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コーラス遺跡都市防略
第46話コーラル防略、25/持たざる者達の理想郷について/二つの影
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"ギフト"
それは、第六感の延長線上に位置する"第七感"
と言っても差し支えない。だが、"第六感の延長線上"と言うことはつまり"第六感があればギフトに辿り着く事はできない"と言う事だ。
人の過去への思いに、考えに、精神に、ギフトは呼応しその発動権を自身の過去の在り方やその能力について考え思い続ける者に与える。
しかし、能力を持たぬ者達が生と死の間、確かにそれを願った時、"それ"が開かれる。
持たざる者達の願った末路と理想郷"、"持たざる者達ギフトへの扉"___
___"ポイントアヴァロン"が。
~~~
デイビッドとハイミルナンに迫る5本の灰の槍。それの内1本はハイミルナンへ、残りの4本はデイビッドへ向かって飛翔する。
ギフトを獲得した自身への攻撃が手薄であることにハイミルナンは違和感を覚え、あることに勘付いた。
(確実に仕留めたいのか…それはつまり余裕が無いって事かしら…!?)
途端、ハイミルナンは体をデイビッドの正面に投げ出す。
「ハ、ハイミルナン!?」
「その足の傷、あんたもうまともに回避できないんでしょ?」
デイビッドが驚くのも無理はない。
いくらギフトを持っているとは言えども、いきなり戦友が自身の盾が如く目の前に立たれては心配してしまう。ハイミルナンはパルチザンを再び下段に構え直した。デイビッドは胸の奥のなんとも言えない靄を抑え込みながらバルディッシュから片手を離しを右肩に乗せながら腰を落とし構え直した。
(私だって驚いてるわよ。こんな、自分を投げ出すような動きができるなんて。)
ハイミルナンはデイビッドの驚いた様子を見て、口に出す訳でもないのにそう心の中で言い訳を吐露する。
ハイミルナンの喉元へ迫る1本の灰の槍。
彼女は槍を上へ薙ぎ上げそれを弾き、弾かれた槍は空中で何回も回転しながら徐々に灰の煙となって消えていく。そして、残り4本の灰の槍がデイビッドへ向けてハイミルナンの左を通過しようとしていた。
ハイミルナンはそれを半ば庇うように左へ少し踏み出し2本の槍をパルチザンの穂先で1本を、石突のある下端部で1本、パルチザンを回転させながら弾く。残りの2本はデイビッドのバルディッシュの左薙ぎ払い、右切り上げによって弾かれ、空中にて灰となり風と共に靡き去る。ジンはそれを視認すると、灰刀の翼を空いっぱいに広げた。それは大隊と兵団を壊滅に追い込んだ翼の攻撃___
「初めからこれを狙って…!?」
そう驚くハイミルナンを傍らにデイビッドは辺りを見回し、目に留まったのはアメリナ団長。
デイビッドはハイミルナンに言った。
「早く団長のところに!」
「え?えっと、わかった!」
ハイミルナンはデイビッドの手を引きながら団長の下へ走り始める。
「執行騎士は団長を捕まえると言ってた、だったら団長は殺せない筈だ!」
灰刀の翼は草原の一部を覆い隠し始めていた。
あの大技発動まで、残り数秒と言った所だ。
(いくら再生のギフトと言っても、間に合わない速度で削れば、流石に耐えきれんだろう。)
ジンはそう心の中で思案した。
それはトルミアと言う国の信仰する宗教に弓引く異邦の邪教徒との戦闘から来る物であった。
これまで幾度となく邪教徒と戦闘し、その中にはハイミルナンと似たような再生系のギフトを持つ者もいたのだ。この"高火力で削り殺す"と言った戦法にはそう言ったジンのかつての経験が隠れており、それは確信に繋がった。
ジンはアメリナ団長の下へ走るデイビッドとハイミルナンをその目で捉えた。どうやらジンはデイビッドの思惑が分かっていたようだ。
「まぁ、それの優先度は低いし、良いか。」
草原の一部を覆い隠す灰刀の翼は、徐々にアメリナ団長とデイビッド、ハイミルナンを中心に縮小して言った。
縮小して行く灰刀の翼。
「まさか、団長ごと?!」
デイビッドとハイミルナンは困惑と絶望を抱いた。
「団長を捕まえる事って命令って言ってたじゃんッ!」
デイビッドはそう似合わぬ喚き声を上げる。
だが、無慈悲にも灰刀の翼の縮小は止まらない。二人はより一層足を早め、団長はもはや目と鼻の先にあったがそれは灰刀の翼にも言える事であった。
灰刀の翼は、低く狭く形を変えデイビッド達を包み隠し始める。
空は灰刀に翳り、蛾の鱗粉のように灰が舞い漂う。それは"何処か"冷たく、"何処か"淋しい灰の霧。
「なんかヤバい、なんかヤバい!」
「走れ走れ走れ走れぇッ!」
戦慄するハイミルナン。
そんな彼女を急かしながもひたすらにただ重く、血が滴り落ち続ける脚を必死に上げ動かすデイビッド。
そんな奮闘も虚しく灰刀はデイビッド達を優しく包み込み、覆い隠し、その羽刀は宇宙を裂き、空を裂き、デイビッド達をも裂こうした、その時__________________
___二つの影が、ジンに飛びかかった。
「なるほど、そう来るか。」
ジンは瞬間的に灰刀の翼を解除し右から頭へ迫る戦斧をロッホバーアックスの刃、左から二の腕へ迫る長槍と喉元へ迫るシミターへ灰で作り上げられた大盾を使い、完全に防ぎ切る。
斧刃と穂先、盾と刃と穂先はそれぞれ拮抗し火花を激しく散らす。
「用心深か騎士様じゃことッ!」
シミターと長槍を持つ影はそう叫んだ。
「片手で受けれんのかよ、今の全力の一撃だぞ、おいぃ!」
戦斧を持つもう一つの影はそう叫んだ。
それは、ジャックとヨーストだった。
それは、第六感の延長線上に位置する"第七感"
と言っても差し支えない。だが、"第六感の延長線上"と言うことはつまり"第六感があればギフトに辿り着く事はできない"と言う事だ。
人の過去への思いに、考えに、精神に、ギフトは呼応しその発動権を自身の過去の在り方やその能力について考え思い続ける者に与える。
しかし、能力を持たぬ者達が生と死の間、確かにそれを願った時、"それ"が開かれる。
持たざる者達の願った末路と理想郷"、"持たざる者達ギフトへの扉"___
___"ポイントアヴァロン"が。
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デイビッドとハイミルナンに迫る5本の灰の槍。それの内1本はハイミルナンへ、残りの4本はデイビッドへ向かって飛翔する。
ギフトを獲得した自身への攻撃が手薄であることにハイミルナンは違和感を覚え、あることに勘付いた。
(確実に仕留めたいのか…それはつまり余裕が無いって事かしら…!?)
途端、ハイミルナンは体をデイビッドの正面に投げ出す。
「ハ、ハイミルナン!?」
「その足の傷、あんたもうまともに回避できないんでしょ?」
デイビッドが驚くのも無理はない。
いくらギフトを持っているとは言えども、いきなり戦友が自身の盾が如く目の前に立たれては心配してしまう。ハイミルナンはパルチザンを再び下段に構え直した。デイビッドは胸の奥のなんとも言えない靄を抑え込みながらバルディッシュから片手を離しを右肩に乗せながら腰を落とし構え直した。
(私だって驚いてるわよ。こんな、自分を投げ出すような動きができるなんて。)
ハイミルナンはデイビッドの驚いた様子を見て、口に出す訳でもないのにそう心の中で言い訳を吐露する。
ハイミルナンの喉元へ迫る1本の灰の槍。
彼女は槍を上へ薙ぎ上げそれを弾き、弾かれた槍は空中で何回も回転しながら徐々に灰の煙となって消えていく。そして、残り4本の灰の槍がデイビッドへ向けてハイミルナンの左を通過しようとしていた。
ハイミルナンはそれを半ば庇うように左へ少し踏み出し2本の槍をパルチザンの穂先で1本を、石突のある下端部で1本、パルチザンを回転させながら弾く。残りの2本はデイビッドのバルディッシュの左薙ぎ払い、右切り上げによって弾かれ、空中にて灰となり風と共に靡き去る。ジンはそれを視認すると、灰刀の翼を空いっぱいに広げた。それは大隊と兵団を壊滅に追い込んだ翼の攻撃___
「初めからこれを狙って…!?」
そう驚くハイミルナンを傍らにデイビッドは辺りを見回し、目に留まったのはアメリナ団長。
デイビッドはハイミルナンに言った。
「早く団長のところに!」
「え?えっと、わかった!」
ハイミルナンはデイビッドの手を引きながら団長の下へ走り始める。
「執行騎士は団長を捕まえると言ってた、だったら団長は殺せない筈だ!」
灰刀の翼は草原の一部を覆い隠し始めていた。
あの大技発動まで、残り数秒と言った所だ。
(いくら再生のギフトと言っても、間に合わない速度で削れば、流石に耐えきれんだろう。)
ジンはそう心の中で思案した。
それはトルミアと言う国の信仰する宗教に弓引く異邦の邪教徒との戦闘から来る物であった。
これまで幾度となく邪教徒と戦闘し、その中にはハイミルナンと似たような再生系のギフトを持つ者もいたのだ。この"高火力で削り殺す"と言った戦法にはそう言ったジンのかつての経験が隠れており、それは確信に繋がった。
ジンはアメリナ団長の下へ走るデイビッドとハイミルナンをその目で捉えた。どうやらジンはデイビッドの思惑が分かっていたようだ。
「まぁ、それの優先度は低いし、良いか。」
草原の一部を覆い隠す灰刀の翼は、徐々にアメリナ団長とデイビッド、ハイミルナンを中心に縮小して言った。
縮小して行く灰刀の翼。
「まさか、団長ごと?!」
デイビッドとハイミルナンは困惑と絶望を抱いた。
「団長を捕まえる事って命令って言ってたじゃんッ!」
デイビッドはそう似合わぬ喚き声を上げる。
だが、無慈悲にも灰刀の翼の縮小は止まらない。二人はより一層足を早め、団長はもはや目と鼻の先にあったがそれは灰刀の翼にも言える事であった。
灰刀の翼は、低く狭く形を変えデイビッド達を包み隠し始める。
空は灰刀に翳り、蛾の鱗粉のように灰が舞い漂う。それは"何処か"冷たく、"何処か"淋しい灰の霧。
「なんかヤバい、なんかヤバい!」
「走れ走れ走れ走れぇッ!」
戦慄するハイミルナン。
そんな彼女を急かしながもひたすらにただ重く、血が滴り落ち続ける脚を必死に上げ動かすデイビッド。
そんな奮闘も虚しく灰刀はデイビッド達を優しく包み込み、覆い隠し、その羽刀は宇宙を裂き、空を裂き、デイビッド達をも裂こうした、その時__________________
___二つの影が、ジンに飛びかかった。
「なるほど、そう来るか。」
ジンは瞬間的に灰刀の翼を解除し右から頭へ迫る戦斧をロッホバーアックスの刃、左から二の腕へ迫る長槍と喉元へ迫るシミターへ灰で作り上げられた大盾を使い、完全に防ぎ切る。
斧刃と穂先、盾と刃と穂先はそれぞれ拮抗し火花を激しく散らす。
「用心深か騎士様じゃことッ!」
シミターと長槍を持つ影はそう叫んだ。
「片手で受けれんのかよ、今の全力の一撃だぞ、おいぃ!」
戦斧を持つもう一つの影はそう叫んだ。
それは、ジャックとヨーストだった。
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