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「見ろ、どうやら参られたようだぞ」
誰かが発した言葉で、出席者の視線が大広間の中央の扉に寄せられる。
大きく開け放たれた扉の奥から姿を現したのはいまだに私の想い人であるアルフレッドだ。
純白のタキシードに身を包んだ彼は、貴婦人の熱のこもった視線を一身に浴びながらゆっくりと歩を刻んでいく。
あの時から彼とはろくに顔を合わせることすらできていなかったが、しばらくぶりに眺めたそのお姿はより一層素敵になっていて、この場にいるどの殿方よりも輝いていた。
「今宵の主役も一緒ですわよ!」
もう一度どこかの令嬢が黄色い声わ上げる。
その瞬間、私の心が怒りでドス黒く染まった。
アルフレッドの背中を追う形で登場してきた豚のせいで。
「ぶひぃー、ハイヒールって歩きにくくてホント嫌いっ! マジ足痛いわー、これって確実に明日筋肉痛コース~」
……なによあれ。
まさかあんな娼婦スレスレの格好のくせして、殿方の三歩後ろをついていく、奥ゆかしい淑女の心得を実践しているつもりだろうか。
あれではただの犬の散歩、いや豚の放し飼いに過ぎない。
だってほら、ブヒブヒと鼻息を粗くして重そうな体でのそのそ歩いていたら、人からそんな風に思われても仕方ないでしょう?
ましてブツブツと粗野な言葉遣いで聞くに耐えない愚痴ばかりこぼして、品性の欠片もないわ。
まったく、我が家のいい恥晒しよ。
ああいやだ、あんなのをエスコートしなければならないアルフレッドの胸中を想うと、胸が張り裂けてしまいそう。
そもそも本来なら私があそこにいたはず。
そうすれば豚以外は誰も恥をかくこともなくて済んだのに。
――なんて。
以前は夢に見たはずのアレの社交界デビュー、身内として祝福する場面のはずなのに素直にそうできないのは、なにも私の心が狭いからではないはずだ。
誰かが発した言葉で、出席者の視線が大広間の中央の扉に寄せられる。
大きく開け放たれた扉の奥から姿を現したのはいまだに私の想い人であるアルフレッドだ。
純白のタキシードに身を包んだ彼は、貴婦人の熱のこもった視線を一身に浴びながらゆっくりと歩を刻んでいく。
あの時から彼とはろくに顔を合わせることすらできていなかったが、しばらくぶりに眺めたそのお姿はより一層素敵になっていて、この場にいるどの殿方よりも輝いていた。
「今宵の主役も一緒ですわよ!」
もう一度どこかの令嬢が黄色い声わ上げる。
その瞬間、私の心が怒りでドス黒く染まった。
アルフレッドの背中を追う形で登場してきた豚のせいで。
「ぶひぃー、ハイヒールって歩きにくくてホント嫌いっ! マジ足痛いわー、これって確実に明日筋肉痛コース~」
……なによあれ。
まさかあんな娼婦スレスレの格好のくせして、殿方の三歩後ろをついていく、奥ゆかしい淑女の心得を実践しているつもりだろうか。
あれではただの犬の散歩、いや豚の放し飼いに過ぎない。
だってほら、ブヒブヒと鼻息を粗くして重そうな体でのそのそ歩いていたら、人からそんな風に思われても仕方ないでしょう?
ましてブツブツと粗野な言葉遣いで聞くに耐えない愚痴ばかりこぼして、品性の欠片もないわ。
まったく、我が家のいい恥晒しよ。
ああいやだ、あんなのをエスコートしなければならないアルフレッドの胸中を想うと、胸が張り裂けてしまいそう。
そもそも本来なら私があそこにいたはず。
そうすれば豚以外は誰も恥をかくこともなくて済んだのに。
――なんて。
以前は夢に見たはずのアレの社交界デビュー、身内として祝福する場面のはずなのに素直にそうできないのは、なにも私の心が狭いからではないはずだ。
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