15 / 22
3
しおりを挟む「あはははっ、平凡な名前だろ?逆に珍しくない?」
俺の思っていることが顔に出てたのかすぐに鈴木は笑った。確かに役所の見本とかでしか今どき見ない名前だけども。それで良いのか鈴木太郎。
「まぁ、何というか、頑張って生きろって感じの名前だな」
微妙な反応を返すしかなくて気まずげにそう言えば、彼は気にした風にすることもなく屈託ない表情で笑った。
「あははっ、でも慣れたらあんまり大変じゃないよ」
「えー……慣れちゃだめなんじゃない?」
「いんだよ、俺別に気にしてないし」
「お、おお」
そう言われるともう俺何も言えないよね。うん。君が良いなら良いだろう。うん。
というか、鈴木太郎の名を慣れたで終わらせられる君のメンタルは鬼強では。
「じゃ、なんて呼べばいい?」
「何でもいいよ、鈴木でも太郎でも」
「うわ出た、『何でも良い』」
「え?」
鈴木の言葉につい口走った俺に怪訝そうな顔が向けられる。いやこれは無意識。
俺もよく姉貴に言われてたわー、『何でも良い』はくそ腹立つからやめろって。それも殺しそうな勢いで睨んで言うもんだから途中から俺『何でも良い』は完全に封印したんだよな。
姉貴曰く、『何でも良い』は一瞬相手の意見を尊重しているように見せかけて実は相手に全ての判断を任せ、自分は何も関係ない、興味ないというスタンスが言動に現れたクソ発言らしい。いやめっちゃ個人差ありますな意見だなと俺は思ったが、姉貴の眼光が怖すぎて一瞬でお口チャックした。女性は怖い。
だから、姉貴の影響で俺は『何でも良い』という言葉に敏感だ。ちょっと会話して出てきただけですぐ気になっちゃうんだよなぁ。
「いやごめん、今のは無意識だった。なんか何でも良いって言葉、嫌ってる人が近くにいてさ、そのせいでちょっと気になっちって。他意はないよ」
頭を掻きながら言うと、あー、と少しきまり悪そうにする鈴木。ごめんね、なんかイヤミみたいになっちゃった……クソ気まずいなすまん。
ここは責任持って俺が雰囲気を直さないと。
「んー、鈴木も太郎もしっくりこねぇな」
「しっくりこないって……」
顎に手をやって考え込む俺に鈴木が苦笑する。いやだって、
「お前、めっちゃイケメンじゃん?なのに鈴木とか太郎とかなんか一致しなくてやだ」
「はっ……!?」
「え?何」
何気なく言ったら鈴木は顔真っ赤にして固まった。ん?俺なんかした?
「……これか、原因は」
……んん??
状況把握が出来ん。よく分からん。
…………ま、いっか!!(適当)
「うーん……どうしよ…すず…いや、リンリン…リンちゃん??」
「なんか不穏なあだ名候補聞こえる」
うーむ、なかなかいいの思い浮かばないな…俺あだ名とかつけるの苦手。
「お!!スズリングオリエン太郎とかどうよ?」
「……まじ?」
「うん」
「流石に却下だわ」
えー、すずもリンも太郎も取り入れた良いあだ名だと思ったんだけど。何でも良いって言ったクセに…まぁ、俺がそれ咎めちゃったんだけどね。
真面目に考えよ。単純なのがいいのかなー。
「うー……あ!これだわ!!」
「聞こうか」
突然神より舞い降りし名ニックネーム!!!
ふっ、これで完璧だ!食らえ鈴木!!
「『タッキー』!!どうだ、可愛くね??」
「……うん、まぁ、合格だな」
いや何その微妙な反応。
ちょっと複雑そうな顔をしているのを見るに、名ニックネームではなかったらしい。ええー、もしかして俺、ネーミングセンスねぇのかな。
そんな可能性が一瞬よぎったけど、俺は首を振って振り払った。うん気のせい気のせい。
「じゃ決まりな。よろしくタッキー。俺のことは…うーん、要がいいかな」
握手のつもりで手を差し出すと、鈴木…いや、タッキーは悪どい笑みを浮かべた。
「うんよろしく。ところで俺だけあだ名なのアレだし君のことはカッキーって呼ぶわ」
「…….え?」
待て待てなんだその牡蠣のゆるキャラみたいなあだ名。
と、思ったけどタッキーを命名したのは俺なので文句は言えなかった。無事に俺達仲良くタッキーとカッキーって呼ぶことになりました。
カッキーって呼ぶ度に吹き出しそうになってるのマジ許さん。
20
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
裏切られた腹いせで自殺しようとしたのに隣国の王子に溺愛されてるの、なぁぜなぁぜ?
柴傘
BL
「俺の新しい婚約者は、フランシスだ」
輝かしい美貌を振りまきながら堂々と宣言する彼は、僕の恋人。その隣には、彼とはまた違う美しさを持つ青年が立っていた。
あぁやっぱり、僕は捨てられたんだ。分かってはいたけど、やっぱり心はずきりと痛む。
今でもやっぱり君が好き。だから、僕の所為で一生苦しんでね。
挨拶周りのとき、僕は彼の目の前で毒を飲み血を吐いた。薄れ行く意識の中で、彼の怯えた顔がはっきりと見える。
ざまぁみろ、君が僕を殺したんだ。ふふ、だぁいすきだよ。
「アレックス…!」
最後に聞こえてきた声は、見知らぬ誰かのものだった。
スパダリ溺愛攻め×死にたがり不憫受け
最初だけ暗めだけど中盤からただのラブコメ、シリアス要素ほぼ皆無。
誰でも妊娠できる世界、頭よわよわハピエン万歳。
【完結】ある日突然、夫が愛人を連れてくるものですから…
七瀬菜々
恋愛
皇后シエナと皇帝アーノルドは生まれた時から結婚することが決められていた夫婦だ。
これは完全なる政略結婚だったが、二人の間に甘さはなくとも愛は確かにあった。
互いを信頼し、支え合って、切磋琢磨しながらこの国のために生きてきた。
しかし、そう思っていたのはシエナだけだったのかもしれない。
ある日突然、彼女の夫は愛人を連れてきたのだ。
金髪碧眼の市井の女を侍らせ、『愛妾にする』と宣言するアーノルド。
そんな彼を見てシエナは普段の冷静さを失い、取り乱す…。
……。
…………。
………………はずだった。
※女性を蔑視するような差別的表現が使われる場合があります。苦手な方はご注意ください。
義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。
アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。
捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!!
承諾してしまった真名に
「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。
【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453
の続きです。
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ
中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。
※ 作品
「男装バレてイケメンに~」
「灼熱の砂丘」
「イケメンはずんどうぽっちゃり…」
こちらの作品を先にお読みください。
各、作品のファン様へ。
こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。
故に、本作品のイメージが崩れた!とか。
あのキャラにこんなことさせないで!とか。
その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)
【R18短編】聖処女騎士はオークの体液に溺れイキ果てる。
濡羽ぬるる
ファンタジー
聖騎士アルゼリーテはオークの大群に犯される中、メスの快楽に目覚めてゆく。過激、汁多め、オカズ向けです。
※自作中編「聖処女騎士アルゼリーテの受難」から、即楽しめるよう実用性重視のシーンを抜粋し、読みやすくヌキやすくまとめた短編です。
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
4人の乙女ゲーサイコパス従者と逃げたい悪役令息の俺
りゅの
BL
おそらく妹が買ったであろうR18の乙女ゲーの世界に入り込んでしまった俺は、気がついたらその世界の悪役として登場していた。4人のサイコパス従者に囲まれ絶体絶命ーーーやだ、視線が怖い!!帰りたい!!!
って思ってたら………あれ?って話です。
一部従者に人外要素ある上バリバリ主人公総受けです。対戦よろしくお願いします。
⚠️主人公の「身体の持ち主」かなりゲスいことやってます。苦手な方はお気をつけください
広告視聴・コメント・ブクマ大変励みになります。いつもありがとうございます。
HOT女性向けランキング 39位
BLランキング 22位
ありがとうございます
2024/03/20
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる