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「用便願うぞ!」

 メリーヌタが来てから地獄の日々が始まった。
 逐一行動を監視され、用を足しトイレに行く時ですらいちいちこうやって報告しなければならない。

 それもそのはず、俺は貞操帯の着用を義務付けられており、その鍵を持っているあいつに外してもらわなければ満足に我が息子に触れることすら叶わないのだから。

 しかも、当初あいつは女との性的行為を禁ずると言っていたが、どういうわけかそれに加えて今まで関係をもった女のところに同伴させられて、なんと相手に謝罪することまで求められたのだ。

 なんて屈辱、俺はこの国の王子だぞ! つまり誰よりも偉い俺が貴族とはいえなんで女に謝罪をしないといけないんだ!

 ……とは思うものの、あいつには逆らえない。
少なくとも今だけは。

 性教育の期間は一週間とあいつは言っていた。だから一週間が過ぎたら復讐してやる。前は不意を突かれたが、今度は違う。

 それまでは従順なフリをしてメリーヌタの油断を誘い、向こうが貞操帯を解いたら最後、あいつを犯して犯して犯し抜いてやるのだ。

 ああ、その時のことを想像すると勃起が止まら――ぐああ、股間が痛いっ!

 息子の平常時のサイズに合わせて少しだけ余裕がある程度だから、ちょっとでもアソコが大きくなってしまうと途端にキツく貞操帯の金具に締め付けられるのだ。
 
 こういう時はアレだ、別のことを考えて意識をそらさなければ。

 ……そういえば最近、ナターシャの姿を見かけないな。別にいずれ捨てる予定だったとはいえ、会えないなら会えないでそれなりに寂しいものだ。

 それに元婚約者のイーリス。あいつは今頃どうしているだろうか。
 まるで会いにくる気配がないが、まさかこの俺を裏切って他の男と浮気でもしているんじゃないだろうな。

 それは許さんぞ、お前の初体験は俺が予約済みなんだからな――ってぎゃあああまた締まる!
 しばらくその場で悶絶した。

「……ぐうう、クソが! どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって、もし種無しになっちまったらどう責任を取るんだ!」

 股間を撫でさすりながら、固く決意を固める。
 もうしばらくの辛抱だ、そうしたら俺は自由になれるのだから。

 ◆

「バルドル王子の素行にいまだ改善が見られないようですから性教育の期間を延長いたしますね。今度は一ヶ月にしましょう」

 は?
 今こいつはなんて言った?
 期間の延長? つまり、じゃなくてこのムラムラに耐えなきゃいけないのか。

「や、約束が違うぞ! 禁欲期間は一週間だってお前が言ったんだぞ、だから俺も死ぬ思いで性欲を我慢して――」

「はて、バイドル王子となにか約束をした覚えはございませんが? 確かに私から一方的に期日のお告げはいたしましたが。しかし再三お伝えしたように、今回のことはすべて私に一任されておりますので、性教育の終了はこちらの気分次第でもあるのですよ」

 こ、こいつ、俺以上の鬼畜か……?
 そりゃ現在の俺も皮を被っているが、こいつはメイドの皮を被った悪魔なんじゃないのか?

 ちくしょう、いやはなんでこんな女の暴虐を許しているんだ! 
 このままだと俺がドSメイドによって冥土送りにされちまうんだぞ、分かっているのか⁉

 あっでも、ドSメイドって響きはなんかエロくて新しい世界が開け――ぐぎゃあぁあああっ先が、先っぽが折れ曲がるうぅうぅぅ!

「いきなりゴロゴロと床の上で転がりまわるのはおやめください。まあ、おおかた不埒なことでも妄想なされたのでしょうが。やはり性教育の期間を延長して正解ですね」

 そんな死刑宣告に絶望し、苦しみに喘いでいた俺は目の前が真っ暗になった。
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