【完結】君が消えた仮想世界と僕が願った並行世界

１２話 並行世界の仮想世界から

覚醒

　文字通り鉄の心臓を持つすみれでも、さすがに気が滅入り始めていた。

　それは１２３７回目の絶命を覚悟した瞬間だった。


時間：現在
座標：４２．７０８１２，１４０．０２９３７
対象者：遥
――こうするしかなかったのよ……

時間：現在
座標：４２．７０８１３，１４０．０２９３５
対象者：みゆき
――ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……

　それは心の声が聞こえるなんてレベルの話ではなかった。まさに被験者設定画面に追記させた通りである。私は空間軸を半径５００メートル以内、時間軸を過去１年、向こう１０年間としスキャンを開始した。その結果やるべきことは一つだけだった。私は右手の人差し指を外側に無理やり３センチ程度押し出した。上からの砂の圧力で指は不快な砕音をたて骨折してしまったようだが、それだけが命の代償というのだから安いものである。そして、指先からゆっくりと水が流れ込む。

――これで、大丈夫。

　安堵した私は、そのまま静かに息を引き取るように意識を失った。


「お父さん、ありましたよ！　実在しましたよ！　私の暮らしていた世界、並行世界がここに！」

　繰り返されたグラントは１２３６回を数えていた。

「後は、モニタリングですね。任せて下さい」

　すみれは次のポイントへと向かった。