8 / 9
8
しおりを挟む
その日の練習後、普段なら自主練習をするのだが、珍しく鳶と二人で連れ立って寮への廊下を歩いていた。
「練習の後、部屋に遊びに行って良いかな?」
「狭いですよ?」
「友達に寮生の子いるから知ってる。気にならないよ~」
「それなら良いですけど」
こんなやりとりがあり、当たり前のように隣を歩く鳶に刈安は翻弄されるばかりだ。
鳶はというと、誰が見ても分かる浮かれっぷりで、同級生が惚気にうんざりするほどだったのだ。
室内に入ると、刈安らしい質素でシンプルな室を、鳶はほんの少し切ない思いで見回した。
(こんなに我慢をして暮らしてきたのか。いや、本人は我慢している自覚はなさそうだけど……)
「あの、余計なものを置かないので何にもなくて。熱いお茶なら出せます。冷たい方がよかったですか?」
「ううん。熱いのが良いな」
「よかった。椅子は一つしかないので、こっちに座ってください」
刈安はそう言って、勉強机とセットの椅子を勧めた。寮は家具も作りつけのもので、ベットに持ち込みの布団をセットしただけで暮らせるようになっている。
本棚には教科書以外に、柔道の本、トレーニングの本、栄養学の本が並ぶ。その一部は図書館のシールが付いている。
「うん、ありがとう。でも、隣に座りたいから僕もベッドに座って良い?」
緑茶を出してきた刈安にそういうと、ほんの少し頬を染めて頷いてくれた。
お茶もペットボトルなら簡単だが、節約のために茶葉にしているらしい。恥じらう刈安の表情に、鳶の心臓は少しずつ早くなっていく。
お茶を飲みながら栄養学や料理の本のついて聞くと、幼い頃から自炊をしているからだという。
(——僕のお嫁さんにぴったりじゃないか)
飲み終えたお茶を机に置いて、隣に座る刈安の手を握った。するとビクンと体が震えてかわいい、と鳶は愛しさでいっぱいになる。
それに、刈安は真っ赤になりながらも手を振り払ったりしない。
(嫌がってない、よね?)
「刈安、僕がずっと君を見ていたことは話しただろう?土曜日にうちに来てくれたとき、本当は帰したくなかったんだ」
「でも、外泊届けを出してなかったし……」
「うん、それでも、そう思ったんだ。なぜか分かる?」
じっと見つめてくる鳶の瞳に射抜かれた刈安は、微動だにできずにその瞳を見つめていた。
——なぜか。刈安は答えを聞くのが少し怖かった。でも、あのときの先輩は俺に触れたがっていた……
「わかり、ません」
少し卑怯な答えだと分かっている。自分で言葉にするのが怖い。鳶の本心を聞きたい。ただ、その一心だった。
そんな刈安の心を見透かすように、鳶はうっすらと笑った。
「本当は分かってるんじゃない? 僕はあの時言ったよね? 僕の物にするって」
「本気で俺を抱く気なんですね?」
「あれ? 本気だって通じてなかったかな? それなら、分らせてあげなくちゃ」
鳶はそう言って刈安を引き寄せてキスをした。
「んっ! ふっ……と、び、せんぱ……」
「鼻で息をするんだよ? さ、もう一回。いっぱい練習しないとね」
「れ、んむっ、んう……は、はぁ……」
隙をつきキスをされて驚いたが、あと日と同様に嫌ではなかった。むしろ、もっと……
(どうしよう! 俺、勃っちゃった!)
「んあっ! せっ、先輩! ダメッ!」
「なにがダメ? かわいい。僕のキスで気持ちよくなった? 擦ってあげるね? 自分でもスる事ある?」
「あっ!? あっ、ダメ! ダ、あっ!」
ズボンの上からすりすりと撫でられ、初めて他人に触れられた刺激に敏感に反応してしまう。
「ここ、パツパツで苦しいよね?」
「ふあっ?!」
ファスナーを下げられ、勢いよく飛び出してきた雄を鳶は優しく握った。
「刈安のここ、キレイだね。弄って欲しくて濡れてるよ?」
「あっ、あ……そんなところ、触っちゃダメ、です……」
言葉では拒否をしているものの、先走りを塗り込めながらゆるゆると上下に擦られて、快感にたまらず吐息が漏れる。
(かわいい。僕の刈安。僕の番だ——バースなんか関係ない。僕がずっと求めていた番なんだ。)
「練習の後、部屋に遊びに行って良いかな?」
「狭いですよ?」
「友達に寮生の子いるから知ってる。気にならないよ~」
「それなら良いですけど」
こんなやりとりがあり、当たり前のように隣を歩く鳶に刈安は翻弄されるばかりだ。
鳶はというと、誰が見ても分かる浮かれっぷりで、同級生が惚気にうんざりするほどだったのだ。
室内に入ると、刈安らしい質素でシンプルな室を、鳶はほんの少し切ない思いで見回した。
(こんなに我慢をして暮らしてきたのか。いや、本人は我慢している自覚はなさそうだけど……)
「あの、余計なものを置かないので何にもなくて。熱いお茶なら出せます。冷たい方がよかったですか?」
「ううん。熱いのが良いな」
「よかった。椅子は一つしかないので、こっちに座ってください」
刈安はそう言って、勉強机とセットの椅子を勧めた。寮は家具も作りつけのもので、ベットに持ち込みの布団をセットしただけで暮らせるようになっている。
本棚には教科書以外に、柔道の本、トレーニングの本、栄養学の本が並ぶ。その一部は図書館のシールが付いている。
「うん、ありがとう。でも、隣に座りたいから僕もベッドに座って良い?」
緑茶を出してきた刈安にそういうと、ほんの少し頬を染めて頷いてくれた。
お茶もペットボトルなら簡単だが、節約のために茶葉にしているらしい。恥じらう刈安の表情に、鳶の心臓は少しずつ早くなっていく。
お茶を飲みながら栄養学や料理の本のついて聞くと、幼い頃から自炊をしているからだという。
(——僕のお嫁さんにぴったりじゃないか)
飲み終えたお茶を机に置いて、隣に座る刈安の手を握った。するとビクンと体が震えてかわいい、と鳶は愛しさでいっぱいになる。
それに、刈安は真っ赤になりながらも手を振り払ったりしない。
(嫌がってない、よね?)
「刈安、僕がずっと君を見ていたことは話しただろう?土曜日にうちに来てくれたとき、本当は帰したくなかったんだ」
「でも、外泊届けを出してなかったし……」
「うん、それでも、そう思ったんだ。なぜか分かる?」
じっと見つめてくる鳶の瞳に射抜かれた刈安は、微動だにできずにその瞳を見つめていた。
——なぜか。刈安は答えを聞くのが少し怖かった。でも、あのときの先輩は俺に触れたがっていた……
「わかり、ません」
少し卑怯な答えだと分かっている。自分で言葉にするのが怖い。鳶の本心を聞きたい。ただ、その一心だった。
そんな刈安の心を見透かすように、鳶はうっすらと笑った。
「本当は分かってるんじゃない? 僕はあの時言ったよね? 僕の物にするって」
「本気で俺を抱く気なんですね?」
「あれ? 本気だって通じてなかったかな? それなら、分らせてあげなくちゃ」
鳶はそう言って刈安を引き寄せてキスをした。
「んっ! ふっ……と、び、せんぱ……」
「鼻で息をするんだよ? さ、もう一回。いっぱい練習しないとね」
「れ、んむっ、んう……は、はぁ……」
隙をつきキスをされて驚いたが、あと日と同様に嫌ではなかった。むしろ、もっと……
(どうしよう! 俺、勃っちゃった!)
「んあっ! せっ、先輩! ダメッ!」
「なにがダメ? かわいい。僕のキスで気持ちよくなった? 擦ってあげるね? 自分でもスる事ある?」
「あっ!? あっ、ダメ! ダ、あっ!」
ズボンの上からすりすりと撫でられ、初めて他人に触れられた刺激に敏感に反応してしまう。
「ここ、パツパツで苦しいよね?」
「ふあっ?!」
ファスナーを下げられ、勢いよく飛び出してきた雄を鳶は優しく握った。
「刈安のここ、キレイだね。弄って欲しくて濡れてるよ?」
「あっ、あ……そんなところ、触っちゃダメ、です……」
言葉では拒否をしているものの、先走りを塗り込めながらゆるゆると上下に擦られて、快感にたまらず吐息が漏れる。
(かわいい。僕の刈安。僕の番だ——バースなんか関係ない。僕がずっと求めていた番なんだ。)
0
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子
葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。
幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。
一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。
やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。
※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。
恋のキューピットは歪な愛に招かれる
春於
BL
〈あらすじ〉
ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。
それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。
そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。
〈キャラクター設定〉
美坂(松雪) 秀斗
・ベータ
・30歳
・会社員(総合商社勤務)
・物静かで穏やか
・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる
・自分に自信がなく、消極的
・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子
・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている
養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった
・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能
二見 蒼
・アルファ
・30歳
・御曹司(二見不動産)
・明るくて面倒見が良い
・一途
・独占欲が強い
・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく
・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる
・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った
二見(筒井) 日向
・オメガ
・28歳
・フリーランスのSE(今は育児休業中)
・人懐っこくて甘え上手
・猪突猛進なところがある
・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい
・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた
・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている
・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた
※他サイトにも掲載しています
ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です
王と正妃~アルファの夫に恋がしてみたいと言われたので、初恋をやり直してみることにした~
仁茂田もに
BL
「恋がしてみたいんだが」
アルファの夫から突然そう告げられたオメガのアレクシスはただひたすら困惑していた。
政略結婚して三十年近く――夫夫として関係を持って二十年以上が経つ。
その間、自分たちは国王と正妃として正しく義務を果たしてきた。
しかし、そこに必要以上の感情は含まれなかったはずだ。
何も期待せず、ただ妃としての役割を全うしようと思っていたアレクシスだったが、国王エドワードはその発言以来急激に距離を詰めてきて――。
一度、決定的にすれ違ってしまったふたりが二十年以上経って初恋をやり直そうとする話です。
昔若気の至りでやらかした王様×王様の昔のやらかしを別に怒ってない正妃(男)
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
βの僕、激強αのせいでΩにされた話
ずー子
BL
オメガバース。BL。主人公君はβ→Ω。
αに言い寄られるがβなので相手にせず、Ωの優等生に片想いをしている。それがαにバレて色々あってΩになっちゃう話です。
β(Ω)視点→α視点。アレな感じですが、ちゃんとラブラブエッチです。
他の小説サイトにも登録してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる