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月曜日。いつものように朝練が始まり、武道館に柔道部や空手部の掛け声が飛び交う。
「刈安、おはよう。久しぶりな気がする」
「お、おはよう、ございます!土曜日に会ったじゃないですか……」
「日曜日は会えなかった。毎日でも会いたいよ」
そんな言葉を平気で言える鳶に、刈安は真っ赤になってしまう。
「あれ、鳶君!その子と話せる様になったんだ?というか、三原達、謹慎だって?」
鳶と同じ二年の鈴原が声をかけて来た。
「ふふっ、やっとね。あの子達は悪い子だったから報告したんだ」
「ああ、変だと思ったらそういう事か。——まぁ、良かったな。刈安君は大変だろうけど」
「俺が、大変……ですか?」
「こぉら、鈴~!無駄話は終わり!練習するよ!」
さっさと同級生を追い払った鳶は、刈安と二人並んでストレッチやかかり稽古をしたりとべったりで、周囲の視線を集めた。朝練が終わると、鳶は名残惜しそうにしながら、昼食を一緒にする約束して『早くお昼が来ないかな』と言って教室へ向かった。
練習が終わった後、刈安も教室へ向かう途中で二人の生徒が刈安に近寄って来た。それは同学年でαの松木健二とβの高瀬悠斗だった。
「刈安君。あの、今までごめんね? 僕、三原君達が怖くて……」
高瀬がおずおずとした様子で謝罪をして来た。
「俺もαだけど、あっちの方が格上だから逆らえなくて悪かった」
同じく申し訳ないと言う様子で松木が言う。
「いや、別に良いよ」
いじめというのはそういうもの。強者が弱者を力尽くで言いなりにさせる。そして、逆らえば自分がターゲットにされる。大抵は逆らうのが怖いのだ。
「あのさ、僕も刈安君って呼んで良いかな?僕の事は悠斗って呼んで?」
「俺は健二だ。改めてよろしくな?」
「俺のことも呼び捨てでいいよ」
二人も幼稚部からの生徒で、階級は違うが刈安が鳶と良い勝負をしたのを知っていた。問題の人物が謎の謹慎を受けた事で、ようやく部内の友人が出来た。
「ところで、鳶先輩の君への熱視線がますます熱いんだけど、何かあった?」
悠斗はじっと刈安を見つめる。
「えっ!? な、何かって?!」
「先輩は前から刈安の練習をじっくり見てたけど、今日はぴったり並んで練習していたよな~。あれを見る限り、やっぱり三原が邪魔してたんだな」
「えっと、多分だけど……練習後に俺に色々言ってたんだけどさ。そのすぐ後に鳶先輩がいたから、聞いてたんじゃないかな」
そう。普段なら着替えが終わるまで待って、さらに嫌がらせで畳みかけて来ていたのにいなかったのだ。
「ああ、うち、いじめに厳しいからな。退部じゃないだけマシかも」
「そうなんだ?」
「うん。鳶先輩や怖い先輩にバレないようにしながら、僕達にも牽制して来てたし。二度目はないから自主的に退部する可能性もあるね」
「そうしたら、あいつらは柔道は辞めるのかな?」
彼らは嫌いだが、練習は真面目に来ていたことを思い出す。
「続けられないよ。うちで途中で退部したなんて、『何かしました』って言っているようなもんだよぉ~」
「——辞めなくても、良いと思う」
「本当か? 刈安、優しすぎないか?」
「優しさじゃない。辞めたくないのに辞めなきゃいけない気持ちは、誰よりも知ってるからだよ」
「「……」」
二人は、刈安の事情は知らないものの、特待生で学費免除=家庭に事情がある、だと知っている。だからそれ以上聞くのは止めた。
クラスは三人とも違うため途中で別れ、昼の休憩まで真面目に授業に勤しむ刈安だったが、クラスの友人達は雰囲気が明るくなったと皆が不思議がり、赤くなった刈安を恋人でもできたのかと囃し立てた。鳶と一歩進んだ事が、刈安を覆っていた陰を取り払ったらしい。
(早くお昼にならないかな。鳶先輩に会いたい)
そう思う度に我知らず微笑んでいて、それを見た一部のクラスメイトの視線を集めていた事には全く気がつかない刈安だった。
「刈安、おはよう。久しぶりな気がする」
「お、おはよう、ございます!土曜日に会ったじゃないですか……」
「日曜日は会えなかった。毎日でも会いたいよ」
そんな言葉を平気で言える鳶に、刈安は真っ赤になってしまう。
「あれ、鳶君!その子と話せる様になったんだ?というか、三原達、謹慎だって?」
鳶と同じ二年の鈴原が声をかけて来た。
「ふふっ、やっとね。あの子達は悪い子だったから報告したんだ」
「ああ、変だと思ったらそういう事か。——まぁ、良かったな。刈安君は大変だろうけど」
「俺が、大変……ですか?」
「こぉら、鈴~!無駄話は終わり!練習するよ!」
さっさと同級生を追い払った鳶は、刈安と二人並んでストレッチやかかり稽古をしたりとべったりで、周囲の視線を集めた。朝練が終わると、鳶は名残惜しそうにしながら、昼食を一緒にする約束して『早くお昼が来ないかな』と言って教室へ向かった。
練習が終わった後、刈安も教室へ向かう途中で二人の生徒が刈安に近寄って来た。それは同学年でαの松木健二とβの高瀬悠斗だった。
「刈安君。あの、今までごめんね? 僕、三原君達が怖くて……」
高瀬がおずおずとした様子で謝罪をして来た。
「俺もαだけど、あっちの方が格上だから逆らえなくて悪かった」
同じく申し訳ないと言う様子で松木が言う。
「いや、別に良いよ」
いじめというのはそういうもの。強者が弱者を力尽くで言いなりにさせる。そして、逆らえば自分がターゲットにされる。大抵は逆らうのが怖いのだ。
「あのさ、僕も刈安君って呼んで良いかな?僕の事は悠斗って呼んで?」
「俺は健二だ。改めてよろしくな?」
「俺のことも呼び捨てでいいよ」
二人も幼稚部からの生徒で、階級は違うが刈安が鳶と良い勝負をしたのを知っていた。問題の人物が謎の謹慎を受けた事で、ようやく部内の友人が出来た。
「ところで、鳶先輩の君への熱視線がますます熱いんだけど、何かあった?」
悠斗はじっと刈安を見つめる。
「えっ!? な、何かって?!」
「先輩は前から刈安の練習をじっくり見てたけど、今日はぴったり並んで練習していたよな~。あれを見る限り、やっぱり三原が邪魔してたんだな」
「えっと、多分だけど……練習後に俺に色々言ってたんだけどさ。そのすぐ後に鳶先輩がいたから、聞いてたんじゃないかな」
そう。普段なら着替えが終わるまで待って、さらに嫌がらせで畳みかけて来ていたのにいなかったのだ。
「ああ、うち、いじめに厳しいからな。退部じゃないだけマシかも」
「そうなんだ?」
「うん。鳶先輩や怖い先輩にバレないようにしながら、僕達にも牽制して来てたし。二度目はないから自主的に退部する可能性もあるね」
「そうしたら、あいつらは柔道は辞めるのかな?」
彼らは嫌いだが、練習は真面目に来ていたことを思い出す。
「続けられないよ。うちで途中で退部したなんて、『何かしました』って言っているようなもんだよぉ~」
「——辞めなくても、良いと思う」
「本当か? 刈安、優しすぎないか?」
「優しさじゃない。辞めたくないのに辞めなきゃいけない気持ちは、誰よりも知ってるからだよ」
「「……」」
二人は、刈安の事情は知らないものの、特待生で学費免除=家庭に事情がある、だと知っている。だからそれ以上聞くのは止めた。
クラスは三人とも違うため途中で別れ、昼の休憩まで真面目に授業に勤しむ刈安だったが、クラスの友人達は雰囲気が明るくなったと皆が不思議がり、赤くなった刈安を恋人でもできたのかと囃し立てた。鳶と一歩進んだ事が、刈安を覆っていた陰を取り払ったらしい。
(早くお昼にならないかな。鳶先輩に会いたい)
そう思う度に我知らず微笑んでいて、それを見た一部のクラスメイトの視線を集めていた事には全く気がつかない刈安だった。
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