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「――っ、開き直りおって、貴様が自省する気も自らの非を認めるつもりもないことは分かった。ならば今この時をもってカムシール、貴様と今後一切の縁を切る! くだらぬ反抗心を捨てられずに将来の王太子妃になれなかったことを後で後悔するといい!」

 しばらく呆気にとられていたルブランテだが、慌てていつもの傲慢な態度を取り繕うとそう言い放つ。

 あくまで自身を正当化して精神的優位に立とうとしているが、そもそも王太子妃の座には未練がないし、なりたいとすら思ってはいなかったので脅し文句にすらなり得ない。

 だから別に反論する必要はないのだが、最後にどうしてもこれだけは伝えておきたい。

「そのご心配には及びません殿下。私は大変しておりますので、どうぞ小生意気な公爵令嬢を捨ててやったと喧伝なさって結構ですよ」
「ふ、ふん、負け惜しみを……」
「ええ、そう捉えてもらっても構いません」

 後悔が一つあるとすれば、もっと早くこの結末を迎えたかったということだろうか。

 まあいい、これまで自分から切り出したくても切り出せなかった婚約破棄についての話を向こうからわざわざ振ってきてくれたのだから、それで良しとしようと思う私であった。

「もうよろしいでしょうルブランテ様、わたくし喉が渇いてしまいましたわ。どうでしょう、この後お茶にいたしませんか?」

 いつの間にか面を上げていたロゼッタは、それまで纏っていた従順な小動物の雰囲気から獰猛な猛禽類のものへと変えていた。

 やはり先程のいじらしい姿の彼女は演技だったらしく、当初の目的も済ませたからさっさと素に戻ったというわけなのだろう。

 他人の機微に疎いルブランテはまるで気づいていないようだけれど、そうでなくてもこの些細な変化に気づける者は同性くらいなものかしら。
 まったく、大した演技力だわ。

「おおそうだな、愚かしい女にいつまでも構っているのは時間の無駄だな。茶か、であれば静かに嗜みたいものだな。王城内にある余専用の茶室に招待しよう」
「まあ、それは楽しみにしておりますわ」
「ようやっと婚約破棄《けじめ》をつけたのだ、これからは大手を振ってロゼッタと交際できよう」

 私によるイジメが真実であるなら確かに正当な理由にはなるけれど、それを裏付ける証拠もなく一方的に婚約破棄を告げただけなのによくもまあそんなしたり顔ができるものね。
 噛み付いてくるのが分かっているからもちろん口にはしないけど。
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