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聖女のお仕事は激務ですが、追放されたので後は知りません〜真の聖女様の今後益々のご活躍をお祈り申し上げます〜
本編
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「偽物聖女ケアミスレスよ、お前は本日限りで追放する!」
「こっちは夜勤明けだってのにいきなりなんですか殿下、私が偽物の聖女ってなんのことですか?」
「はっ、とぼけても無駄だ! ここにいるイネルバこそが真の聖女だったのだ!」
日々の聖務(聖女としてこの労働環境クソ最悪な国を護る祈りを捧げること)で疲れて眠いってのにその眠気を我慢してまでアホス、違ったアポス王子のところにきたらこれよ。
つーかマジなんなのコイツ、王子じゃなかったら一回はっ倒してるわ。
しかもなんか隣にはプラチナブロンドの美人女性を侍らせてるし。まあ私ほどじゃないけど!
……で、なに、これはひょっとしてもう私はお役ごめんって話ですか?
もしそうなら小躍りしつつ二つ返事で受け入れるけど(寝不足でテンションがおかしくなってるのは自覚してる)、とりあえず勘違いだと困るから、話だけでも聞かないと!
「お前が聖女の名を騙り、この国の財産で日々贅沢な暮らしをしてことはとっくに知っている!」
はあ⁉ なにそれ! 私贅沢とかしたことないんですけど!
むしろ必要経費も降りないせいで自腹切って仕事道具をなんとか用意したり、食費を切り詰めて質素な生活送ってたんですがねぇ!
現に今私が着てるこの法衣だって暇を見つけてはコツコツと刺繍して作ったオリジナルなんだけど、そこんところ分かってるのこのボンクラは?
「だが残念だったな、ここにいるイネルバがお前の悪事を見抜き、真の聖女としてその代わりを務めることを申し出た! おおイネルバよ、お前はなんと正義感に満ちあふれた淑女なのだ!」
「そんな……わたくしはただこの国を護りたいだけですわ」
そういってイネルバとかいう女はアポス王子の腕を取って、そのでっかいおっぱいに押し当てた。
あーはいはい、そうやって誘惑したわけね。聖女じゃなくて性女乙。
そしてアポス王子も国を駄目にするタイプのバカ息子だから、そりゃ巨乳美人に騙されますわ。
「本当はお前を投獄して見せしめに公開処刑をしているところだが、慈悲深いイネルバの計らいで特別に国外追放で済ませることにした。当然俺との婚約も破棄! ふはは、残念だったな卑しい売国奴め、お前の野望もここで終わりだ!」
「はあそうですか、それは喜ばしい限りで」
しまったつい本音が。
「「はぁっ⁉」」
いや、なんでイネルバまで驚いてるのよ。
最初からこの政略結婚に乗り気じゃなかったし、むしろそっちから結婚破棄されて最高なんですが。
「ははあ、さては話が分かっていないな? 俺から結婚破棄されたということはこの俺と結婚できないということだぞ? そんなの嫌だろ?」
「いいえー? 前々から殿下には私よりもっと他にふさわしい女性がいると思っていましたよ。それが真の聖女であるイネルバ様ならお祝いするしかないでしょう。この度はおめでたい頭、……じゃなくておめでとうございます殿下」
二人が結婚して子供が産まれたら、バカと巨乳のかけ合わせとかですんごい男たらしの天然ぶりっ子になったりしていいんじゃない?
「ふ、ふん、負け惜しみを。まあいい、それなら話が早い。荷物をまとめてすぐにこの国から出ていけケアミスレスよ」
「その前に、一つだけいいですか? イネルバ様にこの仕事を任せても本当に大丈夫なんですね?」
「ふっ、何を言い出すかと思えばそんなことか! ――当然だ、なにせ真の聖女だからな。偽物の聖女のお前よりはるかに優れた祈りをもって魔物どもの進行をとめてくれよう」
「そうですか、それを聞いて安心しました」
いつも私は1割程度の力で祈りを捧げていた。
それぐらいでも魔物の進行を防ぐには十分すぎるほどだったから。
というか手を抜かなかったらもっと疲れるしお腹もすくしお寿司食べたいし。
聖務のお給金もさほどもらえなかったから、少しでも体力を残してジェネリック医薬品制作の副業で稼いでおきたかった。
おかげでいきなり国を出ていけと言われても隣国に行くまでのお金はすぐ用意できた。
そんなわけで今までの適当な仕事ですらなんとかなっていたんだし、私より能力が優れてるというのならこの国も大丈夫だろう。
まあそうでなくても? もう私には関係ないんだけどね、出ていくんだし。
「今日までお世話になりました二人ともお元気で。もう会うこともありませんが」
最後の挨拶を終えるとスキップをしながらこの国を出た。
さーてとりあえずは宿でゆっくり寝よう、だってもう私は自由なんだから!
~ワンオペ王国Side~
「大変ですアポス殿下! 城下町に魔物が侵入したとのことです、至急聖女の祈りを!」
「聞いたかイネルバ⁉ 早く祈りを捧げてくれ! このままでは我が城にまで魔物が攻めてくる!」
「もうやっておりますわ! でも忙しすぎて一人では手が回りませんの! それから寝不足過ぎて集中できないのでお静かに!」
「言い訳をするな! 体調管理も仕事のうちだろ、給料泥棒と呼ばれたくなければさっさと祈れ!」
「福利厚生がしっかりしてると聞いたからわざわざ聖女になったのになんですのこの仕事! 1日の拘束時間もあり得ませんし、とんだブラックですわ!」
「やはりこうなってしまった、聖女一人で行う防衛体制ではいずれこうなると我々臣下は前から殿下に進言していたのに! 偽物でもせめてもう一人聖女がいればこんなことには……」
「ああっもうだめですわ、寝落ちします!」
「うわー、城の門が魔物に破られたぞー!」
「ももも、もう駄目だ、おい誰かケアミスレス! ケアミスレスを呼べー!」
「アポス殿下お気は確かか⁉ あなたが彼女をこの国から追放したのですぞ!」
「おーい助けてくれケアミスレス、俺が悪かったーっ! まだ死にたくないーっ!」
「ガルルルル、オウジハッケン! オレタチオマエクイコロス‼ ソノタゼンイン、ミナゴロシ!」
「「ぎゃああぁぁあああぁっ!!!」」
~ケアミスレスSide~
ある日ワンオペ王国滅亡の話を聞いて驚いた。
「まさか、真の聖女様が過労死ラインに到達する前に国ごと潰れちゃうとはねぇ……」
ちなみに私の方はあれから訪れた隣国でさっそく見つけた聖女の求人募集に採用され、早くも数日が経過していた。
でも、
「なにを一人でブツブツとつぶやいている偽の聖女ケアミスレスよ、こちらが真の聖女である――」
やれやれ、せっかく良い条件の求人だったのに。
今度の仕事もまたすぐにクビになりそう……。
(了)
「こっちは夜勤明けだってのにいきなりなんですか殿下、私が偽物の聖女ってなんのことですか?」
「はっ、とぼけても無駄だ! ここにいるイネルバこそが真の聖女だったのだ!」
日々の聖務(聖女としてこの労働環境クソ最悪な国を護る祈りを捧げること)で疲れて眠いってのにその眠気を我慢してまでアホス、違ったアポス王子のところにきたらこれよ。
つーかマジなんなのコイツ、王子じゃなかったら一回はっ倒してるわ。
しかもなんか隣にはプラチナブロンドの美人女性を侍らせてるし。まあ私ほどじゃないけど!
……で、なに、これはひょっとしてもう私はお役ごめんって話ですか?
もしそうなら小躍りしつつ二つ返事で受け入れるけど(寝不足でテンションがおかしくなってるのは自覚してる)、とりあえず勘違いだと困るから、話だけでも聞かないと!
「お前が聖女の名を騙り、この国の財産で日々贅沢な暮らしをしてことはとっくに知っている!」
はあ⁉ なにそれ! 私贅沢とかしたことないんですけど!
むしろ必要経費も降りないせいで自腹切って仕事道具をなんとか用意したり、食費を切り詰めて質素な生活送ってたんですがねぇ!
現に今私が着てるこの法衣だって暇を見つけてはコツコツと刺繍して作ったオリジナルなんだけど、そこんところ分かってるのこのボンクラは?
「だが残念だったな、ここにいるイネルバがお前の悪事を見抜き、真の聖女としてその代わりを務めることを申し出た! おおイネルバよ、お前はなんと正義感に満ちあふれた淑女なのだ!」
「そんな……わたくしはただこの国を護りたいだけですわ」
そういってイネルバとかいう女はアポス王子の腕を取って、そのでっかいおっぱいに押し当てた。
あーはいはい、そうやって誘惑したわけね。聖女じゃなくて性女乙。
そしてアポス王子も国を駄目にするタイプのバカ息子だから、そりゃ巨乳美人に騙されますわ。
「本当はお前を投獄して見せしめに公開処刑をしているところだが、慈悲深いイネルバの計らいで特別に国外追放で済ませることにした。当然俺との婚約も破棄! ふはは、残念だったな卑しい売国奴め、お前の野望もここで終わりだ!」
「はあそうですか、それは喜ばしい限りで」
しまったつい本音が。
「「はぁっ⁉」」
いや、なんでイネルバまで驚いてるのよ。
最初からこの政略結婚に乗り気じゃなかったし、むしろそっちから結婚破棄されて最高なんですが。
「ははあ、さては話が分かっていないな? 俺から結婚破棄されたということはこの俺と結婚できないということだぞ? そんなの嫌だろ?」
「いいえー? 前々から殿下には私よりもっと他にふさわしい女性がいると思っていましたよ。それが真の聖女であるイネルバ様ならお祝いするしかないでしょう。この度はおめでたい頭、……じゃなくておめでとうございます殿下」
二人が結婚して子供が産まれたら、バカと巨乳のかけ合わせとかですんごい男たらしの天然ぶりっ子になったりしていいんじゃない?
「ふ、ふん、負け惜しみを。まあいい、それなら話が早い。荷物をまとめてすぐにこの国から出ていけケアミスレスよ」
「その前に、一つだけいいですか? イネルバ様にこの仕事を任せても本当に大丈夫なんですね?」
「ふっ、何を言い出すかと思えばそんなことか! ――当然だ、なにせ真の聖女だからな。偽物の聖女のお前よりはるかに優れた祈りをもって魔物どもの進行をとめてくれよう」
「そうですか、それを聞いて安心しました」
いつも私は1割程度の力で祈りを捧げていた。
それぐらいでも魔物の進行を防ぐには十分すぎるほどだったから。
というか手を抜かなかったらもっと疲れるしお腹もすくしお寿司食べたいし。
聖務のお給金もさほどもらえなかったから、少しでも体力を残してジェネリック医薬品制作の副業で稼いでおきたかった。
おかげでいきなり国を出ていけと言われても隣国に行くまでのお金はすぐ用意できた。
そんなわけで今までの適当な仕事ですらなんとかなっていたんだし、私より能力が優れてるというのならこの国も大丈夫だろう。
まあそうでなくても? もう私には関係ないんだけどね、出ていくんだし。
「今日までお世話になりました二人ともお元気で。もう会うこともありませんが」
最後の挨拶を終えるとスキップをしながらこの国を出た。
さーてとりあえずは宿でゆっくり寝よう、だってもう私は自由なんだから!
~ワンオペ王国Side~
「大変ですアポス殿下! 城下町に魔物が侵入したとのことです、至急聖女の祈りを!」
「聞いたかイネルバ⁉ 早く祈りを捧げてくれ! このままでは我が城にまで魔物が攻めてくる!」
「もうやっておりますわ! でも忙しすぎて一人では手が回りませんの! それから寝不足過ぎて集中できないのでお静かに!」
「言い訳をするな! 体調管理も仕事のうちだろ、給料泥棒と呼ばれたくなければさっさと祈れ!」
「福利厚生がしっかりしてると聞いたからわざわざ聖女になったのになんですのこの仕事! 1日の拘束時間もあり得ませんし、とんだブラックですわ!」
「やはりこうなってしまった、聖女一人で行う防衛体制ではいずれこうなると我々臣下は前から殿下に進言していたのに! 偽物でもせめてもう一人聖女がいればこんなことには……」
「ああっもうだめですわ、寝落ちします!」
「うわー、城の門が魔物に破られたぞー!」
「ももも、もう駄目だ、おい誰かケアミスレス! ケアミスレスを呼べー!」
「アポス殿下お気は確かか⁉ あなたが彼女をこの国から追放したのですぞ!」
「おーい助けてくれケアミスレス、俺が悪かったーっ! まだ死にたくないーっ!」
「ガルルルル、オウジハッケン! オレタチオマエクイコロス‼ ソノタゼンイン、ミナゴロシ!」
「「ぎゃああぁぁあああぁっ!!!」」
~ケアミスレスSide~
ある日ワンオペ王国滅亡の話を聞いて驚いた。
「まさか、真の聖女様が過労死ラインに到達する前に国ごと潰れちゃうとはねぇ……」
ちなみに私の方はあれから訪れた隣国でさっそく見つけた聖女の求人募集に採用され、早くも数日が経過していた。
でも、
「なにを一人でブツブツとつぶやいている偽の聖女ケアミスレスよ、こちらが真の聖女である――」
やれやれ、せっかく良い条件の求人だったのに。
今度の仕事もまたすぐにクビになりそう……。
(了)
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