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ハネムーン編
ハネムーン編 エリアス 1 全5話
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お久しぶりです! かなり更新が遅れてしまいました。
リクエストの際、なんだかんだと最後に票を取ったのが殿下でした。いろいろやらかしたのと、連載中に殿下が好き! と言うコメントが少なかったので作者もびっくりです。殿下ひそかにうれしそうにしていますよ。
全五話、予約済みで毎日投稿です。
ーーーー
カリカリ……パラッ……
俺はティアの執務室に来ていて、仕事をする様子を横目で見ながら書類の分類をしている。
ティアは黙々と書類を読んではサインをし押印する。手紙には封蝋を押すを繰り返していた。
(やっぱり、書類仕事は意外と地味なんだよな。それに、疲れそう)
補佐官数人と、各種書類の内容についてときおり質問をしていく。まだ国王代理だけど、即位する前から国王の顔で仕事をしている。すぐそばに俺がいても冷静沈着だ。
(もっと、俺も政治について勉強して力になりたい)
俺が任されているのは、浄化後に変化があった地域についての報告書だ。
最初に訪問した南の地方では、大豊作だし、歩夢君がいるのでアイディア商品の試作品も出回り始めている。豊作なのはいいけど、飽和気味なのが問題だな、と思った。
備蓄は各地でしているが、一般的な食事に使うだけでは余るような作物もある。使い切れない穀物の品質を維持して保管、か。
「長期保管できる食品に加工すればいいんだけどなぁ」
「ジュンヤ? 何か問題があったか?」
頭の中で呟いたはずが声に出ていたようだ。
「ああ、このキールの実とかディズっていう作物が備蓄してもまだ余るだろう? だから、加工して長期保管するか輸出できないかなって思ってさ」
「それなら、粉末にして練った携帯食にすることが多いな」
「う~ん、正直なところ、携帯食って本当にその場しのぎって感じで美味しくはないだろう? だから、日常的に食べられるものがいいかなって。ディズの実も見たいし、食糧庫に行って来ていい?」
「それなら私も行こう」
「執務室を離れていいのか?」
「一息ついたところだ。午前中の仕事は済んだ。午後の謁見の前に少し出かけたい」
目の間を揉みながらため息をつくティア。確かに気分転換をした方が良さそうだけど、本当にいいのかな? と補佐官を見たらうなずいてくれた。
「じゃあ、お昼を食べたら行こうか」
「昼食は二人きりになりたい」
ギュッと抱きしめてくるティア。
「わかってるよ。今日はさ、チャーハンっていうのにしたんだ。スープも作ったし、早く食べてほしいな」
ランチは、朝のうちに作ってマジックバッグに保管してあるんだ。
王宮料理人のミハナさんには悪いけど、ティアは俺のご飯が食べたいっておねだりするからさぁ~!
それがめちゃくちゃ可愛い可愛いからさぁ~!
「ジュンヤ様、テーブルのご用意はできております」
ティアの部屋に戻れば、ソウガさんたちが完璧に支度をしてくれていた。エルビスは今は休暇なんだ……
実は、ティアとのハネムーン旅行を考えたけど、もれなく仕事が追ってくるという悲しい現実があった。
結婚式後にみんなとラブラブしすぎたつけを払うのです! だから、王宮には残って、他のみんなとは離れて過ごすことにした。
俺が寝起きするのもティアの部屋で、今日が初日。そこでティアの激務の一部を思い知っていた。
(これを、旅の間も続けてたんだよな……本当、尊敬する)
「ジュンヤ、隣に座ってくれ」
一般的には向かい合わせなんだろうけど、ぴったりと椅子がつけられていた。隣に座ると、ティアはうれしそうに俺の方を抱いた。
「やっと独り占めにできる。この時間を待っていた」
「いつもお仕事お疲れさま。あのさ、俺にできる事ならするから、リクエストしていいよ?」
「——そうか。とても楽しみだ」
「ふふふっ」
「歓談中失礼いたします。殿下、こちらがジュンヤ様がお作りになったチャーハンセットというものです」
マジックバッグのおかげで作りたてほやほやを維持した、焼き豚チャーハンと卵スープ、サラダを並べてくれる。それに、試作品の焼き豚も別皿で持って来ていた。
「俺のいた国では、高級料亭は一品ずつだけど、庶民の食堂ではこうして一度に全部出す定食っていうのがあるんだ。ミナト食堂でも出せるかなって思ってさ。焼き豚を試食してくれない?」
「これはいい匂いがするな。キールの実を使っているのか?」
「そうだよ! パンみたいに粉末にする手間もないし、庶民に広まれば消費も増えるかなと思ってさ」
俺はスプーンで掬って、ティアに差し出した。
「ティア、あ~んして。食べさせてやる」
「……」
「あ、嫌だった?」
「嫌ではないっ!!」
そう言って慌てて開けた口に、一口放り込んだ。
ティアはもぐもぐと咀嚼しつつ、まゆがピクッと上がっている。
(口に合わなかったかな?)
「……ジュンヤ」
また口がパカッと開いた。
「ふふっ」
また一口入れると、目を瞑って味わっていた。
「卵はふわりとしてて、キールの実は硬すぎず柔らかすぎず、ほどよい食感だ。スパイスも効いているな。それに……コンソメの香り? それに、この焼き豚というものは、実に美味だ」
そう言って、別皿に置いてある焼き豚をペロリと平らげた。
「本当?! よかった~! 焼き豚はいろんな使い方が出来るから、国内で流通させたいと思って開発中だよ」
「ジュンヤの作る料理は、素材を殺さない絶妙な味付けだな。確かに、より良い食生活のために様々な食品を普及していきたいな」
「だろう~? でも、今は旦那様専用だよ」
「——旦那様」
「名前で呼ぶ方がいい?」
「いや。——いや、いいな。食事もしたいが、ジュンヤも味わいたい……」
肩を抱く手が腰に降りて来て、くすぐったいのとエッチな動きで、どきっとしてしまう。
「っ?! あ、あとで!! ご飯を食べないと倒れちゃうぞ!」
エッチはしてもいいけど、まだ午後の仕事もある! 俺のせいで仕事を疎かにしたらティアの評判が落ちてしまうし!
「あのさ、仕事が全部終わったら——いいよ」
「わかっている。義務は果たすが、夜が楽しみだ。そうだ、私もジュンヤに食べさせてやりたい」
「俺も? うん」
俺も口を開けると、完全に素に戻ったティアがほほ笑みながらスプーンを差し出して来てたので、素直にパクリと食べた。
俺たちはそうやって食べさせあって、二人だけの時間を楽しみ午後の視察に来ていた。
「殿下、ジュンヤ様、お待ちしていました。今年は大変な豊作で嬉しいのですが、これでは作物の値が下がってしまい農民の収入が減ってしまいます」
山積みの袋を前に、倉庫の管理人が困り果てていた。
「確かに、例年にない収穫だな。これは、ケローガ産か。最初に浄化をした成果だが、どうしたものか。」
ティアも珍しく驚いた顔を見せていた。
「輸出しても、まだ余るんだよな?」
「ああ、そうだ。だが、それはディズの収穫が減ったせいで取引を減らしたからだ。出荷量を今後増やすとして、今年度の消費を何とかしなくては」
「そうか。これがディズ? なんだか……大豆っぽい感じだ。これ、少し分けてもらってもいいですか?」
「もちろんです! ジュンヤ様のアイデアでお助けください」
なんとなくだけど、大豆っぽいんだよね。味噌&醤油ドリームが実現するかもしれないぞ!
「そうですね……難しいけど、考えてみます」
「お二人とも、本当ならお二人でごゆっくり過ごされたいでしょうに、わざわざ視察をして下るなんて感謝いたします」
管理人さんが深々と頭を下げた。
「良いのだ。民の支えがなければ国は成り立たぬ。とはいえ、ジュンヤと過ごす時間も欲しいがな」
「遠くへ行けないのでしたら、最近見つかった、湯の湧く泉へいかれては?」
「湯の湧く泉?! それって温泉?!」
「オンセンというものかは分かりませんが、ジュンヤ様が最初に浄化してくださった泉の麓で見つかり、掘り当てた者たちが湯宿をたくさん建てて『奇跡の湯』として商売を始めているのですよ」
なんて商魂たくましいんだ! 俺はそういう人たちが大好きだぞ!
「あの泉ならば半日で行ける。それに、執務をする羽目になっても転送もすぐに届くな」
「うん! ティア、温泉に行こう! って、勝手には決められないか……大臣たちに相談してみて?」
「なんとしても説得する」
強引なのはダメだよ? と何度も言い含めて、それでも頬を緩むのが止められない王子様はきっと押し切るんだろうな、と思った。
俺はキールの実を使った新レシピと、ディズの実で作る新商品の考案をした。ティアは午前で捌ききれなかった謁見があって、その後は各地の領内を管理する貴族たちと社交がてら報告会と忙しい。
でも、それを乗り切れば二人での旅行もできるはずだ! と張り切っていた。
王宮内の厨房ではミハナさん以外は緊張しまくっていて申し訳ないと思ったけど、彼が間を取り持ってくれたので、すぐに打ちとけることができた。
(なんとなくだけど、方向性が決まってよかったな~! 新しい人との出会いは刺激になる)
ウキウキしてティアの部屋に帰り、執務が終わるまでの間に俺は準備をするのです!
(全員といたした時とは別だもん……今日からしばらくの間はティアと二人きり!! 巡行以来、初めてだよな?!)
「えっと、どれにしようかな……」
こちらに来る時に持って来たバッグから箱を取り出す。グレンさんたちが異様にはりきって、依頼した以上にいろいろくれた。でも、ティアとは背徳的なアレが多くて、好みがわからない……
「ソウガさんはいますか?」
「はい、こちらにおります」
控えていたソウガさんに来てもらい、長年の勘で選んでもらおうと思います! どうせ全部見られるから開き直っています!
「なんと……殿下のためにこちらを?」
「それぞれにと作ったんだけど、ティアの好みに自信がなくて。どちらがいいと思います?」
候補の二着を広げて見せた。
「ジュンヤ様が殿下のためにすることは全てお喜びになると思いますが、そうですね……これなどいかがでしょう。それから湯の準備と、お肌を整えましょう。それと、旅行のお話はお受けしております。殿下は必ず臣下を説得するでしょうから、旅の支度も進めています」
悩みに悩んだ結果選んだ一枚を今夜着る事にした。これ、パラパさんが悶えながら見せて来た方なんだ。 それに、ソウガさんはすでに温泉旅行が確定だと思っているみたいで仕事が早い。
「ありがとう」
お風呂などの支度はノーマとヴァインが来てくれている。ティアが『たとえ侍従でもジュンヤの肌を見せたくない』と言って二人をつけてくれた。
「二人とも、休暇をあげるつもりだったのにごめんな」
「いいえ、ジュンヤ様のお世話をするのは喜びですよ!」
「ええ。私もです。殿下のお気持ちもよくわかりますし、お任せください」
頼もしい二人の言葉に喜びつつ、エルビスが心配になってしまった。でも、口に出すのはどっちにも悪いから我慢だ。
マッサージをしてもらってから玉を埋め込んで、ティアのための下着を身につける。
「これは……正解なんだろうか……」
『扇情的でありつつも、ジュンヤ様の肌を引き立てますし、何よりこれは殿下専用の仕様ですから!』
(パラパさん! 信じるよ!?)
不安と興奮が交差する中、ローブを身に纏いティアが寝室に来るのを待っていた。
ーーーー
次は当然のラブラブです!
リクエストの際、なんだかんだと最後に票を取ったのが殿下でした。いろいろやらかしたのと、連載中に殿下が好き! と言うコメントが少なかったので作者もびっくりです。殿下ひそかにうれしそうにしていますよ。
全五話、予約済みで毎日投稿です。
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カリカリ……パラッ……
俺はティアの執務室に来ていて、仕事をする様子を横目で見ながら書類の分類をしている。
ティアは黙々と書類を読んではサインをし押印する。手紙には封蝋を押すを繰り返していた。
(やっぱり、書類仕事は意外と地味なんだよな。それに、疲れそう)
補佐官数人と、各種書類の内容についてときおり質問をしていく。まだ国王代理だけど、即位する前から国王の顔で仕事をしている。すぐそばに俺がいても冷静沈着だ。
(もっと、俺も政治について勉強して力になりたい)
俺が任されているのは、浄化後に変化があった地域についての報告書だ。
最初に訪問した南の地方では、大豊作だし、歩夢君がいるのでアイディア商品の試作品も出回り始めている。豊作なのはいいけど、飽和気味なのが問題だな、と思った。
備蓄は各地でしているが、一般的な食事に使うだけでは余るような作物もある。使い切れない穀物の品質を維持して保管、か。
「長期保管できる食品に加工すればいいんだけどなぁ」
「ジュンヤ? 何か問題があったか?」
頭の中で呟いたはずが声に出ていたようだ。
「ああ、このキールの実とかディズっていう作物が備蓄してもまだ余るだろう? だから、加工して長期保管するか輸出できないかなって思ってさ」
「それなら、粉末にして練った携帯食にすることが多いな」
「う~ん、正直なところ、携帯食って本当にその場しのぎって感じで美味しくはないだろう? だから、日常的に食べられるものがいいかなって。ディズの実も見たいし、食糧庫に行って来ていい?」
「それなら私も行こう」
「執務室を離れていいのか?」
「一息ついたところだ。午前中の仕事は済んだ。午後の謁見の前に少し出かけたい」
目の間を揉みながらため息をつくティア。確かに気分転換をした方が良さそうだけど、本当にいいのかな? と補佐官を見たらうなずいてくれた。
「じゃあ、お昼を食べたら行こうか」
「昼食は二人きりになりたい」
ギュッと抱きしめてくるティア。
「わかってるよ。今日はさ、チャーハンっていうのにしたんだ。スープも作ったし、早く食べてほしいな」
ランチは、朝のうちに作ってマジックバッグに保管してあるんだ。
王宮料理人のミハナさんには悪いけど、ティアは俺のご飯が食べたいっておねだりするからさぁ~!
それがめちゃくちゃ可愛い可愛いからさぁ~!
「ジュンヤ様、テーブルのご用意はできております」
ティアの部屋に戻れば、ソウガさんたちが完璧に支度をしてくれていた。エルビスは今は休暇なんだ……
実は、ティアとのハネムーン旅行を考えたけど、もれなく仕事が追ってくるという悲しい現実があった。
結婚式後にみんなとラブラブしすぎたつけを払うのです! だから、王宮には残って、他のみんなとは離れて過ごすことにした。
俺が寝起きするのもティアの部屋で、今日が初日。そこでティアの激務の一部を思い知っていた。
(これを、旅の間も続けてたんだよな……本当、尊敬する)
「ジュンヤ、隣に座ってくれ」
一般的には向かい合わせなんだろうけど、ぴったりと椅子がつけられていた。隣に座ると、ティアはうれしそうに俺の方を抱いた。
「やっと独り占めにできる。この時間を待っていた」
「いつもお仕事お疲れさま。あのさ、俺にできる事ならするから、リクエストしていいよ?」
「——そうか。とても楽しみだ」
「ふふふっ」
「歓談中失礼いたします。殿下、こちらがジュンヤ様がお作りになったチャーハンセットというものです」
マジックバッグのおかげで作りたてほやほやを維持した、焼き豚チャーハンと卵スープ、サラダを並べてくれる。それに、試作品の焼き豚も別皿で持って来ていた。
「俺のいた国では、高級料亭は一品ずつだけど、庶民の食堂ではこうして一度に全部出す定食っていうのがあるんだ。ミナト食堂でも出せるかなって思ってさ。焼き豚を試食してくれない?」
「これはいい匂いがするな。キールの実を使っているのか?」
「そうだよ! パンみたいに粉末にする手間もないし、庶民に広まれば消費も増えるかなと思ってさ」
俺はスプーンで掬って、ティアに差し出した。
「ティア、あ~んして。食べさせてやる」
「……」
「あ、嫌だった?」
「嫌ではないっ!!」
そう言って慌てて開けた口に、一口放り込んだ。
ティアはもぐもぐと咀嚼しつつ、まゆがピクッと上がっている。
(口に合わなかったかな?)
「……ジュンヤ」
また口がパカッと開いた。
「ふふっ」
また一口入れると、目を瞑って味わっていた。
「卵はふわりとしてて、キールの実は硬すぎず柔らかすぎず、ほどよい食感だ。スパイスも効いているな。それに……コンソメの香り? それに、この焼き豚というものは、実に美味だ」
そう言って、別皿に置いてある焼き豚をペロリと平らげた。
「本当?! よかった~! 焼き豚はいろんな使い方が出来るから、国内で流通させたいと思って開発中だよ」
「ジュンヤの作る料理は、素材を殺さない絶妙な味付けだな。確かに、より良い食生活のために様々な食品を普及していきたいな」
「だろう~? でも、今は旦那様専用だよ」
「——旦那様」
「名前で呼ぶ方がいい?」
「いや。——いや、いいな。食事もしたいが、ジュンヤも味わいたい……」
肩を抱く手が腰に降りて来て、くすぐったいのとエッチな動きで、どきっとしてしまう。
「っ?! あ、あとで!! ご飯を食べないと倒れちゃうぞ!」
エッチはしてもいいけど、まだ午後の仕事もある! 俺のせいで仕事を疎かにしたらティアの評判が落ちてしまうし!
「あのさ、仕事が全部終わったら——いいよ」
「わかっている。義務は果たすが、夜が楽しみだ。そうだ、私もジュンヤに食べさせてやりたい」
「俺も? うん」
俺も口を開けると、完全に素に戻ったティアがほほ笑みながらスプーンを差し出して来てたので、素直にパクリと食べた。
俺たちはそうやって食べさせあって、二人だけの時間を楽しみ午後の視察に来ていた。
「殿下、ジュンヤ様、お待ちしていました。今年は大変な豊作で嬉しいのですが、これでは作物の値が下がってしまい農民の収入が減ってしまいます」
山積みの袋を前に、倉庫の管理人が困り果てていた。
「確かに、例年にない収穫だな。これは、ケローガ産か。最初に浄化をした成果だが、どうしたものか。」
ティアも珍しく驚いた顔を見せていた。
「輸出しても、まだ余るんだよな?」
「ああ、そうだ。だが、それはディズの収穫が減ったせいで取引を減らしたからだ。出荷量を今後増やすとして、今年度の消費を何とかしなくては」
「そうか。これがディズ? なんだか……大豆っぽい感じだ。これ、少し分けてもらってもいいですか?」
「もちろんです! ジュンヤ様のアイデアでお助けください」
なんとなくだけど、大豆っぽいんだよね。味噌&醤油ドリームが実現するかもしれないぞ!
「そうですね……難しいけど、考えてみます」
「お二人とも、本当ならお二人でごゆっくり過ごされたいでしょうに、わざわざ視察をして下るなんて感謝いたします」
管理人さんが深々と頭を下げた。
「良いのだ。民の支えがなければ国は成り立たぬ。とはいえ、ジュンヤと過ごす時間も欲しいがな」
「遠くへ行けないのでしたら、最近見つかった、湯の湧く泉へいかれては?」
「湯の湧く泉?! それって温泉?!」
「オンセンというものかは分かりませんが、ジュンヤ様が最初に浄化してくださった泉の麓で見つかり、掘り当てた者たちが湯宿をたくさん建てて『奇跡の湯』として商売を始めているのですよ」
なんて商魂たくましいんだ! 俺はそういう人たちが大好きだぞ!
「あの泉ならば半日で行ける。それに、執務をする羽目になっても転送もすぐに届くな」
「うん! ティア、温泉に行こう! って、勝手には決められないか……大臣たちに相談してみて?」
「なんとしても説得する」
強引なのはダメだよ? と何度も言い含めて、それでも頬を緩むのが止められない王子様はきっと押し切るんだろうな、と思った。
俺はキールの実を使った新レシピと、ディズの実で作る新商品の考案をした。ティアは午前で捌ききれなかった謁見があって、その後は各地の領内を管理する貴族たちと社交がてら報告会と忙しい。
でも、それを乗り切れば二人での旅行もできるはずだ! と張り切っていた。
王宮内の厨房ではミハナさん以外は緊張しまくっていて申し訳ないと思ったけど、彼が間を取り持ってくれたので、すぐに打ちとけることができた。
(なんとなくだけど、方向性が決まってよかったな~! 新しい人との出会いは刺激になる)
ウキウキしてティアの部屋に帰り、執務が終わるまでの間に俺は準備をするのです!
(全員といたした時とは別だもん……今日からしばらくの間はティアと二人きり!! 巡行以来、初めてだよな?!)
「えっと、どれにしようかな……」
こちらに来る時に持って来たバッグから箱を取り出す。グレンさんたちが異様にはりきって、依頼した以上にいろいろくれた。でも、ティアとは背徳的なアレが多くて、好みがわからない……
「ソウガさんはいますか?」
「はい、こちらにおります」
控えていたソウガさんに来てもらい、長年の勘で選んでもらおうと思います! どうせ全部見られるから開き直っています!
「なんと……殿下のためにこちらを?」
「それぞれにと作ったんだけど、ティアの好みに自信がなくて。どちらがいいと思います?」
候補の二着を広げて見せた。
「ジュンヤ様が殿下のためにすることは全てお喜びになると思いますが、そうですね……これなどいかがでしょう。それから湯の準備と、お肌を整えましょう。それと、旅行のお話はお受けしております。殿下は必ず臣下を説得するでしょうから、旅の支度も進めています」
悩みに悩んだ結果選んだ一枚を今夜着る事にした。これ、パラパさんが悶えながら見せて来た方なんだ。 それに、ソウガさんはすでに温泉旅行が確定だと思っているみたいで仕事が早い。
「ありがとう」
お風呂などの支度はノーマとヴァインが来てくれている。ティアが『たとえ侍従でもジュンヤの肌を見せたくない』と言って二人をつけてくれた。
「二人とも、休暇をあげるつもりだったのにごめんな」
「いいえ、ジュンヤ様のお世話をするのは喜びですよ!」
「ええ。私もです。殿下のお気持ちもよくわかりますし、お任せください」
頼もしい二人の言葉に喜びつつ、エルビスが心配になってしまった。でも、口に出すのはどっちにも悪いから我慢だ。
マッサージをしてもらってから玉を埋め込んで、ティアのための下着を身につける。
「これは……正解なんだろうか……」
『扇情的でありつつも、ジュンヤ様の肌を引き立てますし、何よりこれは殿下専用の仕様ですから!』
(パラパさん! 信じるよ!?)
不安と興奮が交差する中、ローブを身に纏いティアが寝室に来るのを待っていた。
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次は当然のラブラブです!
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