上 下
184 / 208
ハネムーン編

ハネムーン編 1 side ダリウス 全7話

しおりを挟む
これまでダリウス視点は少なかったので、心情を描いてみようと思います。二話で視点変更があります。

ナンバリングなので書き上げてからと思ったのですが、ゆっくり更新ということで見逃してください! バルバロイ家を描きたかったので、何話かかる不明です。クマ一族め……!!

ーーーー

 俺は困難を乗り切り、ジュンヤとめでたく結婚した。新婚のハネムーンで全員がジュンヤとのふたきりの甘い時間を与えられていた。そして今、エロエロで可愛いジュンヤを伴って実家であるユーフォーンの城門をくぐったところだ。俺も一緒に馬車に乗り、移動中はキスやセックスをして満喫していた。
 だが、門をくぐってからは、ため息が出そうなのを耐えていた
 
「ダリウス、楽しみだなぁ! 今度は街を楽しみたい!!」

 無邪気に喜ぶジュンヤが愛おしい。俺の憂いの理由は、浮かれて報告を怠ったせいだ。自業自得だってわかっている。

(—— 母上、怒ってるだろうなぁ……)




 俺たちとジュンヤの結婚が決まり、意気揚々と結婚衣装を仕立てるためにグレンの店に向かう途中、父上からの呼び出しがあり団長室に来ていた。
 そこで、ついうっかりではすまない失敗をしたと気がついた。よりによって母上を怒らせてしまった……!!

「父上……」
「浮かれていたおまえが悪いなぁ」
「父上も一言言ってくださればよかったのに」
「成人した子の面倒までみきれん」
「うっ……」
「まぁ、俺も帰ることになるから、一緒に怒られちまうなぁ、おまえのせいで」
「ご迷惑をおかけします」

 部屋を退出して、ため息をつく。

(うぉぉぉ~~!! 母上、おっかねぇ!! なんとか機嫌をとらねぇと……それからジュンヤを同伴させる許可をエリアスにもらわねぇと)

 衣装どころではなくなり、遅れる旨を連絡しエリアスの元に向かった。執務室では、エリアスが大量の書類と睨めっことをしていた。
 ベルパル卿も一緒になって書類の確認中だった。即位の儀まで時間があるが、既に王としての執務が山積みだ。

「どうした?」
「殿下、お願いがございます」

 俺だってTPOをわきまえているさ。

「お願いだと?」
「はい。婚儀の後、本家で結婚披露宴をしろと、母から通達がきました」
「——そうだった。気が回らなくて悪かったな。バルバロイ家の次男の結婚だ。お披露目をしなくてはな。ううむ、いつにするか……」
「殿下、お話に口を挟んでもよろしいですか?」

 タイミングに頭を悩ます俺達に、ベルパル卿が意見をしてきた。

「ダリウス殿には悪いが、殿下が最優先です。ですから、婚儀終了後にハネムーン期間を設けて、全員と休暇を取れば平等でしょう。となれば、公爵家であるバルバロイ家が 二番手になり、問題なくご実家でのお披露目ができるのでは?」
「ふむ。ダリウスはそれで良いか?」
「それなら母も納得するでしょう」
「チェリフには、私から手紙を書こう。——健闘を祈る」
「頑張ります」

 




 結婚前のドタバタを思い出したが、無事にジュンヤは俺の嫁になった!! とウキウキしてしまう。
 母上問題もうまく片付けて見せる!! そして、甘い甘い時間を二人で過ごすんだ!!

「あっ、ダリウス! お屋敷が見えてきた! みんな元気かなぁ」
「お、おう。手紙では元気そうだったな。今回は兄上とメフリー殿の婚儀もあるし、賑やかになりそうだ」

 そう、メフリー殿の体調がようやく整い、念願だった婚儀が行われる。そこで俺たちのお披露目も同時に行い、領内や王国、さらには近隣国にバルバロイの結束力を見せつけるのだ、と母上は計画をしていた。

「おかえりなさいませ!!」

 リンドたち使用人がずらりと立ち並び出迎えてくれた。

「坊ちゃん、お母上がお待ちかねでございます」
「うっ、そうか。ジュンヤ、行こう」
「うん。みんな、しばらくお世話になります」

 ジュンヤは使用人たちににっこりとほほ笑み、彼らも思わずほほえみ返した。普段ならば冷静に対処する彼らも、優しく誠実に気遣ってくれるジュンヤにメロメロだ。
 当然だな!! 美人を鼻にかけることもなくニコッと可愛く笑うし、ありがとうなんて使用人を気遣うしでもエロいしエロ可愛くて可愛くてそりゃもう可愛い!!

「ダリウス?」
「ん? 悪い、見惚れてた」
「何言ってんの!?」
「毎日惚れ直す……早くハネムーンのイチャイチエッチしようぜ!」
「バーカバーカ! なんでこんなところで言うんだよ!」

 真っ赤になって恥ずかしがるジュンヤ。

(しまった! こんな可愛い顔を他のやつに見せちまった!)

「よし、部屋に行って楽な格好に着替えようぜ? それから、な?」

 一回だけ抱いて、それから母上のところに行こう。

「坊っちゃま。奥様からお部屋に来る様にと伝言です」
「——あぁ、わかったよ」

 俺の行動はお見通しだった……!! 母上怖い!

 俺は急いで母上の部屋に向かう。走ると公爵家の子息にあるまじき振る舞いと叱られるので、見苦しくない程度のスピードだ。

(父上! 先にレイモンド様の屋敷に向かうとか狡いぞ!)

 母上の部屋の前で、身嗜みを確認する。髪も撫でつけ……大丈夫か? 大丈夫だよな!?

「母上、ダリウスです。入ってもよろしいですか?」
「お入り」

 いつもの声音だが、母上は静かに怒るから怖いんだよな……

「待っていたよ。そこにお座り。リンド、お茶をおくれ。その後は下がっていなさい」

 リンドが下がったのを確認した母上の視線が、射る様に鋭い。

「浮かれているのは分かっていたけれど、貴族には段取りが大事だとお忘れかい?」
「ご迷惑をおかけしました」
「まぁ、他の伴侶が殿下だったから、そちらを優先するのを皆も納得したけどね。ここからはしっかり、バルバロイ家の男として動いてもらうよ。衣装はグレンに頼んだから間に合った。あとは、各所に二人揃って顔見せをしてきなさい。これがリストだ」
「はい。母上、私はこれまで自分勝手な振る舞いをして、わがままで愚かでした。これからは、バルバロイの男として、兄上を支える所存です」
「……へぇ。ジュンヤ殿との出会いがここまでおまえを変えるとはねぇ。ダリウス。母は、そなたに謝らねばならない」

 猛烈に叱咤されると思っていたが、想定外の言葉だった。

「謝る?」
「そうだよ。旦那様が王都で任務に当たらねばならないから、領内や屋敷の事を私が一手に担ってきた。多忙なせいで、おまえたちに目が届かず気がつかなかった……許しておくれ」
「母上は悪くありません。私も兄上も、誰かに相談をすればよかったのだと思ってます。」
「——私は政略結婚だったから、旦那様の信頼を得るために必死だった。そなたもヒルダーヌも真の愛を得たこと、嬉しく思っているよ。幸せにおなり」
「母上……これからは親孝行したいと思っています」
「ふふふ。それならば、もう無理をしなくて良いぞ? その言葉遣い、落ち着かないのだろう?」

 母上はケラケラと笑い、その笑顔は初めてみる屈託のない笑顔だった。

「今日はゆっくりすると良い。——新婚なのはわかるが、ジュンヤを抱き潰したら顔見せができないから、程々にしておきなさい」
「うっ、はい」

 部屋を退室したが、心が軽くなっていた。

(母上には母上の悩みがあったんだなぁ。俺は浅慮だった)

 バルバロイに嫁ぐこと。それが母上にとってどれほど重かったのか……
 
(ジュンヤに会いたい)

 早足で自室へ向かい、ドアを開けるとそこには着替えてリラックスしたジュンヤがいて、俺を見て微笑んだ。

「おかえり! チェリフ様はなんだって?」

 細い腰を抱き寄せて、髪に顔を埋める。

「なんだよ? やっぱり怒られたのか?」
「少しだけ注意されただけだ、大丈夫」

 俺の背中に手を回し優しく撫でてくれるジュンヤの手から、温かい力が流れ込んでくる。けがも何もしていない時に流される浄化は、ひたすら温かく優しいのだと知った。無意識に俺を癒そうとしているのが嬉しくて愛しくてたまらない。

「ジュンヤ……明日から、各所に二人で挨拶回りをしに行く。でも、今日は何も用がないんだ」
「そうなんだ? じゃあ……できる?」
「ああ、やっとベッドで抱ける」

 ジュンヤを抱き上げてベッドへ雪崩れ込む。

「ふふっ、逃げないからがっつくなよ」
「我慢したんだから、褒美をくれ」

 耐えきれずに口付けて舌をジュンヤの中に滑り込ませた。甘い滴から力が俺の中にじん……と染み渡る様だ。

「んっ……はぁ、ああ……」

 官能的な吐息に、愛しさが込み上げる。ジュンヤの蜜色の首筋に口付けると、ふわりと花の香りがする。舌を這わせながら、細い体をゆっくりと愛撫すると、その香りが徐々に濃く、そして誘う様な香りになって鼻腔をくすぐる。

(優しくしたい……時間をかけて、じっくりと愛を確かめ合いたい)

 俺はゆっくり愛し合うチャンスが少なかったせいか、夢中になって次の日に腰が立たないほど貪っちまう。

 だが、領内にいる今は、俺は護衛じゃない……

「ん、脱ぐ……」
「やらせてくれ」

 首筋に一つ花を散らして、ゆっくりとシルクのシャツを脱がせる。薔薇色に色づいた尖りは、既にツンと立ち上っていた。

 ちゅっ……ちゅっ……ぴちゃ……

 わざと音を立ててキスをして舌で転がすと、艶かしく身悶える。

(俺に与えられた奇跡だ)

 信仰は薄い方だった。だが、俺は初めてメイリル神に心から感謝をした。

(あなたがもたらしてくれた伴侶を、生涯愛して守ります)

 熱い吐息で見上げるジュンヤは、俺のシャツに手をかけた。

「なぁ、あんたの体、早く見たい……」

 俺の伴侶は、簡単に俺の理性を吹っ飛ばす。

 乱暴に服を剥ぎ取り脱ぎ捨てて、結局のところジュンヤを貪る獣になる——
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

継母の心得

トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】 ※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。 山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。 治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。 不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!? 前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった! 突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。 オタクの知識を使って、子育て頑張ります!! 子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です! 番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

(完結)私はあなた方を許しますわ(全5話程度)

青空一夏
恋愛
 従姉妹に夢中な婚約者。婚約破棄をしようと思った矢先に、私の死を望む婚約者の声をきいてしまう。  だったら、婚約破棄はやめましょう。  ふふふ、裏切っていたあなた方まとめて許して差し上げますわ。どうぞお幸せに!  悲しく切ない世界。全5話程度。それぞれの視点から物語がすすむ方式。後味、悪いかもしれません。ハッピーエンドではありません!

異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo
BL
俺がゲイだと自覚したのは、高校生の時だった。中学生までは女性と付き合っていたのだが、高校生になると、「なんか違うな」と感じ始めた。ネットで調べた結果、自分がいわゆるゲイなのではないかとの結論に至った。同級生や友人のことを好きになるも、それを伝える勇気が出なかった。 そうこうしているうちに、俺にはカミングアウトをする勇気がなく、こうして三十歳までゲイであることを隠しながら独身のままである。周りからはなぜ結婚しないのかと聞かれるが、その追及を気持ちを押し殺しながら躱していく日々。俺は幸せになれるのだろうか………。 そんな日々の中、襲われている女性を助けようとして、腹部を刺されてしまった。そして、同性婚が認められる、そんな幸せな世界への転生を祈り静かに息を引き取った。 気が付くと、病弱だが高スペックな身体、アース・ジーマルの体に転生した。病弱が理由で思うような生活は送れなかった。しかし、それには理由があって………。 それから、偶然一人の少年の出会った。一目見た瞬間から恋に落ちてしまった。その少年は、この国王子でそして、俺は側近になることができて………。 魔法と剣、そして貴族院など王道ファンタジーの中にBL要素を詰め込んだ作品となっております。R指定は本当の最後に書く予定なので、純粋にファンタジーの世界のBL恋愛(両片思い)を楽しみたい方向けの作品となっております。この様な作品でよければ、少しだけでも目を通していただければ幸いです。 GW明けからは、週末に投稿予定です。よろしくお願いいたします。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

私の婚約者には、それはそれは大切な幼馴染がいる

下菊みこと
恋愛
絶対に浮気と言えるかは微妙だけど、他者から見てもこれはないわと断言できる婚約者の態度にいい加減決断をしたお話。もちろんざまぁ有り。 ロザリアの婚約者には大切な大切な幼馴染がいる。その幼馴染ばかりを優先する婚約者に、ロザリアはある決心をして証拠を固めていた。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄をしたいので悪役令息になります

久乃り
BL
ほげほげと明るいところに出てきたら、なんと前世の記憶を持ったまま生まれ変わっていた。超絶美人のママのおっぱいを飲めるなんて幸せでしかありません。なんて思っていたら、なんとママは男! なんとこの世界、男女比が恐ろしく歪、圧倒的女性不足だった。貴族は魔道具を使って男同士で結婚して子を成すのが当たり前と聞かされて絶望。更に入学前のママ友会で友だちを作ろうとしたら何故だか年上の男の婚約者が出来ました。 そしてなんと、中等部に上がるとここが乙女ゲームの世界だと知ってしまう。それならこの歪な男女比も納得。主人公ちゃんに攻略されて?婚約破棄されてみせる!と頑張るセレスティンは主人公ちゃんより美人なのであった。 注意:作者的にR15と思う箇所には※をつけています。

【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ…… リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。 ⭐︎2023.4.24完結⭐︎ ※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。  →2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。