俺を殺す君に!

馬酔木ビシア

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「なな、タッキーは朝飯ご飯派?パン派?」



「俺は絶対ご飯派。パンって腹減らない?」



「分かる。4時間目の前くらいにはもうお腹空いてるもん」



「だよなぁ。1時間目に体育とかあったらもう……」



「超分かるわ。つか、日本人ならやっぱ米だよね」



「違いない」





 ものすごくどうでもいい会話を二人で展開する。いつの間にか俺は、颯斗達の方を見ることもなくタッキーと朝礼台に座って盛り上がっていた。





 これ!!これだよこれ!!友達!!




 くだらない話がどんどん脱線したりするのが楽しくて楽しくて仕方なかった。もう友達なんかできないと思ってたけど、諦めなくて良かったぁ!!






「おっと、もうそろそろ俺帰らないと」



「え、もう?」






 言われて時計を見ると、時刻は既に5時前になっていて焦った。え、俺らめっちゃ話してんじゃん。






「俺この後ちょっと家の用事あるからもう帰んないといけないんだ。カッ……んふっ、か、カッキーも一緒に帰んない?」



「もうそろそろ慣れろよ!!いつまで笑う気じゃゴラァ……えー、俺も一緒に帰りたいけど…」



「けど?」



「颯斗置いて帰れねーから、ここでバイバイだわ」



「颯斗?」






 俺がその名前をうっかり口にするとタッキーはちょっと訝しげな顔をした。しまった、これでタッキーが颯斗に興味持って話しかけたらどうしよう。




 ハッとしてめちゃくちゃ焦った。俺またぼっちに逆戻り??
 




「颯斗って、あいつ?さっきからめっちゃこっち見てる、黒髪の」




 タッキーが指差した先には颯斗が相変わらず俺のクラスメイトと縄跳びしている。めっちゃこっち見てる?颯斗が?





「そうだけど、颯斗こっちなんて見てた?」



「……すごい話してる時見られてる気がしたら、めっちゃ見てたよあの子」



「……タッキーが気になるのかな」





 ちょっとぼっちフラグ立ってて俺が沈んだ声で言うと、タッキーは何言ってんだこいつって目で見てきた。





「あの子が見てたの俺じゃないよ。カッキーだって」



「え?俺?」  






 なんで??俺は颯斗にギリギリ認識されてるゴミみたいなものなのに。




 マジで意味が分からなさすぎて首を傾げる。タッキーの見間違いで実は俺の後ろ見てたとかじゃないの?




 すると俺の様子を見たタッキーが真剣な顔をしてこちらを見た。


  


「……ねぇ、カッキー。あの子とはいつも一緒に帰ってるの?」



「え?うん。颯斗と俺は幼馴染で、颯斗は俺の一個下なんだけど、いつも仲良くしてんの」



「…年下なのに今3の2のやつらと遊んでんの?」



「んや、元々俺がクラスの奴に誘われてて、今日颯斗には遊ぶから先帰ってって言ったんだけど、俺が言うの急すぎたのか俺がクラスのやつと解散するまで待つって言われちゃってさ。そんで颯斗と一緒にいたら、あいつら俺を誘ったことなんて忘れて颯斗のとこ行くから、俺ぼっちになっちゃって」






 まぁそのおかげでタッキーに会えたんだけど、と俺は笑ったが、タッキーは全く笑わなかった。俺の腕を掴んで何だか険しい顔をした。





「……それ、絶対おかしい。いくら幼馴染でも年が一個違ったらそこまでくっつかないよ。登下校はまぁ、まだ分からなくもないけど、遊ぶ時までついてくるのって、それってちょっと普通じゃねぇよ」


「え………」






 そーなの??これって俺がおかしいの??




 幼馴染だからこれくらいあり得るんだと思ってた。それに、何だかんだ颯斗が近くにいる方が目が届いて俺的にも安心だし。何より推しだから全然ウザいとか思わないし、むしろありがとうという感じだ。




 でも、タッキーはめちゃくちゃ真顔で俺に説いてくる。




「絶対に変だ。カッキーは優しいからそれで済ませてるけど、全然それ笑って流せることじゃないよ」




 タッキーはそれはおかしいよとめっちゃ必死に俺を説得して、しまいには早めに距離を置くべきだとすら言われた。うーん。




「うーん、なんか俺がおかしいことは分かった。でもまぁ、俺そんな気にしてないし颯斗は俺にとって大事だから」




 命綱的なね、うん。俺には颯斗を真っ当な攻めに育て受けの暗殺を阻止するという重大ミッションがあるから颯斗とはどうやっても離れられんのだよ。すまぬタッキー。


 俺が眉を八の字にして言うとタッキーはまだ納得してなさそうだった。眉を顰めたままイケメン面を近づけて来た。

 目の前に真剣な整った顔があってびっくりする。こらこら近い。君名前はめっちゃ平凡なクセに顔は整ってるんだから無闇に顔近づけないで!そう言うのは可愛い男の娘にしてください切実に。



「でも、それだとカッキーが……」



「何してるの、要」



 タッキーの顔面にのけぞっていると、後ろからよく聞き覚えのある声が掛けられて俺は思わず固まった。タイムリーすぎる。まさか、まさか、ね……なんて冷や汗垂らしてそっと振り返るとそこには、あの温度のない目をした颯斗がいつの間にやら立っていた。



 死亡フラグとぼっちフラグが両立してるんだがどうすればいい???


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