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コーラス遺跡都市防略
第41話コーラル防略、21/灰血舞踏会/謎/ここはどこだろう。暗闇へ堕ちて行く。
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コーラル遺跡都市平原。
吹き荒れ、敗走兵ともどもメネの隊、マイクの隊、ロビン騎兵隊を包み込んだ灰の嵐。その灰は、自身を温める大切な何かが燃え尽き心ごと冷えてしまったかのような"感情的な冷たさ"を持つ灰。
「な、なんだ、これは…!?」
「何が起きて…」
視界いっぱいに広がる灰色で塗りたくられた世界、焚き火の焼けた木のような煤の匂いとそれに相反する冷たい空気に、両国の兵士たちは驚く。するとロビン騎兵隊とロビンとジャックの周りを漂う灰が形を変え棒状に、薄くなると、今度は横に小さくひらぺったくなりその下端部の左右からやや分厚い長方形が尖った先端部にむけて緩やかに傾いた。
「まさかそげん…嘘じゃろ…」
何かに勘付いたジャック。
だが時すでに遅く、その"形"はほぼ完成している。
その形は、まるでロングソードのよう。
ジャックは味方達に叫ぶ。
「馬を盾にせんか!けしんど!」
帝国騎兵達は続々と馬から飛び降りそのロングソードらしき物から身を隠すように屈んだ。
だが、間に合いそうにもなかった。
___そして、灰は舞い、血が踊る。
~~~
コーラル遺跡都市南門前にて、騎兵との激戦に勝利したメネは、背後から感じる冷気と焼けた直後の灰の臭いを感じ取った。
「はぁ…はぁ…はぁ…なんだろ、これ…」
メネは右手に持つツヴァイヘンダーを杖に、左手で左横腹の浅い傷を押さえながら、振り返り目の前に吹き荒れる灰の嵐を見て息を上げながらそう呟く。
すると___
「あがぁぁ!」
「うあああ!」
「がががが!」
___多種多様な耳を劈く悲鳴が聞こえた。
メネはそれが聞こえると、思わず一歩後ずさる。その悲鳴が鳴り止むのとほぼ同時に、煤の匂いに紛れて、鉄のような血の匂いが鼻を突き刺した。メネは思わず後退り、固唾を飲む。
頭の中に、遠い故郷の最後の風景が刹那の間流れた。
燃えた建物の匂い。煙で覆われた空。聞こえる悲鳴。自分を攫おうとする炎の騎士"払暁"の目は、確かに目の前に倒れた幼馴染のデイビッドと同じ、翡翠のような緑だった。
「…こんなことを思い出してる場合じゃぁないか。」
メネは振り返り、自身の指揮する部隊へ目を向ける。隊員達は負傷こそしているが、まだまだ前線で戦って行けそうだ。
帝国兵の姿もなく待機中だった。
それに、自身達は灰の嵐にも包まれていない。メネそれらを踏まえた上で考え込む。
(この灰は、敗走したマイクくんと帝国の連中を囲んで襲っていて、その間近にいる私たちにはなぜか被害を及ぼしてはいない。なんでかな…?)
メネは灰の嵐に近づき、左手をその中へ伸ばした。すると、その手に霧が集まり手が見えなくなる。
「うっ!」
一瞬、焼けるような激痛が伝わり思わず手を引いた。メネは再び考え込む。
(侵入ができない…災害にしてはピンポイントすぎるし、増援と考えるには少し無理があ_________もしかして、聖トルミア?
執行騎士の方達しか、こんな化け物じみたギフトは扱えない…仮にそうだとしても増援にしては早すぎる。一体、どうやって…?)
___その時、大地が微かに揺れた。
その微かな揺れと共に、平原の方へ目を向ける。こちらに走る王国兵士たち。
「嘘…いや。まさか…ね。」
メネは、そう呟いた。
~~~
喉仏に突き刺した剣の先から鍔へ滴り落ちる血の雫は鏡のように光を反射し、バーテイルを移していた。
コーラル遺跡都市南門直下。
大隊長はそっとそれを引き抜き、肘で挟むように拭う。バーテイルは喉仏から血をダラダラと流しながら跪き、そして大隊長を見上げるように睨み付けていた。
「おどれ…ぐぞ…」
バーテイルはそう吠えた。
大隊長はそれを気にも留めずバーテイルを見おろしながら口を開く。
「はぁ…はぁ…あぁ、きちぃなあ。」
そう呟くと大隊長はバーテイルの首を左から横一文字に切り裂き刎ねる。
残された体から吹き出す鮮血を浴びながら大隊長は地面に転がる頭を拾い上げ、掲げながら勝鬨をあげた。
「うおおおおおおおおお!」
「バ、バーテイル大尉補佐官が…!」
「そ、そんな!」
勝鬨に紛れながもそんな王国兵の声が耳に入る
大隊長は首をそっと投げると、王国兵は後退りし怖気付いたのかメネのいる緩やかな平原の方へ逃げて行く。帝国大隊の兵士たちはその光景を見ると勝鬨を同じく上げた。
大隊長は冷や汗を描き、右膝を地面についた。すると、右背後からハルバードを持つ帝国の女兵士が大隊長に駆け寄る。
「だ、大隊長殿!」
大隊長はその呼びかけに答えた。
「あぁ…サルスか。すまん…救助にざっくり刺されちまったわぁ」
サルスは大隊長に左肩を貸し、背後の味方の間へ引こうとしたその時。
___灰の嵐が背後で吹き荒れる。
大隊長とサルスは思わず振り返りその嵐を目の当たりにした。どこまでも暗い、灰の嵐。その灰は、一瞬の帝国、王国兵達を飲み込んだ。
サルスは固唾を飲む大隊長へ思わず叫ぶ。
「な、なんですかアレ!?」
顔色が一気にわかるなった大隊長はその叫びを応えた。
「執行騎士ってヤツか…化け物___」
「!、大隊長殿?!」
大隊長の意識はふっと、闇の中に消えた。
吹き荒れ、敗走兵ともどもメネの隊、マイクの隊、ロビン騎兵隊を包み込んだ灰の嵐。その灰は、自身を温める大切な何かが燃え尽き心ごと冷えてしまったかのような"感情的な冷たさ"を持つ灰。
「な、なんだ、これは…!?」
「何が起きて…」
視界いっぱいに広がる灰色で塗りたくられた世界、焚き火の焼けた木のような煤の匂いとそれに相反する冷たい空気に、両国の兵士たちは驚く。するとロビン騎兵隊とロビンとジャックの周りを漂う灰が形を変え棒状に、薄くなると、今度は横に小さくひらぺったくなりその下端部の左右からやや分厚い長方形が尖った先端部にむけて緩やかに傾いた。
「まさかそげん…嘘じゃろ…」
何かに勘付いたジャック。
だが時すでに遅く、その"形"はほぼ完成している。
その形は、まるでロングソードのよう。
ジャックは味方達に叫ぶ。
「馬を盾にせんか!けしんど!」
帝国騎兵達は続々と馬から飛び降りそのロングソードらしき物から身を隠すように屈んだ。
だが、間に合いそうにもなかった。
___そして、灰は舞い、血が踊る。
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コーラル遺跡都市南門前にて、騎兵との激戦に勝利したメネは、背後から感じる冷気と焼けた直後の灰の臭いを感じ取った。
「はぁ…はぁ…はぁ…なんだろ、これ…」
メネは右手に持つツヴァイヘンダーを杖に、左手で左横腹の浅い傷を押さえながら、振り返り目の前に吹き荒れる灰の嵐を見て息を上げながらそう呟く。
すると___
「あがぁぁ!」
「うあああ!」
「がががが!」
___多種多様な耳を劈く悲鳴が聞こえた。
メネはそれが聞こえると、思わず一歩後ずさる。その悲鳴が鳴り止むのとほぼ同時に、煤の匂いに紛れて、鉄のような血の匂いが鼻を突き刺した。メネは思わず後退り、固唾を飲む。
頭の中に、遠い故郷の最後の風景が刹那の間流れた。
燃えた建物の匂い。煙で覆われた空。聞こえる悲鳴。自分を攫おうとする炎の騎士"払暁"の目は、確かに目の前に倒れた幼馴染のデイビッドと同じ、翡翠のような緑だった。
「…こんなことを思い出してる場合じゃぁないか。」
メネは振り返り、自身の指揮する部隊へ目を向ける。隊員達は負傷こそしているが、まだまだ前線で戦って行けそうだ。
帝国兵の姿もなく待機中だった。
それに、自身達は灰の嵐にも包まれていない。メネそれらを踏まえた上で考え込む。
(この灰は、敗走したマイクくんと帝国の連中を囲んで襲っていて、その間近にいる私たちにはなぜか被害を及ぼしてはいない。なんでかな…?)
メネは灰の嵐に近づき、左手をその中へ伸ばした。すると、その手に霧が集まり手が見えなくなる。
「うっ!」
一瞬、焼けるような激痛が伝わり思わず手を引いた。メネは再び考え込む。
(侵入ができない…災害にしてはピンポイントすぎるし、増援と考えるには少し無理があ_________もしかして、聖トルミア?
執行騎士の方達しか、こんな化け物じみたギフトは扱えない…仮にそうだとしても増援にしては早すぎる。一体、どうやって…?)
___その時、大地が微かに揺れた。
その微かな揺れと共に、平原の方へ目を向ける。こちらに走る王国兵士たち。
「嘘…いや。まさか…ね。」
メネは、そう呟いた。
~~~
喉仏に突き刺した剣の先から鍔へ滴り落ちる血の雫は鏡のように光を反射し、バーテイルを移していた。
コーラル遺跡都市南門直下。
大隊長はそっとそれを引き抜き、肘で挟むように拭う。バーテイルは喉仏から血をダラダラと流しながら跪き、そして大隊長を見上げるように睨み付けていた。
「おどれ…ぐぞ…」
バーテイルはそう吠えた。
大隊長はそれを気にも留めずバーテイルを見おろしながら口を開く。
「はぁ…はぁ…あぁ、きちぃなあ。」
そう呟くと大隊長はバーテイルの首を左から横一文字に切り裂き刎ねる。
残された体から吹き出す鮮血を浴びながら大隊長は地面に転がる頭を拾い上げ、掲げながら勝鬨をあげた。
「うおおおおおおおおお!」
「バ、バーテイル大尉補佐官が…!」
「そ、そんな!」
勝鬨に紛れながもそんな王国兵の声が耳に入る
大隊長は首をそっと投げると、王国兵は後退りし怖気付いたのかメネのいる緩やかな平原の方へ逃げて行く。帝国大隊の兵士たちはその光景を見ると勝鬨を同じく上げた。
大隊長は冷や汗を描き、右膝を地面についた。すると、右背後からハルバードを持つ帝国の女兵士が大隊長に駆け寄る。
「だ、大隊長殿!」
大隊長はその呼びかけに答えた。
「あぁ…サルスか。すまん…救助にざっくり刺されちまったわぁ」
サルスは大隊長に左肩を貸し、背後の味方の間へ引こうとしたその時。
___灰の嵐が背後で吹き荒れる。
大隊長とサルスは思わず振り返りその嵐を目の当たりにした。どこまでも暗い、灰の嵐。その灰は、一瞬の帝国、王国兵達を飲み込んだ。
サルスは固唾を飲む大隊長へ思わず叫ぶ。
「な、なんですかアレ!?」
顔色が一気にわかるなった大隊長はその叫びを応えた。
「執行騎士ってヤツか…化け物___」
「!、大隊長殿?!」
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