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「お、お願い、リディア――リディアお姉様! 今までのこと全部謝るから、だから助けてよ! お姉様だったらきっと、ううん絶対に国王陛下にお父様やお母様、それにアルも言うことを聞いてくれるわ! もうこの状況をなんとかできるのはあたしの憧れで自慢で成り代わりたいと願った、リディアお姉様しかいないの!」

 お姉さましかいない、ね。
 確かに私が説得すれば、名前の挙がった全員が考えを改めてくれるかもしれない。
 でも駄目。
 謝られても絶対に許さない。
 以前までの豚がそうであったように、私もまたこれにされた仕打ちは忘れない。
 少なくとも豚によって流されたいわれなき誹謗中傷を許容するほど、私は人間ができていない。
 豚と違って決して安くはない自分のプライドを傷つけられて、黙ってなどいられない。
 つらつらと並べ立てた薄っぺらいお世辞なんてもってのほか。
 なにより、この期に及んでまだ私の想い人をアルと呼ぶそのなれなれしい態度が許せなかった。
 だからこそ、強い口調で豚の命乞いを拒絶することにした。

「……ずっと私を敵視して攻撃してきたくせに、いざ自分の立場が危うくなるとすぐそれ? 最後まで他人に甘えようとするなんて本当にいい性根をしているわね、さすがだわ。第一、私にそんな自分本位な相手を助ける義理があると思って?」

「――っ、アンタ、あたしの姉でしょ⁉ 大事な妹が今まさに殺されかかっているのに見捨てるって言うの? この人でなし!」

 あら、おかしなことを言うわね。
 でないのはそっちなのに。

「私に妹は――。だからここにいて私の妹をかたるのは、ただの嘘つきでよく喋る醜い人豚。そうでしょう? お父様、お母様」

 ええそうよ、これが私の出した結論。
 姉の物を奪う妹なんて最初からいなかった。
 この世にいない者をどうやって助けるというのだろう。
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