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「そんな……」 

 再三に渡る衝撃の事実に、とうとう豚も二の句を継ぐ気力が削がれたようだった。
 さきほどまでの優越感に包まれた顔から一転、今や絶望感に苛まれたなんとも醜悪しゅうあく相貌そうぼうを曝け出している。

 ――ああ、いい気味。
 これまでの行いに対する天罰がくだったのよ。
 とはいっても、まさかこんなに早く豚に報いが訪れることになるとは思わなかったけれど。

 鮮やかで華麗な逆転劇。
 私があらかじめ予感していた展開とはまったく異なっていたものの、なんとスッキリと気持ちの晴れるサプライズなのか。
 これを秘密裏にアルフレッドが画策して実現を可能にしたのだとするならば、彼は王子であるとともに優れた戯曲家にもなれることだろう。
 また一つ彼の魅力的な一面を知ることができて嬉しくなる。

「これで分かったことだろう。アリス、君の味方なんてどこにもいやしないことを。むしろその死を望む者しかいないのだからね。一応は公爵家で育った身、ならばせめて最後は高潔を貫いて潔く散るのが華だとは思わないかい?」

「……い、いやよ、なんであたしがこんな酷い目にあわなきゃいけないの。なにもあたし悪いことなんてしてないじゃない。みんな勝手であんまりでしょ……。納得できない。探せば、探せばいるはずなの、あたしを味方してくれる人が……あ」

 すがる相手もおらず、どうにも四方八方に視線を泳がせていた豚はふと私の方を見た。
 なにを思っているのか、考えなくても分かる。
 顔をくしゃっと歪めて逡巡しゅんじゅんし、けれども背に腹は変えられないとばかりに、やはり思った通りの行動を取った。
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