笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア

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予鈴が鳴る五分前になり、龍神と亘は同時に片付けを始めた。

「では委員長、また放課後に」

「ああ」

階段で亘と別れた龍神は三年生のフロアまで上り、教室の扉を開ける。

「「「きゃぁぁああああああ!!!」」」

「龍神様ああ!!!」

「かっこよすぎる……!」

「美しい……!!」

瞬間教室に溢れる黄色い悲鳴を真顔で受け、龍神はおはようと返して席に着いた。

俺は君たちのクラスメイトなんだが。

と、クラスメイトの歓声に複雑な気持ちになる龍神に斜め前の男子が話し掛けた。

「やあやあ、相変わらず大人気だねぇ風紀委員長様」

ひびきか」

声の主は龍神の応答に

「うわ、塩対応」

と笑いながら言った。いつもの事なのか気にしている様子はなく、笑顔で会話を続ける。

「あ、そうだ、知ってる?瑚珀こはく

「何をだ?」

「明日1年に転校生が来るらしい」

「………ああ、それは聞いた。まさかこんな時期とは、どうにも怪しい」

龍神が眉をひそめるのも無理はなかった。現在4月中旬。中途半端にも程がある。

「腐腐腐……いや~、もうこんな時期に来るとか王道転校生決定だよ。俺王道学園来たのに王道見れずに卒業かと焦ってたからマジで感謝」

によによと整った顔立ちに合わぬたるんだ笑みを浮かべる友人に、龍神は素直に気持ち悪いなと思ったが、口には出さず顔をしかめるにとどまった。

彼の名前はひびき 飛鳥あすか。龍神のクラスメイトで、彼の数少ない友人だ。
また、重度の腐男子でもある。

「またもえの供給とかいうやつか」

呆れたような口調だったが、クールな龍神の口から萌えなんて単語が出たことで何人かの生徒が机に突っ伏した。

「いや瑚珀はこれがどんだけ凄くて尊いことか分かってないよ。王道が生で見れるとか生きててそうある事じゃないんだから!」

「……そうか。まあ、俺は問題が起こらなければ何でもいいが」

この友人の言っていることは八割近く分からない事が多い。今回も例によって龍神には理解出来なかったので、早々と話を切り上げて鞄の中の教科書を机の中に入れる。

だから、ボソリと呟かれた返答が聞こえなかった。

















「いや、瑚珀は風紀委員長だから高確率で迷惑が掛かると思うけど」
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