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「ぐっ、余を愚弄ずるがっ、おにょれロゼッタ、ごのうりゃぎりもにょめ……!」
しかし至極まっとうな正論に返す言葉もなく、せめて憎しみを込めてロゼッタを面罵するぐらいしかできなかったが、それすらまともな発音にはならなかった。
「裏切るもなにも最初からそのつもりでアンタに近づいてただけのことさね。第一最初に裏切ったのはルブランテ、アンタの方だろ?」
「よぎゃ、げぇっ、おえぇ! はぁっ、はぁっ、余ぎゃ、だりぇれをうりゃぎっだだどっ⁉ がっ、ごぼごぼっ」
と、気合いでどうにかこうにか吠えたものの、もう一度大量の血を吐いてしまう。
これでは大声を上げることは叶わないだろう。
が、やはりロゼッタは意に介さず、涼しい顔のままとある名前を告げる。
それはルブランテもよく見知った女性のもの。
「公爵令嬢カムシール、……馬鹿なアンタが自分から捨てたと思いこんでる元婚約者だよ。あたしに夢中になってあの娘を裏切ったくせに、よくもまあ言えたもんだ。だけどアンタも可哀想だね、本当はあの娘から見捨てられただけだってのに」
「にゃ、にゃに……?」
とうとう視界すら霞んできたルブランテの脳裏に、カムシールの姿が思い起こされる。
あのまま素直に謙っていればいずれ王太子妃になれたはずなのにそれを反故にした愚かな女、ではなかったのか。
「冥土の土産に教えてやるよ。こんな風に簡単なハニートラップに引っ掛けるような男がどうして今の今まで女に暗殺されかけなかったと思う? 答えは単純さ、これまではカムシールが陰ながらアンタを守っていたからだよ」
王太子暗殺のため学園に潜入し、自分との交際を餌に何人かの子息からターゲットの情報を聞き出していると、必ずといっていいほどカムシールの名前が挙がった。
曰く彼女はルブランテの婚約者かつお目付け役も担っており、その愚行を何度となく諌めてきたという。
また、王太子妃の地位を狙って彼との略奪婚を目論むいわゆる相談女はたくさんいたようだが、これもカムシールがそれとなく裏で阻止していたとも。
けれどもカムシールもほとほと嫌気が差したのだろう、ことロゼッタの時に限って接触どころかそもそも実際に無視されていた。
もちろんそれ自体イジメ行為ではなかったが、相談女を装うべく利用させてもらった。
「そんなカムシールがアンタを見捨てるきっかけになったのは、そう、例の婚約破棄の一件だね。本人も言ってただろ? 暗愚から解放されたお礼ってさ。だから婚約破棄の原因となったあたしの正体と目的に気づいていたのに、あえて見逃してくれたってわけ」
おかげでこうやって対象に警戒されることなく懐に潜り込めた、と続ける。
しかし至極まっとうな正論に返す言葉もなく、せめて憎しみを込めてロゼッタを面罵するぐらいしかできなかったが、それすらまともな発音にはならなかった。
「裏切るもなにも最初からそのつもりでアンタに近づいてただけのことさね。第一最初に裏切ったのはルブランテ、アンタの方だろ?」
「よぎゃ、げぇっ、おえぇ! はぁっ、はぁっ、余ぎゃ、だりぇれをうりゃぎっだだどっ⁉ がっ、ごぼごぼっ」
と、気合いでどうにかこうにか吠えたものの、もう一度大量の血を吐いてしまう。
これでは大声を上げることは叶わないだろう。
が、やはりロゼッタは意に介さず、涼しい顔のままとある名前を告げる。
それはルブランテもよく見知った女性のもの。
「公爵令嬢カムシール、……馬鹿なアンタが自分から捨てたと思いこんでる元婚約者だよ。あたしに夢中になってあの娘を裏切ったくせに、よくもまあ言えたもんだ。だけどアンタも可哀想だね、本当はあの娘から見捨てられただけだってのに」
「にゃ、にゃに……?」
とうとう視界すら霞んできたルブランテの脳裏に、カムシールの姿が思い起こされる。
あのまま素直に謙っていればいずれ王太子妃になれたはずなのにそれを反故にした愚かな女、ではなかったのか。
「冥土の土産に教えてやるよ。こんな風に簡単なハニートラップに引っ掛けるような男がどうして今の今まで女に暗殺されかけなかったと思う? 答えは単純さ、これまではカムシールが陰ながらアンタを守っていたからだよ」
王太子暗殺のため学園に潜入し、自分との交際を餌に何人かの子息からターゲットの情報を聞き出していると、必ずといっていいほどカムシールの名前が挙がった。
曰く彼女はルブランテの婚約者かつお目付け役も担っており、その愚行を何度となく諌めてきたという。
また、王太子妃の地位を狙って彼との略奪婚を目論むいわゆる相談女はたくさんいたようだが、これもカムシールがそれとなく裏で阻止していたとも。
けれどもカムシールもほとほと嫌気が差したのだろう、ことロゼッタの時に限って接触どころかそもそも実際に無視されていた。
もちろんそれ自体イジメ行為ではなかったが、相談女を装うべく利用させてもらった。
「そんなカムシールがアンタを見捨てるきっかけになったのは、そう、例の婚約破棄の一件だね。本人も言ってただろ? 暗愚から解放されたお礼ってさ。だから婚約破棄の原因となったあたしの正体と目的に気づいていたのに、あえて見逃してくれたってわけ」
おかげでこうやって対象に警戒されることなく懐に潜り込めた、と続ける。
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