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おっさんと和の村
温泉
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庭を堪能した俺たちは、宿の中を散策してみることにした。
部屋に案内される時に温泉もあると聞いていたから、それを見つけることが一応の目的だ。
まぁ、結果から言うと温泉は一階の、部屋から見えていた庭の近くにあり、夕食までまだ時間があるということで、先に利用することに決めた。
一度部屋に戻り、タオルや着替えを持って温泉に向かう。
「……ほう。知っているかジオ?」
「何が?」
更衣室は男女別々であり、ルーエに挨拶して入ろうと思ったのだが、呼び止められる。
「どうやら宿の温泉には二種類あって、夫婦用の混浴があるらしい」
「……それで?」
俺が首を傾げているのが気に食わないのか、ため息を吐かれてしまった。
「もちろん二人で入るだろう?」
「いやいやいや、別々でいいよ」
即答するも、こういう時のルーエは頑固で俺の話を聞いてくれない。
だが、これでも彼女の傾向は多少なりとも理解しているつもりだ。
どうにもならない状況なら諦めてくれるのだ。
「ほら、こういうのって事前に宿の人に伝えておかないといけないと思うよ。いきなり言っても用意に時間がかかると思うし――」
「物は試しだ。私が聞いてくるから待っててくれ」
「え、ちょっと……」
堂々とした足取りで歩いていく姿を見て、なぜか嫌な予感がした。
・
「おお、これが露天風呂というやつか! 野外に風呂を設置するとは不埒な気もするが、開放感があるな!」
「うん、そうだね……」
この村の人々はサービス精神に溢れているのだ。
消えていったルーエだが、すぐに満足そうな顔で、同じくニコニコとした従業員と戻ってきた。
ということで、あれよあれよと混浴の……というか風呂の清掃なりが進められ、裸の二人が立っているのだ。
「そら、身体を流したら湯に浸かるとしよう」
置いてあった桶で湯を掬い、身体を軽く流すと、いよいよ入浴だ。
湯の温度はなかなかに高く、足の先から徐々に、熱さに慣れていくように浸かっていく。
ゆっくりと腰を下ろして隣を見ると、同じようにルーエと目が合った。
「いい湯だな」
頷く。
夕暮れ時、灯りも控えめということもあって、お互いの姿はあまり見えていないはず。
しかし、煌々とした月明かりに照らされた彼女の肌は白く、月にも負けない美しさで、柔らかい湯が肌を伝う様子に、思わず目を逸らしてしまう。
そんな俺を面白がって、ルーエがちょっかいをかけてくるものだから、どうにかして気を逸らそうと周囲を見回す。
両手で持てるくらいの大きさの石を並べて作られている温泉。
微かに見える庭園の植物。
少しかけていて、あと何日かすれば綺麗に丸くなるであろう月。
……そうだ。
「確か、カグヤノムラの有名なお酒が飲めるんだよね」
「そうなのか?」
危機的な状況でこそ閃きは訪れるものだ。
またもや冊子に記されていた情報を思い起こす。
カグヤノムラには、原料米を使って造られた醸造酒があるらしい。
俺の知っている酒とはまた一味違った特徴があるらしく、是非とも飲んでみたいと思っていたのだ。
そして、この温泉では、湯に木の盆を浮かべてその上に酒を置き、味わうことができるらしい。
「ルーエも気になるだろ? 露天風呂で呑む酒は格別だぞ?」
「確かに、少し気になるかもしれないな。……だが、ここには誰もいないぞ。湯から上がって、身体を拭いて、それで受付に伝えに行くのか?」
彼女の言いたいことはわかる。
今から酒をもらいに行くのは面倒だから、このまま自分と一緒にいようということだ。
だが、このままでは妙に早い心臓の鼓動に負けてしまいそうだ。
何か方法はないものか……。
「それでしたら、こちらにご用意してあります」
「……え?」
先ほどまで、温泉には俺たち以外、誰もいなかったはずだ。
突如として後方から聞こえた声。
振り返ると――。
部屋に案内される時に温泉もあると聞いていたから、それを見つけることが一応の目的だ。
まぁ、結果から言うと温泉は一階の、部屋から見えていた庭の近くにあり、夕食までまだ時間があるということで、先に利用することに決めた。
一度部屋に戻り、タオルや着替えを持って温泉に向かう。
「……ほう。知っているかジオ?」
「何が?」
更衣室は男女別々であり、ルーエに挨拶して入ろうと思ったのだが、呼び止められる。
「どうやら宿の温泉には二種類あって、夫婦用の混浴があるらしい」
「……それで?」
俺が首を傾げているのが気に食わないのか、ため息を吐かれてしまった。
「もちろん二人で入るだろう?」
「いやいやいや、別々でいいよ」
即答するも、こういう時のルーエは頑固で俺の話を聞いてくれない。
だが、これでも彼女の傾向は多少なりとも理解しているつもりだ。
どうにもならない状況なら諦めてくれるのだ。
「ほら、こういうのって事前に宿の人に伝えておかないといけないと思うよ。いきなり言っても用意に時間がかかると思うし――」
「物は試しだ。私が聞いてくるから待っててくれ」
「え、ちょっと……」
堂々とした足取りで歩いていく姿を見て、なぜか嫌な予感がした。
・
「おお、これが露天風呂というやつか! 野外に風呂を設置するとは不埒な気もするが、開放感があるな!」
「うん、そうだね……」
この村の人々はサービス精神に溢れているのだ。
消えていったルーエだが、すぐに満足そうな顔で、同じくニコニコとした従業員と戻ってきた。
ということで、あれよあれよと混浴の……というか風呂の清掃なりが進められ、裸の二人が立っているのだ。
「そら、身体を流したら湯に浸かるとしよう」
置いてあった桶で湯を掬い、身体を軽く流すと、いよいよ入浴だ。
湯の温度はなかなかに高く、足の先から徐々に、熱さに慣れていくように浸かっていく。
ゆっくりと腰を下ろして隣を見ると、同じようにルーエと目が合った。
「いい湯だな」
頷く。
夕暮れ時、灯りも控えめということもあって、お互いの姿はあまり見えていないはず。
しかし、煌々とした月明かりに照らされた彼女の肌は白く、月にも負けない美しさで、柔らかい湯が肌を伝う様子に、思わず目を逸らしてしまう。
そんな俺を面白がって、ルーエがちょっかいをかけてくるものだから、どうにかして気を逸らそうと周囲を見回す。
両手で持てるくらいの大きさの石を並べて作られている温泉。
微かに見える庭園の植物。
少しかけていて、あと何日かすれば綺麗に丸くなるであろう月。
……そうだ。
「確か、カグヤノムラの有名なお酒が飲めるんだよね」
「そうなのか?」
危機的な状況でこそ閃きは訪れるものだ。
またもや冊子に記されていた情報を思い起こす。
カグヤノムラには、原料米を使って造られた醸造酒があるらしい。
俺の知っている酒とはまた一味違った特徴があるらしく、是非とも飲んでみたいと思っていたのだ。
そして、この温泉では、湯に木の盆を浮かべてその上に酒を置き、味わうことができるらしい。
「ルーエも気になるだろ? 露天風呂で呑む酒は格別だぞ?」
「確かに、少し気になるかもしれないな。……だが、ここには誰もいないぞ。湯から上がって、身体を拭いて、それで受付に伝えに行くのか?」
彼女の言いたいことはわかる。
今から酒をもらいに行くのは面倒だから、このまま自分と一緒にいようということだ。
だが、このままでは妙に早い心臓の鼓動に負けてしまいそうだ。
何か方法はないものか……。
「それでしたら、こちらにご用意してあります」
「……え?」
先ほどまで、温泉には俺たち以外、誰もいなかったはずだ。
突如として後方から聞こえた声。
振り返ると――。
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