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友達事件
しおりを挟むそれからというもの、俺と颯斗の登下校には新しく薫さんが加わった。
二人はヒーローと悪役っていう役割で対極にいるから俺はそれこそ本気で馬が合わないんじゃないかなとヒヤヒヤしてたけど、意外とそうでもないらしい。二人ともなんだかんだ言いながら本気でバトってることないし、ちゃんと会話成り立ってるし。実は二人って相性いいのでは?これハッピーエンドいけるかも。
しかも面白いことに俺達3人とも学年違うんだよなぁ。これ見ようによってはかなり浮いてると思うけど、ま、そんなこと言ってる内は破滅フラグを潰せねーしな!知らんけど。
「じゃあね、要君!あと颯斗君」
「あっはい薫さん」
「はい」
薫さんが俺と颯斗に手を振って教室に入っていく。俺と颯斗はそれぞれこの一つ上とさらに上の階だ。
にしてもすごいな薫さん、天下の颯斗をついでみたいに言ってたぞ。俺なら怖すぎて多分できない。
そう思いながらちらって見たら颯斗は普通に笑顔だった。安定の爽やか王子スマイルだなー。流石に貼り付けてるって分かるけど。
「じゃ、俺もまたな、颯斗!」
「うん、またね要」
階段を登り終えて別れを告げると、颯斗はにこっと笑って手を振ってくれた。この笑顔は俺に気を許してるが故の特別な笑み──と思いたいのは俺のわがままですハイ。うん、分かってるよ俺はまだ颯斗の中でその辺に落ちてる石ころからしゃべる生命体に昇格したくらいだもんな!!
しくしく、と心の中で泣き真似して教室に入る。くぅ、もういっそのことヒロイン(男)に今のうちに出会ったりしないかな。そしたら颯斗の精神が安定して俺との関係が良好になるのに。
「おはよう要ー」
「おうおはよー」
「おはよう要君!」
「うんおはよ」
クラスメイトの挨拶に返しながら席に座る。名前?うーん、いちお覚えてるけど顔は正直そんなにはっきり覚えてない。
というのも、小説の世界だからか本編に関係ないエキストラみたいな人達はなんかどう頑張ってもぼやぁってしててあんまり記憶に残らないんだよ。うーむ、顔が見えないとかいうことはないんだけどね。ただ印象に残らないだけ。
だから俺そのせいで友人と呼べる友人がいないんだよ…くっそぉ、俺は原作キャラとはなるべくあんまり関わりたくないのにこれじゃあ原作キャラとしか友達になれないだろぉおおお!!
いやまあ、本音言うとキャラと友達って普通に嬉しいけど。だって、破滅ファンならキャラと友達になるとか光栄すぎだろ?
「おはよう成瀬!」
「おー、おはよう阿久津。なんか元気だな」
ニマニマしてるとこ見られたかもやっべ。
慌てて表情筋を引き締めて声の方に顔を向けると、平凡君が一人。この子もいわゆるエキストラの一人だ。でもなんか面白いので覚えている。顔はどうせ家に帰ったら忘れるんだけど。
「なな、今日成瀬暇?」
「え?なんで?」
「今日さ、隣のクラスの連中と俺らで遊ぶんだけど成瀬も来てくれないかなーって」
キュピーン。
この時俺の頭には再び欲が疼いた。
これは!!!
もしかして!!!
友達を作るチャンスなのでは!?
もしかしたら、俺が知らないだけで顔が見えなくても気があって友達になれる人がいるかもしんないし!
「よし!!乗った!!」
「おっしゃ!おいお前ら、成瀬も来るって!!」
阿久津と握手すると振り返ってクラスの皆んなに大声で俺の参加を言い渡す。お、おう、やっぱこの子陽キャの素質あるな。
「え、要君来るの!?やった!!」
「うぉお珍し!!」
「絶対楽しい!」
俺の参加に盛り上がる3年2組。
わあ、俺ってば大人気⭐︎
え?星うざい?ごめんて。
……まあ、気を取り直して。
作るぜ友達!!
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