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「やめなさいアリス、皆が見ているでしょう」

「うわ出たわねリディア!」

 ようやくこちらの存在に気がついた妹はばつが悪そうな表情を浮かべ、キッと睨んでくる。
 しかし私はそれに構わず絡まれていた女子生徒に声をかけた。

「うちの妹が迷惑をかけたようでごめんなさい。突然のことで怖かったでしょう? 話を聞く限りだと貴方はなにも悪くないから安心して。妹にはあとで私がよく言って聞かせるからどうか許して頂戴ね」

「は、はい、ではお先に失礼いたしますわ」

 ウインクを一つしてこの場を自分に任せて先に行くように促すと、女子生徒は申し訳なさそうな顔をしながらも素直に言う通りにしてくれた。

「あ、ちょっ! 話はまだ終わってないわよ!」

「だから、もうやめなさい。入学初日から問題を起こさないで」

 女子生徒を追いかけようと鼻息を荒くする妹の前に立ちはだかる。

「うるさいわね、アンタ何様のつもり。あたしのやることにいちいち口出すな、ウザいのよ!」

 姉に向かってなんて口の聞き方かしら。

 顔を真っ赤にしながら叫ぶ妹に、本当に自分と同じ公爵家の血が流れているのかと思う。

「つーかアンタも邪魔なのよ、どけっ!」

「きゃっ……!」

 ドンッとアリスに肩を押され、尻もちをつく。

「っ……、いきなり何をするの⁉」

「ふん、剣の稽古積んでるクセに鈍くさいわね。でもいい気味、少しはスッキリした。じゃあね、あたしはもういくからついてこないでよ!」

 一方的にそうまくしたてると、妹はドスドスと下品な足音を立てて去っていった。

「大丈夫なのですかリディア様、どこもお怪我はございませんこと⁉」

「ええ大事ないわ、心配してくれてありがとう」

 慌てた様子で駆け寄ってきてくれたフィーリアに対し、こんな形で妹のことを知られてしまった残念な想いと情けないところを見られてしまった気恥ずかしさで、ただ苦笑するより他なかった。
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