒以内にここから出なければ御法川先輩の顔の造形は跡形なく変わっていることでしょう」
「怖っ!?」
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