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おっさんと再会
ツッコミ
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冷たいものが当てられている感覚がある。
足先から徐々に上に、少しずつ登っていく。
「……ん……んん?」
目を開けると、ルーエが俺を覗き込むように見ていた。
「起きたぞ! 大丈夫かジオ!」
「あ……ああ……? どうして俺、寝てるんだ?」
どうして寝ているのか、というのもそうだし、自分の身体が濡れていないのも、それどころか天井まである。
よくよく目を凝らしてみると、ここは月ノ庵の部屋だ。
「お館様はのぼせてしまったのです」
ふいに足元の方から声が聞こえた。
視線を向けると、ミヤが俺の足に冷えたタオルを当てている。
「そういうことか……」
情けないが間違いないだろう。
俺はミヤの姿を見て、過去に思いを馳せるあまりにのぼせてしまったのだ。
そして、ルーエとミヤは二人がかりで俺を部屋に運んでくれた。
「あぁ、心配しなくとも、ジオはテレポートで運んだとも」
「連れてきてくれたのはありがたいけど、座標もよくわかってないのにやめてもらえるかな!?」
湯で溺れるどころか床に溺れてしまう。
「……と、そうじゃなくて」
いけないいけない。
ツッコむことに意識を持っていかれて、危うく本筋を忘れるところだった。
「その前にこちらをどうぞ」
「あ、ありがとう」
ミヤがぬるい水を渡してくれる。
ちょうど喉が渇いていたところだ。
勢いよく飲み干して、もう一度疑問を解決しようと試みる。
「起きあがりますか? でしたら背もたれ付きの座椅子を」
「悪いね」
普通……というか立っている椅子に背もたれがついているのは当たり前だが、足を伸ばして座れるものにも背もたれが……。
見た目は少しおかしいが、実際に使ってみると思いの外心地が良い。
ではなくて。
「どうしてミヤがここにいるんだ?」
そのままの意味だ。
突然現れたと思えば、行き届いた気配りで落ち着かせてくれる。
こちらからしたら極めて自然な問いだと思うのだが、ミヤは心底不思議そうに目を開き、首を傾げながら言った。
「どうしても何も、花嫁修行も終わりましたので成果を見せる時かと」
「……花嫁修行?」
言葉の意味自体は知っている。
なんでも、女性が結婚する前にさまざまな作法を学び、妻として夫を支えるための糧とするらしい。
だが、それが俺の前に現れた意味に繋がっているとは思えない。
もちろん、かつての教え子が会いにきてくれるのは嬉しいけどな。
その中でも、別れの余韻などないような風に出ていってしまったミヤだからこそ、気になるのだ。
「いずれお館様が山から出られるのは分かっていましたから。その時、他の競合に負けぬよう、ミヤは学んだのです。えっへん」
「えっへんって……」
つまり、彼女の言っていることを自惚れなしに判断すると、俺の伴侶になるために修行していたというのか?
それはまぁ、嬉しくはあるんだが、どうしても年齢や関係性が邪魔をしてしまうだろう。
第一、子供の頃から知っている相手に恋愛的な感情を覚える気は……こんなことを偉そうに言えるほど経験はなかったな。
「当然、お館様のお考えは承知しています。なので、今後は私が身の回りの世話をして――」
「まぁ待て小娘。隣に私がいるのが目に入らないか? その髪型は視界を狭めるのか?」
「そのようです。失礼しました」
毎度のことながら、話がややこしくなりそうなタイミングでルーエが乱入してくる。
二人はしばらく言葉を交わし合っていたが、何故か最終的に固い握手をしていた。
その姿はまるで、国と国のお偉いさんが同盟を結んでいるかのような大々的なもので、会話の内容を聞いていなかったにも関わらず危険を感じる。
「ま、まぁとりあえず積もる話は後にしようか。夕食もこれからだし」
「お立ちの際はミヤの手を」
「悪いね」
本当に、ほしいタイミングで助けが飛んでくるな。
俺の考えを心で理解していると伝わってくる。
これはまるで夫――。
「……介護か?」
「違うわ!」
今日一番の鋭いツッコミが炸裂した。
足先から徐々に上に、少しずつ登っていく。
「……ん……んん?」
目を開けると、ルーエが俺を覗き込むように見ていた。
「起きたぞ! 大丈夫かジオ!」
「あ……ああ……? どうして俺、寝てるんだ?」
どうして寝ているのか、というのもそうだし、自分の身体が濡れていないのも、それどころか天井まである。
よくよく目を凝らしてみると、ここは月ノ庵の部屋だ。
「お館様はのぼせてしまったのです」
ふいに足元の方から声が聞こえた。
視線を向けると、ミヤが俺の足に冷えたタオルを当てている。
「そういうことか……」
情けないが間違いないだろう。
俺はミヤの姿を見て、過去に思いを馳せるあまりにのぼせてしまったのだ。
そして、ルーエとミヤは二人がかりで俺を部屋に運んでくれた。
「あぁ、心配しなくとも、ジオはテレポートで運んだとも」
「連れてきてくれたのはありがたいけど、座標もよくわかってないのにやめてもらえるかな!?」
湯で溺れるどころか床に溺れてしまう。
「……と、そうじゃなくて」
いけないいけない。
ツッコむことに意識を持っていかれて、危うく本筋を忘れるところだった。
「その前にこちらをどうぞ」
「あ、ありがとう」
ミヤがぬるい水を渡してくれる。
ちょうど喉が渇いていたところだ。
勢いよく飲み干して、もう一度疑問を解決しようと試みる。
「起きあがりますか? でしたら背もたれ付きの座椅子を」
「悪いね」
普通……というか立っている椅子に背もたれがついているのは当たり前だが、足を伸ばして座れるものにも背もたれが……。
見た目は少しおかしいが、実際に使ってみると思いの外心地が良い。
ではなくて。
「どうしてミヤがここにいるんだ?」
そのままの意味だ。
突然現れたと思えば、行き届いた気配りで落ち着かせてくれる。
こちらからしたら極めて自然な問いだと思うのだが、ミヤは心底不思議そうに目を開き、首を傾げながら言った。
「どうしても何も、花嫁修行も終わりましたので成果を見せる時かと」
「……花嫁修行?」
言葉の意味自体は知っている。
なんでも、女性が結婚する前にさまざまな作法を学び、妻として夫を支えるための糧とするらしい。
だが、それが俺の前に現れた意味に繋がっているとは思えない。
もちろん、かつての教え子が会いにきてくれるのは嬉しいけどな。
その中でも、別れの余韻などないような風に出ていってしまったミヤだからこそ、気になるのだ。
「いずれお館様が山から出られるのは分かっていましたから。その時、他の競合に負けぬよう、ミヤは学んだのです。えっへん」
「えっへんって……」
つまり、彼女の言っていることを自惚れなしに判断すると、俺の伴侶になるために修行していたというのか?
それはまぁ、嬉しくはあるんだが、どうしても年齢や関係性が邪魔をしてしまうだろう。
第一、子供の頃から知っている相手に恋愛的な感情を覚える気は……こんなことを偉そうに言えるほど経験はなかったな。
「当然、お館様のお考えは承知しています。なので、今後は私が身の回りの世話をして――」
「まぁ待て小娘。隣に私がいるのが目に入らないか? その髪型は視界を狭めるのか?」
「そのようです。失礼しました」
毎度のことながら、話がややこしくなりそうなタイミングでルーエが乱入してくる。
二人はしばらく言葉を交わし合っていたが、何故か最終的に固い握手をしていた。
その姿はまるで、国と国のお偉いさんが同盟を結んでいるかのような大々的なもので、会話の内容を聞いていなかったにも関わらず危険を感じる。
「ま、まぁとりあえず積もる話は後にしようか。夕食もこれからだし」
「お立ちの際はミヤの手を」
「悪いね」
本当に、ほしいタイミングで助けが飛んでくるな。
俺の考えを心で理解していると伝わってくる。
これはまるで夫――。
「……介護か?」
「違うわ!」
今日一番の鋭いツッコミが炸裂した。
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