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第1章
無能力者
しおりを挟む閉ざされたカーテンの隙間から、
昇ってきた朝日の木漏れ日が
男の頬を照らす。
それに眉をひそめた男は
殻にこもるように毛布を
頭にかぶった。
部屋にはもう一人男がいるが、
もう一年は話していないだろう。
最後に相手から一方的に
浴びせられた言葉は
「無能力って言うのが能力だな」
だった気がする。
まあ、もうどうでもいい。
それより、今日も朝日が昇るのを
阻止することができなかった。
やはり俺には能力がない。
朝なんて来なきゃいいのに。
携帯に表示された時刻を見ると、
あと10分程度でいつもの
1日が始まろうとしていた。
仕方なしにのそりと起き上がると
洗面所に向かう。
皆は洗面所なんて使わないで
勝手に水を浮かべて顔を
洗ったりしているのに、
無能力の俺だけが洗面所を
使っている。
そして着替え。
自分でクローゼットを開けて
のそのそと着替える。
こんなことするのも俺だけ。
皆は一言二言魔法単語を
口に出せば勝手に服が
装着されるのに、俺だけが
毎日クローゼットを開けている。
何もかも、全部俺だけ。
昔の能力も何もないただの人間
のような俺には、昔から
間抜け、ゴミ、クズ、などと
たくさんの罵声が発せられた。
そんな昔の人間だって、
今俺がいる「養成学校」を
作ったし、洗面所もクローゼットも作った。
今俺たちが発している言語だって
元々は昔の人間が作ったんだ。
それに、何を恥じることがある。
と、考えてから早23年。
いい加減、こうやって自分に
言い聞かせるのにも限界がきた。
俺は、無能力者だ。
戦闘も出来なきゃ魔法で
治癒や大道芸も出来ない。
そりゃあ皆も俺を馬鹿に
するに決まってる。
親だって、俺を恥だと
罵るさ。
至極、当然なことだ。
だけど、だけど…
社会人にもなってまだ
認められたいと思う俺は、
もう手遅れだろうか。
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