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おっさんと再会
再会
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眉の下でまっすぐ切り揃えられ、ミステリアスな雰囲気を漂わせる前髪。
一部の乱れもなく、引き込まれそうな黒い髪は、一つの芸術作品のような神聖さを感じさせた。
指2~3本分の幅、耳の下ほどの丈の、前髪と同じように平面に切り揃えられた髪がサイドにかかっていて、後ろ髪は背中まで伸びている。
あまり見ない髪型だが、なんとも古風な奥ゆかしさというか、三歩後ろに下がって自分を見守ってくれそうな安心感。
また、カグヤノムラの人々が身につけている「キモノ」を着こなしていて、黒と白の線が交互に入り、赤と白の花が咲き乱れた柄が、儚げな印象を与えてくる。
視線を前方に戻すと、切れ長の目が俺を射貫かんばかりに見つめていた。
なぜ、俺のことを穴が空くほど見つめているのか。
ほんの一瞬、そんなことを考えていたが、紙を水に浸していくように、徐々に過去の記憶が蘇ってくる。
「……もしかして、ミヤか?」
鋭い瞳は、ともすれば近寄りがたいと思わせてしまいそうなところがあるが、その印象とは真逆に、パッと花が咲くような顔になる。
「お久しぶりです、ジオ様。幼き頃にあなた様に拾っていただき、たくさんの愛をいただき、生きていくことの喜びを教えていただいたミヤでございます」
こちらを覗き込むように、ニコリと笑う。
どれだけの警戒心であっても解かれてしまいそうなその仕草を見て、俺は彼女との思い出を蘇らせた。
・
「…………人の気配か?」
手に持っていたクワを、近くの木に立てかける。
まだ早朝……5時くらいだった気がする。
この山で保護し、一人で生きていけるように育てている子どもたちは、ある者は数時間かけて髪型を整えていたり、ある者は勉学に励んでいたり、またある者は爆睡を決め込んでいたり、十人十色の朝を過ごしている。
だが、俺に関しては毎日同じルーティン。
畑を耕し、野菜を育てるという日課を行う時間だ。
もはや何も考えずとも身体は動き、疲れよりも身体が覚醒していく感覚が気持ち良くもあるのだが――。
そんな時、山の中腹部分に人の気配を感じたのだ。
近頃は子供が捨てられることがなくなってきたと安心していたのに。
新種の魔物が、人間のそれに似た発信をしているのであれば良いが、どうにも嫌な予感がする。
俺は子供達に一声かけて、目的地に向かって走り出した。
・
途中、何体かの魔物を撃退した。
おそらく寝起きで機嫌が悪いのだろう、自分より小さい生き物を見るや否や、これ幸いとばかりに襲いかかってきたのだ。
確かに、朝のうちにその日の食事を確保できるとあらば、寝ぼけ眼をこするだろう。
だが、俺にはそんな時間はない。
殺さないように、だけどしばらく動けなくなるくらいの力加減で魔物を打ちのめしていった。
そうして、気配が湧き出た地点に到達したのだが……。
「……いないな」
どこにも人間の姿が見当たらない。
いや、正確に言えば、人間の発する信号が散乱しているのだ。
いないように見えるが、反応はそこら中にある。
もしかすると撹乱の魔術を使えるのかもしれないが、これはかなり高度なものだ。
見つけてやろうと、デカい岩を持ち上げ、絨毯のように敷き詰められている葉を吹き飛ばしてみるが、いない。
「もしかして……ここか?」
最後に残ったのは、一本の大きな木だった。
見た目自体は他のものと変わらないが、なぜか中に何かあるような、確信はなくとも正解だと思っていた。
長い年月をかけて、ここまで成長してくれた木に痛みを与えるのはしのびないが、心当たりは一つしかない。
申し訳ない気持ちを抑えて、中身を傷つけないように外側から木を削っていくと――。
「――まじでか」
木の中に丸い空間をあけて、子供がぐっすりと眠っていた。
一部の乱れもなく、引き込まれそうな黒い髪は、一つの芸術作品のような神聖さを感じさせた。
指2~3本分の幅、耳の下ほどの丈の、前髪と同じように平面に切り揃えられた髪がサイドにかかっていて、後ろ髪は背中まで伸びている。
あまり見ない髪型だが、なんとも古風な奥ゆかしさというか、三歩後ろに下がって自分を見守ってくれそうな安心感。
また、カグヤノムラの人々が身につけている「キモノ」を着こなしていて、黒と白の線が交互に入り、赤と白の花が咲き乱れた柄が、儚げな印象を与えてくる。
視線を前方に戻すと、切れ長の目が俺を射貫かんばかりに見つめていた。
なぜ、俺のことを穴が空くほど見つめているのか。
ほんの一瞬、そんなことを考えていたが、紙を水に浸していくように、徐々に過去の記憶が蘇ってくる。
「……もしかして、ミヤか?」
鋭い瞳は、ともすれば近寄りがたいと思わせてしまいそうなところがあるが、その印象とは真逆に、パッと花が咲くような顔になる。
「お久しぶりです、ジオ様。幼き頃にあなた様に拾っていただき、たくさんの愛をいただき、生きていくことの喜びを教えていただいたミヤでございます」
こちらを覗き込むように、ニコリと笑う。
どれだけの警戒心であっても解かれてしまいそうなその仕草を見て、俺は彼女との思い出を蘇らせた。
・
「…………人の気配か?」
手に持っていたクワを、近くの木に立てかける。
まだ早朝……5時くらいだった気がする。
この山で保護し、一人で生きていけるように育てている子どもたちは、ある者は数時間かけて髪型を整えていたり、ある者は勉学に励んでいたり、またある者は爆睡を決め込んでいたり、十人十色の朝を過ごしている。
だが、俺に関しては毎日同じルーティン。
畑を耕し、野菜を育てるという日課を行う時間だ。
もはや何も考えずとも身体は動き、疲れよりも身体が覚醒していく感覚が気持ち良くもあるのだが――。
そんな時、山の中腹部分に人の気配を感じたのだ。
近頃は子供が捨てられることがなくなってきたと安心していたのに。
新種の魔物が、人間のそれに似た発信をしているのであれば良いが、どうにも嫌な予感がする。
俺は子供達に一声かけて、目的地に向かって走り出した。
・
途中、何体かの魔物を撃退した。
おそらく寝起きで機嫌が悪いのだろう、自分より小さい生き物を見るや否や、これ幸いとばかりに襲いかかってきたのだ。
確かに、朝のうちにその日の食事を確保できるとあらば、寝ぼけ眼をこするだろう。
だが、俺にはそんな時間はない。
殺さないように、だけどしばらく動けなくなるくらいの力加減で魔物を打ちのめしていった。
そうして、気配が湧き出た地点に到達したのだが……。
「……いないな」
どこにも人間の姿が見当たらない。
いや、正確に言えば、人間の発する信号が散乱しているのだ。
いないように見えるが、反応はそこら中にある。
もしかすると撹乱の魔術を使えるのかもしれないが、これはかなり高度なものだ。
見つけてやろうと、デカい岩を持ち上げ、絨毯のように敷き詰められている葉を吹き飛ばしてみるが、いない。
「もしかして……ここか?」
最後に残ったのは、一本の大きな木だった。
見た目自体は他のものと変わらないが、なぜか中に何かあるような、確信はなくとも正解だと思っていた。
長い年月をかけて、ここまで成長してくれた木に痛みを与えるのはしのびないが、心当たりは一つしかない。
申し訳ない気持ちを抑えて、中身を傷つけないように外側から木を削っていくと――。
「――まじでか」
木の中に丸い空間をあけて、子供がぐっすりと眠っていた。
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