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エピローグ
会議
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暗い部屋。
真っ暗闇といえるほどの環境では、空間がどのくらいの広さなのかわからない。
ただ、部屋の中央であろう場所には白い灯りが一つ灯っていて、それによって一つの円卓が確認できた。
光を囲むようにして座っているのは、6人の人型の生物。
「……ふむ。ナイトリッチがやられたか」
6人のうちの一人、大人びて落ち着いた男の声が響き渡る。
「計画も上手くいかなかったようだな」
「全く残念なことだ」
一人目を皮切りとして、円卓を囲む面々が続々と口を開く。
依然として姿は朧げで、全員が男……それなりの年齢であることしかわからない。
「まぁ良い。同士が一人減ったとはいえ、ナイトリッチは我らの中でも――」
最も年老いた声。
ナイトリッチを評価しようとして、その声が数秒止まる。
「……あいつ、かなり強くなかった?」
各々唸る。
「確かに、個人的な戦闘力だけなら俺たちの中で真ん中くらいだが、総合力で言えば……かなり上だった」
相手が相手だったことや、急いでいたこともあって個人的な実力を見せることはできなかったが、ナイトリッチはかなりの猛者だった。
魔術の腕のみならず、肉弾戦でもやりあえる屈強な身体を持っていた。
「野心もあったし社交的だったし、そもそもあの国の貴族じゃないのに『俺、昔からいましたけど?』みたいな顔してたもんな」
「いやそれ、マジでどうなってんのあれ」
本当のところ、ナイトリッチはケンフォード王国の貴族ではなかった。
王国に潜り込み始めたのはエドワードが即位するより前で、持ち前の余裕のある態度とオーラで悠々と貴族に紛れ込み、口からの出まかせだけで貴族名鑑に載ってしまったのだ。
「てか、顔面が良いのが一番の武器だったよな、あいつ」
「わかる~。あのイケオジさはやばかったわ。俺もたまにときめいたもん」
「煙草吸う時のセクシーさな!」
男たちは、今は亡き同胞の思い出話に花を咲かせていた。
それが小一時間ほど続いた後、本題を思い出したかのように咳払いをする。
「相手はあの、ジオ・プライムらしいな」
「いやはや、魔王を倒したとは聞いていたがそこまでの強さとは」
「……あいつがいる限り、俺たちの計画が成功することはないんじゃないか?」
「うーん、確かに」
「でも、逆に考えればジオ・プライムさえどうにかなればいいんだよな?」
「それも確かに」
「偵察に出していた使い魔によると、ヤツの教え子くらいなら倒せるようだったしな」
「ってことは、あのおっさんさえ無力化できれば俺たちの目的も……」
「お前もおっさんだろ。つーか全員おっさんだろ、俺たち」
「まぁね? なんなら爺さんもいるしな」
「正面からやって勝てる気はしないし、策を考えないと」
「はいはい、一回静かに!」
年老いた声が、拍手と共に静寂を呼び戻す。
「……とりあえずジオ・プライムについては一旦保留で。正攻法で勝てないなら抜け道を見つけるってことで」
賛成、という言葉が浮かんでくる。
「我らはあくまで、今ある体制を利用して世界を支配しようという理念のもとに集っているわけだ。もっと知的な戦い方をしていこうじゃないか」
力強い、確かに、という声。
「それが我ら『オールド・ツヴァイ・サン』だ」
各所から薄気味悪い笑い声が漏れてくる。
悪魔が、次は誰を地獄へ引き摺り込もうかとほくそ笑んでいるようなものだった。
「……はい。じゃあ今日の集会はここまでで。はぁ疲れた」
「この後飲みに行く?」
「いいね。最近腰が痛くてあんまり出歩いてなくてさぁ」
「俺は計画の準備があるからパスで」
「マジか! お前のジョーク、楽しみにしてたんだけどなぁ」
「まぁまぁ、また新しいの考えとくからさ」
灯りが消え、声が消え、暗闇だけが残った。
真っ暗闇といえるほどの環境では、空間がどのくらいの広さなのかわからない。
ただ、部屋の中央であろう場所には白い灯りが一つ灯っていて、それによって一つの円卓が確認できた。
光を囲むようにして座っているのは、6人の人型の生物。
「……ふむ。ナイトリッチがやられたか」
6人のうちの一人、大人びて落ち着いた男の声が響き渡る。
「計画も上手くいかなかったようだな」
「全く残念なことだ」
一人目を皮切りとして、円卓を囲む面々が続々と口を開く。
依然として姿は朧げで、全員が男……それなりの年齢であることしかわからない。
「まぁ良い。同士が一人減ったとはいえ、ナイトリッチは我らの中でも――」
最も年老いた声。
ナイトリッチを評価しようとして、その声が数秒止まる。
「……あいつ、かなり強くなかった?」
各々唸る。
「確かに、個人的な戦闘力だけなら俺たちの中で真ん中くらいだが、総合力で言えば……かなり上だった」
相手が相手だったことや、急いでいたこともあって個人的な実力を見せることはできなかったが、ナイトリッチはかなりの猛者だった。
魔術の腕のみならず、肉弾戦でもやりあえる屈強な身体を持っていた。
「野心もあったし社交的だったし、そもそもあの国の貴族じゃないのに『俺、昔からいましたけど?』みたいな顔してたもんな」
「いやそれ、マジでどうなってんのあれ」
本当のところ、ナイトリッチはケンフォード王国の貴族ではなかった。
王国に潜り込み始めたのはエドワードが即位するより前で、持ち前の余裕のある態度とオーラで悠々と貴族に紛れ込み、口からの出まかせだけで貴族名鑑に載ってしまったのだ。
「てか、顔面が良いのが一番の武器だったよな、あいつ」
「わかる~。あのイケオジさはやばかったわ。俺もたまにときめいたもん」
「煙草吸う時のセクシーさな!」
男たちは、今は亡き同胞の思い出話に花を咲かせていた。
それが小一時間ほど続いた後、本題を思い出したかのように咳払いをする。
「相手はあの、ジオ・プライムらしいな」
「いやはや、魔王を倒したとは聞いていたがそこまでの強さとは」
「……あいつがいる限り、俺たちの計画が成功することはないんじゃないか?」
「うーん、確かに」
「でも、逆に考えればジオ・プライムさえどうにかなればいいんだよな?」
「それも確かに」
「偵察に出していた使い魔によると、ヤツの教え子くらいなら倒せるようだったしな」
「ってことは、あのおっさんさえ無力化できれば俺たちの目的も……」
「お前もおっさんだろ。つーか全員おっさんだろ、俺たち」
「まぁね? なんなら爺さんもいるしな」
「正面からやって勝てる気はしないし、策を考えないと」
「はいはい、一回静かに!」
年老いた声が、拍手と共に静寂を呼び戻す。
「……とりあえずジオ・プライムについては一旦保留で。正攻法で勝てないなら抜け道を見つけるってことで」
賛成、という言葉が浮かんでくる。
「我らはあくまで、今ある体制を利用して世界を支配しようという理念のもとに集っているわけだ。もっと知的な戦い方をしていこうじゃないか」
力強い、確かに、という声。
「それが我ら『オールド・ツヴァイ・サン』だ」
各所から薄気味悪い笑い声が漏れてくる。
悪魔が、次は誰を地獄へ引き摺り込もうかとほくそ笑んでいるようなものだった。
「……はい。じゃあ今日の集会はここまでで。はぁ疲れた」
「この後飲みに行く?」
「いいね。最近腰が痛くてあんまり出歩いてなくてさぁ」
「俺は計画の準備があるからパスで」
「マジか! お前のジョーク、楽しみにしてたんだけどなぁ」
「まぁまぁ、また新しいの考えとくからさ」
灯りが消え、声が消え、暗闇だけが残った。
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