2 / 9
2
しおりを挟む
前話で学園の名前が修正されていない箇所がありました!
グルドヴィード学園です。
◇
「やぁ、刈安」
笑顔で迎えられたが、刈安は混乱していた。
(なんで、一人でいるんだ?!)
いつも仲間に囲まれている鳶しか、刈安は知らなかった。
「また自主練してたのか?」
「っす。使わせて貰ってすみません。もう帰ります」
入学して以来、二人で話すことはなかった。組み手や乱どりはしたことがあったが、実戦練習では毎回負けていた。
「時間内なら誰でも使えるんだから、僕にそんな風に言うことないよ? ところでさ、今までゆっくり話せなかったけど、大会ではよく対戦したよね。学校が同じになっても階級が同じなら対戦出来るのかなぁ?」
「……えっ? どう言う意味ですか?」
「ん? 僕は、君との対戦をいつも楽しみにしてたんだ。君程僕に喰らい付いてきたβはいなかったからね。うちに来ると聞いて楽しみだった」
(β、か)
その言葉を苦い思いで噛み締める。それと同時に、自分を気にかけていたのだと言うことに、心が躍ってしまった。
(そこらへんの石ころだと扱いだと思い込んでいた)
「……鳶先輩は、練習しなくても強いから、俺なんかどうでも良いと思っていました」
「練習はしてるよ? 家の稽古場で、父と兄にめちゃくちゃしごかれてるよ~!!」
「稽古場?! 家にっ?!」
「うん、そう。家が代々武道を嗜んでいてね。おかげで大変だよ」
そう言って鳶は華やかな笑顔を刈安に向け、その眩しさに刈安は目を逸らした。
(キレイな人だ。いつも対戦相手としか見てなかったけど、こんな風に笑うんだ)
「刈安はぁ、勉強も柔道も頑張ってるよね。でも、たまには遊んで気分転換をした方がいいよ?」
「規定の順位は保たないと、学費免除されなくなるので」
「ああ、うん。知ってるけどさ。練習が休みの日も出かけた事ないって? 何してるの?」
「練習と勉強です」
生活費は母の仕送りだ。刈安は、それは母が懸命に働いたお金であり遊びに使うなんてとんでもないと思っている。
「ああ~、やっぱりね」
(何をしに来たんだろう。さっきの奴らはどうしたんだ?鳶先輩がいるなら、絶対に居残って話したがるはずなのに)
「なぁ、明日の土曜日、僕と遊びに行こう?」
「はあっ?!」
(鳶先輩と?!なんで?それより、この人めちゃくちゃ金持ちだ!私服を見たことあるけど、テレビで見る様な格好してた!!無理無理!!)
「いいえ!すみませんけど、俺は勉強します」
「え~っ?良いじゃん。行こうよ! 明日、十時に学園の門の前に迎えに来るからっ!!」
「いえ、無理ですって、あの! 待って下さい!!」
「じゃ、また明日~!」
鳶は笑いながらさっさと去ってしまい。刈安は武道館にポツンと取り残された。
(嘘だろ?!なんで?!ってか、これ明日確定?何着て行けば良いんだ?!)
刈安はパニックになりながら猛ダッシュで寮へ戻り、数少ない私服をこねくり回すことになった。
グルドヴィード学園です。
◇
「やぁ、刈安」
笑顔で迎えられたが、刈安は混乱していた。
(なんで、一人でいるんだ?!)
いつも仲間に囲まれている鳶しか、刈安は知らなかった。
「また自主練してたのか?」
「っす。使わせて貰ってすみません。もう帰ります」
入学して以来、二人で話すことはなかった。組み手や乱どりはしたことがあったが、実戦練習では毎回負けていた。
「時間内なら誰でも使えるんだから、僕にそんな風に言うことないよ? ところでさ、今までゆっくり話せなかったけど、大会ではよく対戦したよね。学校が同じになっても階級が同じなら対戦出来るのかなぁ?」
「……えっ? どう言う意味ですか?」
「ん? 僕は、君との対戦をいつも楽しみにしてたんだ。君程僕に喰らい付いてきたβはいなかったからね。うちに来ると聞いて楽しみだった」
(β、か)
その言葉を苦い思いで噛み締める。それと同時に、自分を気にかけていたのだと言うことに、心が躍ってしまった。
(そこらへんの石ころだと扱いだと思い込んでいた)
「……鳶先輩は、練習しなくても強いから、俺なんかどうでも良いと思っていました」
「練習はしてるよ? 家の稽古場で、父と兄にめちゃくちゃしごかれてるよ~!!」
「稽古場?! 家にっ?!」
「うん、そう。家が代々武道を嗜んでいてね。おかげで大変だよ」
そう言って鳶は華やかな笑顔を刈安に向け、その眩しさに刈安は目を逸らした。
(キレイな人だ。いつも対戦相手としか見てなかったけど、こんな風に笑うんだ)
「刈安はぁ、勉強も柔道も頑張ってるよね。でも、たまには遊んで気分転換をした方がいいよ?」
「規定の順位は保たないと、学費免除されなくなるので」
「ああ、うん。知ってるけどさ。練習が休みの日も出かけた事ないって? 何してるの?」
「練習と勉強です」
生活費は母の仕送りだ。刈安は、それは母が懸命に働いたお金であり遊びに使うなんてとんでもないと思っている。
「ああ~、やっぱりね」
(何をしに来たんだろう。さっきの奴らはどうしたんだ?鳶先輩がいるなら、絶対に居残って話したがるはずなのに)
「なぁ、明日の土曜日、僕と遊びに行こう?」
「はあっ?!」
(鳶先輩と?!なんで?それより、この人めちゃくちゃ金持ちだ!私服を見たことあるけど、テレビで見る様な格好してた!!無理無理!!)
「いいえ!すみませんけど、俺は勉強します」
「え~っ?良いじゃん。行こうよ! 明日、十時に学園の門の前に迎えに来るからっ!!」
「いえ、無理ですって、あの! 待って下さい!!」
「じゃ、また明日~!」
鳶は笑いながらさっさと去ってしまい。刈安は武道館にポツンと取り残された。
(嘘だろ?!なんで?!ってか、これ明日確定?何着て行けば良いんだ?!)
刈安はパニックになりながら猛ダッシュで寮へ戻り、数少ない私服をこねくり回すことになった。
15
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
こじらせΩのふつうの婚活
深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。
彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。
しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。
裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。
あなたが愛してくれたから
水無瀬 蒼
BL
溺愛α×β(→Ω)
独自設定あり
◇◇◇◇◇◇
Ωの名門・加賀美に産まれたβの優斗。
Ωに産まれなかったため、出来損ない、役立たずと言われて育ってきた。
そんな優斗に告白してきたのは、Kコーポレーションの御曹司・αの如月樹。
Ωに産まれなかった優斗は、幼い頃から母にΩになるようにホルモン剤を投与されてきた。
しかし、優斗はΩになることはなかったし、出来損ないでもβで良いと思っていた。
だが、樹と付き合うようになり、愛情を注がれるようになってからΩになりたいと思うようになった。
そしてダメ元で試した結果、βから後天性Ωに。
これで、樹と幸せに暮らせると思っていたが……
◇◇◇◇◇◇
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる