妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました

日々埋没。

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「少々手間を取りましたが、それでは改めて人豚の調理に移りたいと思います。……火をここに」

「はっ、ただいまお持ちいたします!」

 アルフレッドがすぐさま鋭い指示を出す。
 ゆくゆくは次代をになう王子としての責任感からくるのか、妙な意気込みがうかがえた。
 衛兵が火を用意している間に、アルフレッドが不意にこちらに向かって歩いてくる。
 そのまま私の目の前に立つと、彼からいきなり頭を下げられた。

「リディア。事情があったとはいえ、愛する君に嘘をついていたことは本当に申しわけなく思っている。いずれこの償いは必ずしよう。――だからこんな僕を許してくれるかい?」

「もちろんお許しいたしますわアルフレッド様。お慕いしている貴方がこうして最後に私のところに戻ってきてくださっただけでなにも言うことはありませんもの」

 その意志を示すように、私もまたカーテシーでアルフレッドに応える。
 彼とは積もる話もいっぱいあるが、それはまた今度ゆっくりすればいい。
 だって私たちにはこれからもたくさんの時間があるのだから。

「……ありがとうリディア。今後は絶対に君を、君だけを幸せにすることを今ここに誓おう!」

 アルフレッドが全員に向けてそう宣言すると、そこかしこから祝福の拍手が響き渡る。
 お父様は涙を堪えるようにして目頭を押さえ、お母様は柔らかな笑顔で私を祝ってくれた。

「それでは大変ながらくお待たせいたしました、いよいよ『ファラリウスの雌豚』に点火したいと思います。それじゃあリディア、よければ一緒に初めての共同作業を行ってほしい。これは僕と、その婚約者である君でなければならないから」

「ええ、承知いたしましたわアルフレッド様」

 愛しの彼と二人で一本のトーチを握る。
 煌々こうこうと燃える炎を灯す前に、私は最後に憐れな豚のことを想った。
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